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【Review】2021年J1第11節 川崎フロンターレVS.セレッソ大阪「判断ミスから大久保に許した2ゴール」

はじめに

 2021年J1第11節の川崎フロンターレは、3-2でC大阪に勝ちました。常にリードを許す展開でしたが、慌てずに得点を重ねて勝ち切るチームからは、優勝経験から来る心のゆとりを感じました。
 また、かつて川崎で活躍した大久保は2得点と大暴れ。いくら3年連続得点王を獲得したチームだからといって、恩返ししすぎです。。。

ボールを集まってきた大久保

 まずこの試合で触れざるを得ない活躍をしたのがC大阪の大久保嘉人。彼の大きな特徴の一つは自身がゴールが決めれる位置を知っていることです。PA外からのミドルシュートも、GKの手の届かないゴール前はまさに彼が得点を重ねてきたシチュエーションで、等々力で何度も見た光景でした。
 ただ川崎後の大久保は思うように得点を重ねられませんでした。その時期のプレーを見続けていたわけではありませんが、おそらくゴールを決めれる位置にいてもボールが来ず、ボールを迎えにいくことでゴールから遠ざかっていたのでしょう。
 しかし下記インタビューでもあるように、C大阪ではボールが集まる感触があるようです。実際1点目のように一度味方にボールを預け、ゴールを取れる準備をしたタイミングでボールが戻ってくれば、彼にとっては十分でしょう。

 SBとの呼吸が合っていることも彼の好調の要因の一つです。川崎時代、中盤の選手に対してもありましたが、SBの車屋に声を張り上げて要求していた姿が印象的でした。車屋はその期待に応えて徐々に合わせていきましたが、松田はその調整が早く、既に2アシストを記録しており、息が合っていると言えるでしょう。
 最後に細かいことを付け加えると、一歩の踏み込みでシュートを打っている時の大久保は好調です。ボールの置き所を調整するためのタッチ数が増えるよりは、多少止めが甘くても思い切り打った方が入っていた気がするので、置き所を過度に気にせず打てているうちは、ゴールを量産するのではないでしょうか。

後方から守備判断のサポート

 かつての盟友の2ゴールは、川崎サポーターとしては嬉しいような悲しいようなという感じでしたが、川崎に視点を移すと、2失点ともに三笘が絡んでいることが気になるところです。この点については、本人も試合後コメントで反省を述べていました。

三笘「失点に絡んでいるので反省している。得点を決められないと、次のメンバー争いにも関わってくる。結果を出さないといけない気持ちはあった。ゴールを決められたのはよかったが、改善しなくてはいけないポイントはある。」
(引用元:川崎フロンターレ公式HP「ゲーム記録:2021 J1リーグ 第11節 vs.セレッソ大阪」<https://www.frontale.co.jp/goto_game/2021/j_league1/11.html>)

 先に2失点目ですが、FKを跳ね返したボールを左サイドの松田が収めた場面での守備判断にミスがありました。自陣方向に身体を向けようとする松田の動きを察知して、三笘はボールを奪う判断をし、C大阪ゴール方向を切りに走りました。松田はその動きを見てか、川崎ゴール方向に切り返し、三笘を外してフリーでクロスを上げることに成功します。

 この場面はC大阪の選手がPA内にいる状況で得点のチャンスが高いため、まず防ぐべきはクロスボールでした。しかし奪ったらカウンターのチャンスであり、また相手選手が後ろを向いてボール奪取の可能性があったために、クロスを防ぐのではなく、リスクを負ってボールを奪いにいってしまいました。
 この一連の守備は三笘のプレーではありますが、チームとしてコーチングできていなかったことの方が課題のように感じます。今季は前線からの守備が好調を支えている反面、そこのコントロールが怪しい場面も何度か見られます。これは前の選手主導で守備を進めているのが一つの要因で、FW起点だと勢いは出るものの、かわされてもリスクが低い場面が多いために奪いに行く選択肢を取りがちです。ただし2失点目のように自陣に近く、かわされると失点に直結する場面ではプレスを自重する必要があり、その守備判断を後ろの選手がサポートすることが今後求められます

自由なポジショニングは諸刃の剣

 さて1失点目に話を戻すと、こちらは守備というよりも攻撃、最後尾からのボールの運び方のミスを突かれた形になります。失点のきっかけは、左サイドでボールを受けた三笘が、松田・坂元に挟まれてボールを奪われたことです。被カウンターの対応としてPAに帰陣した結果、PA外の大久保にフリーでシュートを打たれてしまいました。

 奪われたシーンに注目すると、パスを受けた三笘が孤立していることがわかります。今年の川崎はビルドアップの際に、左SBの旗手が中央に移動することがあります(偽SBやカンセロロールとか呼ばれる動き)。本来であれば、この動きでC大阪の坂元を中央に引きつけ、三笘と松田が1対1の状況を作ることが一つの理想です。
 しかし1失点目の場面は、旗手が中央に寄ったものの坂本は動かず、逆に大久保の背後に隠れてパスコースを一つ消してしまいます。もちろんこれは一瞬のことで、その後動き直せば問題ないのですが、谷口は三笘へのパスを選択し、ボールを奪われてしまいます。
 今後も旗手の自由自在なポジショニングは川崎の武器になるので、是非とも続けてほしい一方で、諸刃の剣であることもわかりました。これまでと違う動きの分、ビルドアップに関わる選手に複雑な状況判断が求められますが、慣れていってほしいです。

良い守備がゴールに繋がったダミアン

 最後にダミアンについて。ゼロックスとJ1開幕戦とノーゴールでしたが、守備で疾走するダミアンは十分チームに貢献していると思わせる働きをしていました。正確なデータはわかりませんが、昨年以上に守備でのランニングは増えているでしょう。
 鬼木監督は下記のように評価しており、前の2試合はゴールはなかったものの前線からの守備や、ポストプレーでの味方のアシストなど、数字に残らない活躍をしていました。

鬼木監督「副キャプテンというものが影響しているかはわからないですが、チームにエネルギーを与えてくれています。プレスに関しても、体力を考えずにやってくれています。体を張るところもそうですが、チームに勢いを与えてくれています。ゴールにも期待していますが、仮にゴールができなくてもチームに貢献していると考えています。プラス、ゴールもとってくれているので、良い仕事をしてくれたと思います。」
(引用元:同上)

 とはいえゴールも期待したいと思っていたところに2G1Aの活躍で、得点能力の高さを見せつけてくれました。守備でチームに勢いをもたらすだけでも十分な貢献ですが、この試合のように、良い守備がダミアン自身の得点に繋がるように戦えるチームを期待していきたいです。

おわりに

 ここまで守備面での活躍が目立っていたダミアンが2G1Aと攻撃面でも躍動。他方で小林・遠野・長谷川の3選手は見せ場を作る意気込みは感じましたが、出場時間が少なく難しそうでした。連戦でスタメンのチャンスもあるはずなので、今は我慢の時期です。
 次節は仙台戦、東日本大震災によるリーグ戦中断から再開を迎えた際の初戦の相手で10年の節目の年となります。以来、友好な関係を築いてきたクラブとのゲームですので、ピッチ内外共に良い試合を期待しています。

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