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男女平等のハードル走

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引用:「サードドア 精神的資産のふやし方」

まずはじめに上記のイラストを見てください。

これはアメリカで、過去フェイスブック上で拡散されていたものだそうです。(「サードドア 精神的資産のふやし方」に掲載されているイラストより)男性と女性は同じ距離のゴールに向かってクラウチングスタートをしています。

ここで隣の男性が「What's tha mattee? It's the same distance.」

何か文句でもあるのか?同じ距離だろ!

と言っています。もし、イラストがなく男女が同じゴールを目指す競技で、距離が同じなら、男性の言っていることは間違っていないように思えます。しかし、現実にはイラストのように男性はハードル競技で女性は障害物(ハードル)競技になっています。

これは、現実の男女平等の世の中に、皮肉を込めた風刺画といえます。男性の私からみれば世の中(日本)は、男女平等に少しづつ進んでいるように思えます。しかし、それはあくまでも男性であるわたしの視点であり、女性の視点としては上記のイラストのように、数多くの見えない障害物(ハードル)があるようです。

この現実に起きているありふれたエピソードを紹介しようと思います。

動物行動学者のジェーン・グドールは、2歳のときにもらったチンパンジーのおもちゃを今でも大事に持っている。それは、第二次世界大戦当時、ロンドンが爆撃され、グドール一家にはソフトクリームも買う余裕もないときにもらった大切なものだからだ。そのためグドールは、このチンパンジーのおもちゃがきっかけで動物にのめり込み、霊長類に囲まれて暮らし、彼らと話せることを夢見た。そして、いつしかアフリカのジャングルで、チンパンジーの研究をしようと思うようになり、そのために資金と知識を蓄えていった。

彼女が23歳になったときに、積み上げた資金を元にアフリカ行きのチケットを買い、ケニアに入国することになった。そこでのディナーパーティーの席で出会ったゲストに動物への情熱を打ち明けると、ルイス・リーキーに会うように勧められた。リーキーなる人物は、世界で最も著名な古人学者の一人だった。彼はケニアに生まれたが、イギリス人の血を引いていて、ケンブリッジ大学で博士号を取得していた。その主要な研究テーマは人間とサルの進化だったので、彼女にとって最もメンターに相応しい存在だった。

ちょうどこのとき、ナイロビの博物館内にあるリーキーの研究所が開設されることになり、彼女は博物館に向かった。2人は展示物を見て回りながら、アフリカの野生動物について話した。リーキーは彼女の知識に感心して、アシスタントの仕事を与えた。彼女はリーキーと一緒に化石採集の探検などをしながら彼女の夢であるチンパンジーの研究に近づいていった。文字通り彼女が夢の成功を掴みかけたそのとき、彼女はリーキーに口説かれた

実はリーキーには妻子がいて、初めて結婚した奥さんが妊娠中に、浮気相手と旅行に行き、その後その女性と暮らすようになり、それが発端で離婚訴訟を起こされ離婚し、二番目の奥さんとの結婚生活の間にも、懲りずにアシスタントと浮気をしそれがバレたためにアシスタントは解雇となった。そのため彼女が研究所に足を運んだ際に、アシスタントがおらず採用されたのだった。

そんな内情のしらずに彼女は自分の夢の岐路に立たされた。そして、この時彼女のとった行動は、詳細に記載されていないので彼にどのように発言をしたかはわからないが、お誘いを丁重にお断りしたそうです。この時のことを彼女は

「まあ、すごく不安はあったわ。彼の誘いを断ったら、チンパンジーの研究をする夢を失うかもしれないって。でも、彼ははっきりそう言ったわけじゃないの。何事もはっきり言うような人じゃなかった。もちろん、何とか私は断った。彼はちゃんとした人だったから、それを尊重してくれた。肉食動物じゃなかったのよ」

彼女はその後3カ月間、野生のチンパンジーがいるジャングルに住んで、茂みの背後に身をかがめて観察し、チンパンジーが人間のように道具を使う姿を目撃する。それ以前の研究では人間だけが唯一道具を使う種だとされていた。このことにより科学界に衝撃を与え、新たな常識を築き上げた。その後33冊の本を出版し50を超える名誉学位を受け大英国勲章を授与され国連の平和大使となった。

そんなジェーン・グドールをインタビューしたアレックス・バナヤンは、彼女が成し遂げた数々の業績と偉業よりも、ナイロビの博物館内にある研究所所長リーキーの態度の方に目が行き不快に思ったそうです。自分を慕う新米研究者を自己利益のために立場を利用し口説き落そうとした。その行為が許せなくきわめて不快だったのでしょう。「これは職権乱用だ」と訴えるべきだと思う人がいるかもしれません。

