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#1 京都の観光と文化と経済をアップデートするために

2020年、スタートアップスタジオ大学版みたいなプロジェクトをスタートします。

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2020年の年初にあたって、新しい取り組みを始めます。それは観光の街であり、文化の街であり、大学の街である京都の特徴を活かしたプロジェクト。

単に京都の観光情報や文化を発信するのではなく、観光産業と文化保存の共存や、伝統文化の継承と新産業開発の並行、そして観光客と市民の共生などの課題を解決していくための研究チームのようなものを立ち上げるイメージです。

具体的には、複数の大学の学生が集まって「京都、観光、伝統文化、持続可能な社会」というキーワードをベースに、大学の垣根を超えてカジュアルにコラボ。リサーチから取材、コンテンツ制作から、コンテンツ開発、リリース、運営までを行うチームを作り、最終目標としてはその中から利益が出たプロジェクト単位で、学生だけで在学中に起業することも視野に入れた「プラットフォーム」です。いわゆるスタートアップスタジオの大学版みたいな感じですかね。

きっかけは、京都造形芸術大学と、京都外国語大学の学生さんとのコラボ。

これをやろうと思ったのは、いまから1年ほど前のことでした。ただ、この物語が始まる前には、それぞれには無関係な水脈から流れ出したいくつかの小さな支流が、やがてひとつに集まって大きな川になっていくような、偶然とも必然ともつかない前史のようなものがあります。

まず2017年の夏ごろにENJOY KYOTOの取材のため、HANAO SHOESの製作・販売をしている京都造形芸術大学准教授でCHIMASKI代表でもある酒井洋輔さんと京都造形芸術大学の学生さんたちを訪ね、HANAO SHOES開発の経緯や、現場の制作体制、運営や広報活動などについて話を伺いました。

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彼らとはそのあとも交流を続け、京都造形芸術大学が伝統文化を発信していくための「T5」というプロジェクトをスタートした際にも、そのウェブサイト向けの記事執筆をぼくも手伝い、京提灯の小嶋商店さんと京仏師の冨田工藝さん、くるりの岸田繁さんと三味線職人で奏者でもある野中智史さんの対談などを担当したりしていました。

いっぽうで2018年初めに京都外国語大学の広告をENJOY KYOTOに出したい、という依頼を受け、せっかく外国語大学なのだから学生さん自身に取材や記事執筆、そして英訳までをやってもらおうということでご提案。「のれん」「漢字(漢字ミュージアム、ハンコ屋さん、書道体験)」「組紐」「喫茶マドラグの厚焼きタマゴサンド」という企画で、これまでに4回にわたってコラボによる広告記事を制作してきました。

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このふたつの活動を並行で行なっているうちに感じたのは、京都は大学の街なのに、卒業した若者たちはみんな就職や活動の場を求めて東京へ行ってしまうんだなあ、ということ。もちろん東京は経済活動の中心地でメディア企業や企業本社がたくさんあるのだから、仕方がないことではあります。

だから、それには京都に残って仕事をしたいと思わせる動機と、自分の人生をかけるだけの価値、なにより希望がないといけないなと思いました。

東京や外国の企業が主導する京都の再開発や事業プロデュースへの疑問。

もうひとつ。京都の職人さんやアーティストのコラボや、新しいお店のプロデュースやホテルの開発、お寺でのイベントなんかにしても、仕掛けから投資なんかにいたるまで、結局のところ東京主導で行われているように感じる点が気にかかっていました。

もちろん優れたものもたくさんありますが、なかには「それ本当に京都のためになってる?」「100年スパンでものを考える京都の風土に合ってなくない?」と感じるものも少なくありませんでした。このままいったら10年後20年後はどうなっていくのだろう?という危機感のようなものがありました。ぼくにはふたりの息子がいて、ともに地元の小学校に通っていますから、地域の生活や学びの環境、そして地元企業の動向はとても身近かつ重要な問題でもあります。

2013年からずっと考え続けてきた、ポスト2020の多様化した日本の姿。

そして、そもそもぼくが編集とライターとして携わっている外国人向け英字フリーペーパー「ENJOY KYOTO」は、東京オリンピック開催が決まった2013年に「Making Kyoto The World’s Hometown」をコンセプトに発刊しました。そのフレーズを書いた背景には、単に2020年オリンピックへの観光需要を期待した観光メディアといった表層的な目的ではなく、いずれ来る多民族共生や、多文化融合を前提にした、新しい日本の姿をイメージしていました。そしてそれは実際に、たとえば近年のラグビー日本代表や、大坂なおみ選手の活躍によって、偶然にもすでに少しずつ顕在化しはじめていますよね。

