ろんぐ

物語と音楽。

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分身への生成変化――『WHITE ALBUM2』 closing chapterとは何だったのか

 一昨日、東京で雪が降った。WHITE ALBUMの季節だ。だからだろうか。先日久々に、いつも会う友人と『WHITE ALBUM2』の話をした。世に数多ある作品の中でこのタイトルが共通のトピックになるのは、自分がその友人に本作を贈った経緯があるからだ。贈ったというより、押し付けた。更に思い返せば自分も、ツイッターの知人から同じようにこのゲームを受け取ったのだ。もしかすると、その彼もまた別の誰かからそれを贈られたのかもしれない。そうであれば、この連鎖の始まりは一体どこなのだろう

    • 西暦2022年の総括

       早いもので、この記事を書いている最中、年が明けた。新年である。そこで、少し遅くなってしまったが、昨年を振り返ってみたい。なんとなくツイートをして、それがタイムラインの彼方に消えるだけでは勿体ない。本稿では大きく6つにジャンルを分け、纏めてみた。なお最後のジャンルについては、他よりボリュームに富んでいる。バランスは悪いが、それも一興だろう。  第一に、仕事。良くも悪くもなかった、というのが率直な所感だ。激変する国際情勢を受け、私が勤めている業界全体は、数年前から苦しい状況が

      • それでもMacを使いたい理由

        ここ1年程、私はことあるごとに、サブマシンとして持っているMac miniをメインとして使おうとしている。「使おうとしている」というのは、現状そのように使えていないことを意味する。目的を阻む要因がいくつかあり、それを解決出来ないのだ。あれこれと試行錯誤している姿をよく目にする方も多いだろう。せっかくゲーミングPCも持っているのだから、素直にそちらを使えばいいのに……と呆れられているかもしれない。自分でもそう思う。Windowsは昔からずっと使ってきたOSだ。決して詳し

        • 『劇場版 RE:cycle of the PENGUINDRUM』 感想

          ふせったーに少し感想を書くだけのつもりが、みるみる文量が嵩んでいき、形として残しておきたくなった。タイムラインはどうしたって過去へ流れてしまうものだ。一切顧みられることはない。したがって本当に大事なことは、このような場所に書くべきなのだ。 場所といえば、本稿は大部分が電車の中で執筆されている。その内地下を走っていたのは、文量の半分くらいだろうか。単に都合が良いからそうしただけなのだが、本作に関してはそこにも意味が生まれてくる。即ち運命である。 まず

        分身への生成変化――『WHITE ALBUM2』 closing chapterとは何だったのか

          西暦2021年某日の悪夢(以下原文)

          あまりに酷い夢。 最近よく見る気がする。 忘れない内に書き留めておこうと思った。 家の近所で、見たことのない場所で、自分は車を運転する練習をしている。 仕事でおつかいには行くが、肝心なところは任せてもらえない。 その自主練を兼ねているのだ。 島の沿岸で怪獣が鳴くと、まずは鳥を向かわせる。 後でそこに向かっていくのだろうか。 鳥の操作は半分オートマチックで、狙い通りに降下出来る。 チュートリアルが終わらないような感覚。 エンジンすらかからないイメージ。 ゲームの中のような

          西暦2021年某日の悪夢(以下原文)

          劇場アニメ『映画大好きポンポさん』 感想

          過日、掲題の映画を観てきた。原作があるのは知っていたがそれだけで、前知識はゼロに近かった。なんとなく目にしていた情報は、せいぜい90分という尺が良いファクターになっているらしいということくらいだ。さて、感想を一言で表せば「面白かった」或いは「良い映画だった」だろう。思わず泣いてしまうシーンもあった。140字に収まる程度の感想をツイッターに投稿するつもりだったが、思いの外書きたいことが多くなってしまったので、こちらに文章として残したいと思う。 まず、この映画の

          劇場アニメ『映画大好きポンポさん』 感想

          令和・イヤホン・スパイラル Pt.4(last)

          SE215SPE-Aの有線運用に失敗し、構想はふりだしに戻ったかのように思われた。しかし並行して注目していたものがあったのだ。それは中国メーカーのイヤホン、所謂「中華イヤホン」である。中国製と聞くとどうしても品質を不安視するバイアスがかかりがちだが、今日ことオーディオの分野においてそのイメージは払拭されつつある。個人的には、欧米や国内のメーカーが依然幅を利かせる中、負けじと躍進を続けている印象を受ける。実際にアラウンド1万円のモデルをあらかた聴いてみた結果、概してコス

          令和・イヤホン・スパイラル Pt.4(last)

          令和・イヤホン・スパイラル Pt.3

          ショックを受けてばかりもいられない。カスタムIEMでの失敗を受け、自分はまたTWSへの回帰を模索していた。そこで次の一手として、SHUREのAONIC 215 SE215SPE-TW1-Aを見つけた。これはSHURE独自の外装バッテリーユニットに、MMCX端子でイヤホンが着いている製品だ。普通のTWSは耳に収まるサイズの筐体にバッテリーを内蔵していることから、どうしても装着感がネックになりがちである。それはTE-01dで自分が実際に体験したことだ。しかしこの製品はバッ