そんな話をバナヤンが自分の姉妹に話すと激怒されたそうです。

「あなたは世界で最も成功した女性の一人にインタビューをしたのよ。なのにどうして、彼女がメンターに口説かれたことしか話せないわけ?」と。

「あなたがなぜそんなに怒っているか知りたい?女性を口説くことは侮辱の行為だと思っているからよ。そういう時もあるけど、場合によるわね。私に言わせれば、女性がこういう目にあっているってことに、あなたが今まできづかなったことの方が驚きよ。ずっと女性と暮らしてきたのにね。女性に囲まれて育ってきたあなたでさえ、女性が抱える問題を理解していない。だったら、女性に囲まれずに暮らしてきた男たちがどんなものか想像してみて」

そして彼の姉妹は上記のイラストを彼に見せる。

「きっと兄さんは間違ったところばかりに目を向けているのよ。私が頭にくるのは、女性ばかりに余計な障害があるのもそうだけど、大半の男は、私たちの現実さえ認めていない。女性が直面している問題なんて、男には絶対わからない・・・みんなわかろうとしていないからよ」と言われる。

みなさんはどのように感じたでしょうか。女性が社会で抱える問題の一端はこのように男性には視覚に入り込んでいないように思えます。これは見えないものは信じない又は信じられないという心理が働いています。また、人は見たくないものは見ない性質を持っていることも一つの要因でしょう。

確かにバナヤンの姉妹の言う通り男性にはわかりにくいのかもしれません。しかし、昨今男女平等に向かう過程で「看護婦」から「看護師」にかわり、「保母さん」が「保育士」に呼び名が変わりました。これは、女性特有の職業からユニセックスな職業へと変わったことにあります。この、看護師と保育士の中には女性特有の職場環境の中で男性が同じように職務をこなす上での苦労もあるのではないでしょうか。

そう考えれば男性にも今の女性が現実社会で生きる上での障害が理解できるのではないでしょうか。そのため、必ずしも男性が女性の日々のハードルに苦しむ姿を絶対に理解できないわけではないように思えます。

しかし、男性が構築した社会の中では女性には様々なハードルがあることも間違いないでしょう。これを打開するためには、時間をかけ絡まった糸をほどいていくしかないように思えます。

先日もフィンランド首相サンナ・マリン氏が雑誌の記事で、胸元が大きく開いたジャケットを素肌にまとった写真を雑誌に掲載され、多くの批判がありました。この批判に対し、SNS上では彼女の衣装に模した洋服を着て不特定多数の人が、首相を応援していました。

「仕事に対する意識は胸元の開き具合でははかれない」「女性は何を着ているかで判断されるべきではない」などと書き込みがあったそうです。

しかし、もし男性首相が素肌にジャケットを纏い、下半身はブーメランパンツで雑誌に出ていたら、女性はどう思うでしょうか。おそらく一部の人は「不謹慎だ」「首相の時間の無駄」と言うでしょう。では、これは差別ではないと言い切れるかと言えば、いえない。やはり議論して落としどころを探らなくてはならないでしょう。

先ほども述べたように男性が構築した社会(政界)のなかで、女性は目に見えないハードルを、いくつも乗り越えなくてはならないのが現実です。

しかし、男性が構築した社会の中でも変化は見られます。例えば建設の現場では、過去力仕事というのもあり、女性が職場にいることは極めて稀でしたが、現在では増えてきています。そのため、工事現場では女性専用の更衣室や化粧室などが新設され、職場環境が変化しました。この建設現場における女性の活躍により、昔と比べ、現場の清潔度が増したようにみえます。

男女平等により今まで当たり前だった「煙草臭い職場」が「清潔感のある職場」へと進化したのです。そう考えれば、時代は停滞などしていなく進歩しているように思えます。

常に時代は変化しその時代の最適解は変わっていきます。前時代的な考えや慣例を無くし変えていくには声を上げるしかないでしょう。

たとえ小さな声でもSNS上で拡散し拡張され世の中を動かすこともあります。そのような効果をバタフライ・エフェクトと呼びます。

正確には、非常に些細な小さなことが様々な要因を引き起こしだんだんと大きな現象へと変化する事ですが、このようにたとえ小さくとも、声を上げ続けることで、人を、地域を、社会を、常識を、動かすことができるとわたしは信じています。

                               おわり

参考文献:サードドア 精神的資産のふやし方 アレックス・バナヤン著

最後まで読んで頂きありがとうございます。


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no.37 2020.10.23

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