●2013年11月発刊 ENJOY KYOTO創刊号

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また、東浩紀さんの「観光客の哲学」や「テーマパーク化する地球」の影響も強くあったと思います。奇しくもぼくはかつて京都造形芸術大学で浅田彰さんとの対談形式で行われた講演にも参加しました。フラットに自由に移動しながらも、ジプシーのようの放浪し続けるのではなく、帰る家を持ちつつ浮遊する観光客の視点こそ現代的な人類の思想を体現するという東さんの哲学に衝撃を受けたのです(同い年であることも少なからずシンパシーの一因でもあるかもですが)。

いよいよ本題。大学生による研究サロン的起業プラットフォームの立ち上げ。

そこで、です(前置きがずいぶん長くなりました)。このようにして、いくつかの思考思索の支流たちが、ついにひとつに重なります。

少なくとも観光産業については、京都は日本の先進地域です。光も影も、ポジティブな変化もネガティブな課題も、いま観光の最先端事例は、ここ京都で先んじて起きています。そして最初にも述べた通り、京都は大学の街でもあります。

であれば、観光ビジネスや観光政策に大学生を中心とした若者たちの新しい視点を取り入れつつ、学生らしいフットワークと好奇心によって、ある種のアカデミックなサロンを立ち上げることで、研究と実践の場として機能するのではないかと考えたのです。

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そしてその活動が、伝統工芸や職人さんの支援にもなり、さらに学生自身が京都で働ける場所を作ったり起業したりすることへのサポートにもなる。さらには京都の経済発展や文化継承、持続可能な開発にも役立つ、本当にみんなにメリットのある京都をつくっていくためのプラットフォームになればいいなと思ったのでした。観光を「公害」とは呼ばず、ぼくなりに観光と生活、開発と保護のバランスを考え直すきっかけにしていくためのアイデアといっても良いと思います。

ホテルコンシェルジュや旅館の女将さんに向けた工房ツアー企画「FOUND KYOTO」

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さて、その第一弾として、まずはすでに京都造形芸術大学サイドがテストとして実施しているものをベースにスタートを切ります。京都のディープな情報を求めているホテルのコンシェルジュさんや旅館の女将さんなどに向けて、職人さんの工房を案内するツアーの企画、運営です。「FOUND KYOTO」という名前で実施します。

このプロジェクトを、デザインやメディアに強く、伝統文化に関する学科も生まれて職人さんとも繋がりのある京都造形芸術大学と、英語、スペイン語、中国語などあらゆる外国語を学ぶ学生がいて、しかも新たに観光政策を学ぶコースも誕生した京都外国語大学が手を結び、それぞれに得意分野を生かしながら、いろんなツアー企画を議論したり、ツアーの運営に携わったり、職人さんやホテルへのアポから、既存メディアへの対応、ソーシャルメディアでの発信などを実践のなかから学び、最終的には利益化までをセットで考えていこうと思っています。

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さらに今後はこのふたつの大学以外にも、たとえばITなどデジタルや先端技術に強い大学、グローバル経済や国際政治などに明るい大学まで、いろんな京都の大学生が集まってもらえたらなあと思っています。すでに京都造形芸術大学のメンバーの中に京都工芸繊維大学の学生が1名参加してくれているので、実質的には3大学コラボによる企画となっています。

「ローカルであることが、グローバルな強みなる」という哲学を実践したい。

われわれENJOY KYOTOの役割としては、まずは彼らの考案した企画や開発したサービスに対して、プロの編集者やライター、デザイナーやカメラマンとしてのアドバイスや技術の提供をします。さらにはプレゼン先企業やコラボできそうな企業の紹介、あるいは彼らのプロジェクトに資金提供してくれそうな企業の仲介なども行いたいと思っています。そうすることによって、たとえば彼らが開発した企画やコンテンツ、サービスなどを実際にリリースしていけるだろうと考えています。そして、その中から利益化できそうなサービスが出てくればそのプロジェクトに携わっている学生だけで小さな起業をしていったりできたらいいなと考えています。しかも対象は当然グローバルなのです。

京都の職人さんと話をしていると、たとえば100年200年の歴史を持つ老舗の職人さんたちは、同時に100年200年先の未来を同じように見つめていたりします。自分を起点に、続いてきた過去と同じ長さの未来のために、いま自分は何をすべきかという視点があるのです。これは多くの人に共通する視点で、そこに感動しました。

だからこそ、このプロジェクトを通じて、ポスト2020年を生きる若い人たちと一緒に、2050年や2100年の京都を考えていくきっかけになればと思います。

もし興味があって参加したい学生さんや大学関係のみなさま、学生とコラボした企画をやってみたいという企業さんなどおられましたら、ぜひお気軽にお声がけください。


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