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【Review】2021年J1第1節 川崎フロンターレVS.横浜F・マリノス「反省を活かしたクリーンシート」

はじめに

 2021年J1第1節の川崎フロンターレは、2-0で横浜F・マリノスに勝ちました。ホーム開幕戦での勝利はなんと2012年以来とのことで、引き分けのイメージをようやく払拭できました。

 ゼロックス同様に前半2点リードする試合展開で、ソワソワするサポーターも多かったと思いますが、結果的にはクリーンシートで終えることができました。スタメンが同じだったこともあり、同じ轍は踏みませんでした

前半の姿を目指したいマリノス

 攻守でポジションが変わるマリノスのサッカーは魅力的で、多くの戦術ブロガーに語られてます。何より今節は解説の戸田さんがyoutubeで感想戦を行ってますので、マリノスの戦術についての詳細はそちらにお任せします笑

 とはいえそれで全てが語られているわけではないので、ここでも少しだけ。マリノスのサッカーで興味深かったのが①選手の身体の向き②ポステコグルー監督の修正力です。
 まず1つ目ですが、マリノスはポジションを動かしながらボールを運びますが、その時に身体の向きでプレーが制限されているように見えました。たとえばティーラトン選手が左外から中に入って、つまり相手ゴールに対して右を向きながらビルドアップを進めることが多かったですが、この場合だとゴール方向のプレーを選択することができません。これは逆サイドの選手も同様です。
 そのため、ボールを受けても一旦持ち直すか、そのままの体勢でパスを出すためプレーが読みやすく、川崎として怖さを感じる場面は少なかったと思います。マリノスの目指すサッカーにおいては両足遜色なく蹴れる、もしくは一発で前を向けるスキルが重要だと感じました。

 もう1つがポステコグルー監督の後半の修正によって、川崎の攻撃を抑えることに成功していたことです。複数の意図はあると思いますが、ダブルボランチに変更して脇坂と田中をマンツーマン気味に守ることで、川崎の右サイドからの攻撃を防いでいました(詳細は後述)。
 さらに重要なのは、システム&選手変更によって攻撃の迫力を落とさずに守備を強化していたことです。特に前田の投入により前線からの守備を強め、ボール奪取&カウンターの回数を増やすことに成功します。またシンプルに前線にボールを送り、セカンドボールを回収することでボール保持の時間も確保していました。
 ただおそらくですが、ポステコグルー監督としては後半の戦い方は目指すべき姿ではないのでしょう。本来は前半のように選手が流動的に動きながら、攻守両面で最適なポジショニングでプレーし続けるのが理想なのだと思います。しかしこの試合ではそれが上手くいかず、大崩れする前に早めに手を打ったのだと思います。
 正直川崎としては後半の戦い方が嫌だった気がします。けれども川崎相手に戦い方を合わせるのではなく、自分たちを起点に魅力的で強いサッカーを築いていくために、前半のような入り方をしたのでしょう。監督はかなりの野心家のようで、シーズンを通して前半のような戦い方を研いでいくはずなので、次戦が楽しみです。

鬼木監督の具体的な指示の意味

 川崎はクリーンシートを達成し、ゼロックスの反省を十分に活かしていたように感じました。ゼロックスでは前からの守備を弱めた時間帯に失点していましたが、途中鬼木監督から三笘選手に「下がるな」と指示があるなど、この試合では全体を通してハードワークを保とうとしていたと思います。
 とはいえ後半、少しビルドアップを許す展開もあり、その部分に関しては今後の反省として捉えているでしょう。許した1つの理由は、ポジションが入れ替わった時に生じるズレを突かれていたためです。シュートが

 守備に関して全体的に鬼木監督の具体的な指示が多いように感じました。もちろん普段から指示の全量を聞き取れているわけではないので、あくまで”感じた”だけですが、ポジションのズレを指摘する回数が多かったように思います。
 これは一概に悪いとはいえませんが、ピッチ上で解決できていないことを意味している可能性はあります。たとえばボールを奪われた直後、選手の位置がズレている時に最適なプレスを誰が指示出すのかが、今のところ見えていません。1トップのダミアンの動きに合わせているだけで、全体の守備としての判断ではないように見える場面があります。
 相手のビルドアップ時などはある程度パターンで守れることもありますが、試合が進むにつれ相手の攻め方も変わります。そうした場面で臨機応変に対応するためにチームとして誰の声に従っていくのかは、今後期待したい部分です。