          令和・イヤホン・スパイラル Pt.3

          令和・イヤホン・スパイラル Pt.2

          問題が起きたのは去年の春頃だ。それまで問題なく使えていたTE-D01dの右側が、耳穴にフィットしなくなってしまった。イヤーピースが滑っている感覚だったので、原因は季節の移ろいにより湿度が高まったことだと考えた。最初は我慢して使っていたものの、夏に近づくにつれ問題は悪化し、遂には耳から落ちるようになってしまった。コンプライのフォームタイプのイヤーピースも試したが、解決には至らなかった。ちなみにここでのフォームタイプとは、ウレタン製で伸縮性に富んだイヤーピースのことである

          令和・イヤホン・スパイラル Pt.2

          令和・イヤホン・スパイラル Pt.1

          貴方はイヤホン・スパイラルという言葉をご存知だろうか。知っているという方はそれなりに多いと思う。簡単に説明すると、新しくイヤホンを購入したもののすぐ他のイヤホンが気になり購入してしまう、そのサイクルがしばらく、或いは長期間続く事象のことだ。オーディオマニアの間ではよく知られた単語である。 自分はマニアを自称出来る程オーディオに詳しくはないし、お金もそれ程かけてはいないつもりだが、既に一般的にはそう呼ばれる類の人間だろう。これまでイヤホンを始めとしたオーディオ

          令和・イヤホン・スパイラル Pt.1

          アッキー

          自分には大切な友人という存在が、ありがたいことに何人もいる。保育園からの付き合いになる者もいれば、大学で唯一気の置けない仲になれた者もいる。皆のことはもちろん好きだが、その中でも今回は彼のことを語ろうと思う。自分が「アッキー」と呼ぶ男のことを。 アッキーとは小学校で知り合った。かれこれ15年以上の付き合いになる。通っていた小学校では当時2年ごとにクラス替えを行う決まりになっており、彼とは4年間を同じクラスで過ごした。彼は2年生の時に転校してくると、瞬く間に同

          アッキー

          ノーマル・エンド

          誰の人生にもモテ期なるものが訪れるという。それが本当かどうかは分からないが、少なくとも自分にはそのようなものがあった。当時は中学2年生で、”あちら側の人間”であるのだと錯覚している最中だった。もしかするとそれは錯覚ではなく、真実だったのかもしれない。今更そんなことを考えても仕方ないが、ともあれ時間は巻き戻される。 当時自分はオタク仲間3人と親しくしていた。もちろん全員男子だ。大抵の時間は一緒にいて、時にはアニメについて語り合い、時にはヴァイスシュヴァルツで遊

          ノーマル・エンド

          東京

          自分は東京の田舎で生まれた。田畑が広がっているような場所ではないが、東京にもそう呼ばれる地域がある。大都会東京などといっても、都心と呼べる範囲は存外狭い。山手線の内側と外側。23区とそれ以外。そういった区切りは他にもいくらかあるのだろう。母の実家は都内の「市」にあり、両親も昔はその近くに居を構えていたらしい。なぜ伝聞の調子であるかというと、自分には当時の記憶がないからだ。弟が生まれて1年、自分が3歳になる頃には、今住んでいる埼玉県のこの家に引っ越してきていた。自分の持

          ベスト・タイム、ベスト・プレイス

          自分は大学生時代、レンタルビデオ店でアルバイトをしていた。正確な期間は、大学1年生の5月から3年生の11月まで。約2年半の間だ。目的はもちろん社会経験などではなく、単なる小遣い稼ぎである。学生の本分は学業であるとはいうものの、大方の大学生は、費やす時間や賃金の用途はどうあれアルバイトをするものだ。高校生の時分から働いている者もいるが、校外で起こる厄介事を減らすためか、当時生徒にアルバイトを全面許可している高校は周りに多くなかった。現在はそういった傾向が更に強まっている

          ベスト・タイム、ベスト・プレイス

          夢を撃ち抜けなかった瞬間に ep.3(last)

          そうして我々はあっという間にライブ本番当日を迎えた。何しろ練習時間は1週間もなかったのだから、当然のことだ。舞台となる学年集会が何コマ目にあったのかは覚えていないが、その日の朝音楽室で行ったものが、最後の練習だったと記憶している。そこには吹奏楽部に所属する件の女の子にも立ち会ってもらい、まあこんなものではないか、という評価を貰うことが出来た。きっと彼女にとっては聴くに耐えない演奏だったと思うが、一般生徒に一度限り披露するものとしては破綻がないという判断だったのだろう。

          夢を撃ち抜けなかった瞬間に ep.3(last)

          夢を撃ち抜けなかった瞬間に ep.2

          ライブに向けた我々の課題は山積みだった。それは大きく取り上げると3つあった。第一に、2人ではバンドが出来ない。ボーカルとギター、もしくはキーボード辺りを揃えれば一応バンドとしてステージに立つことは出来るだろう。しかしそれを成立させることが出来るのは、アマチュアであっても努力を重ねてきたミュージシャンだけに思えた。したがって、まずはともあれ頭数を揃えなければならない。結果的に、自分達2人を入れてギター・ボーカル、サイドギター、ベース、ドラムの計4人をメンバーとして確保す

          夢を撃ち抜けなかった瞬間に ep.2