選手交代後も攻め続けるために

 今シーズンも「1試合3得点」を目標に掲げていますが、リーグ初戦は達成することができませんでした。前半と同様のペースで後半も攻めきれませんでしたが、前後半の攻撃の違いは右サイドの崩しにあります。
 前半の2得点は右サイドから生まれましたが、特に1得点目は川崎として狙い通りの形だったと思います。相手左サイドバック(川崎の右)の背後のスペースを使った攻撃は、家長や山根を活かした効果的なパターンです。特徴的なのは、右サイドの2選手に加えてIHの2選手(この試合は脇坂と田中)も裏に走り込んでいることで、これによって厚みのある継続的な攻撃になっています。前半はIHの2選手の上がりにマリノス守備陣の対応が後手を踏んでしまい、PA内まで侵入を許すケースが多く見受けられました。
 一方で後半は、前述の通りマリノスがダブルボランチにシステムを変更したことで、川崎IHの2人の裏抜けにマンツーマンで対応していました。これによって川崎は右サイド裏を突く回数が減り、決定機を作れなくなっていきました。こうした対応は今後も予想されるため、その場合にはこの試合でもいくつか見られた高い守備強度を活かしたショートカウンターなど、別の攻め方の精度を上げていく必要があるでしょう。

 今節で1つ気になったのが、終盤に選手を入れ替えた後の戦い方です。選手交代で守備強度を上げ、ボールを奪う回数は増えたのですが、ボール奪取後の攻撃が単発に終わるシーンが目立ったように感じます。
 その理由はボール奪取後の1トップの動き方の違いにあると思います。ダミアンの場合、プレスバックの流れでボールサイドにいることが多いため、チームはポストプレーからショートパスを繋いでゆっくりと前進を図ります。他方で小林の場合、奪った瞬間に相手ディフェンスの裏、もしくは相手から離れる動きでボールを引き出すことが多いため、チームは速い攻撃を選択することが増えます
 どちらが良いというわけではなく、この差異にチームが適応しきれていないために、終盤の攻撃が上手くいっていなかったように見えました。チームメイトは小林の特徴を理解しているとはいえ、残り15分で頭を切り替えて、かつそれを実行に移すことは困難でしょう。今後も続くダミアンと小林の併用に慣れ、終盤にもうひと攻撃できるチームを期待したいです。。

 もう一つ挙げると、シミッチが攻撃に絡む回数が少ないように感じました。その要因の一つがパスを出した後に足が止まっていることです。川崎のサッカーにおいて、特にサイドの選手とのパス交換の際は、相手選手も近くにいてスペースもない中で脱出を図る場面が多く、動きながらのパスで相手を外すことが求められます。
 しかしながらこの試合では、シミッチとのパス交換の末、後ろに戻すシーンが多かったです。チームとしては、前に出ている相手の矢印の逆を取って攻撃に繋げたい場面なので、周りとの呼吸を合わせていってほしいです。

家長もフロンターレのエース

 最後に、2得点で勝利をもたらした家長選手について。とはいえ得点シーンではなく、32分の決定機を外したことに対して感じたことを少しだけ。
 まず、家長でもああいった絶好のチャンスを決めきれないことに驚き、同時に安心しました。視聴者からは簡単に見えるプレーでも、ピッチでプレーする選手にとっては難しいのだと改めて感じました。そして「家長選手でも決定的なミスをするんだ」と、自分自身も勇気づけられるシーンでした。
 また、あれだけの決定機を外しても、引きずることなく淡々とプレーし続けるメンタリティは、プロサッカー選手として結果を出すために不可欠な要素だと思います。実際にその後2点目を決める姿は、プロフェッショナルの鑑です。あのメンタリティが生来のものなのか、それとも経験的に獲得したものなのかは分かりませんが、是非とも真似したいものです。いずれにせよ、あなたもフロンターレのエースですよ

おわりに

 今後は中2、3日の試合が続きます。5人交代とはいえ、選手の疲労が溜まっていくので、控えやベンチ外の選手の出場が予想されます。毎年のことではありますが、戦術面と選手のメンタル面を考慮したマネジメントが鬼木監督に求められます。
 次節はホームでC大阪戦ですが、開幕戦で得点した大久保が凱旋するかもしれません。ワクワクしているサポーターも多いのではないでしょうか。とはいえヨシメーターを更新はさせませんが


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