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大仏君 番外編③

番外編③ お告げ

月末のデートの前日、ラインがきた。

「今度の週末に親が病院で
検査受けることになってお金かかるから、
明日のデート代、さっちゃんに払ってもらうのは
虫が良すぎるかなあ?」
「あら親御さん大丈夫?
デート代、いつも出してもらってるから
こういう時こそお返ししたい気持ちは
めっちゃあるんだけど、
あいにく今手持ちがなくて
次の給料日まで日雇いのバイト
行かなあかんぐらいでごめんね。
デートはまたお互いに余裕ができるまで
延期しよう。」
「こちらこそごめんね。
来月に延期させてくれる?
手術必要になりそうで
結構お金かかるみたいです。」

(別に永久に延期でいいよ。
なんとなく明日行くのめんどくさくなってたし。

っていうか、年収そこそこあって、
独身、実家暮らし、子供もいなくて
慰謝料や養育費払ってるわけでもないし、
ギャンブルやってるわけでもなく、
唯一の趣味のフットサルも今はやってないのに
なんでそんなに金ないの?
エンゲル係数どんだけ高いねん!
これはきっとデートするなというお告げだわ。)

「オッケー。
こちらこそ肝心な時にお役に立てずごめんね。
親御さん、よくなることを祈ってます。」
「こちらこそごめんね。かっこ悪いね。」
「気にしないで。
気持ち的にも今は親御さんに専念する時期
というお告げかもしれないし、
今度会うときはお互いハッピーな状態で会おうね。
ありがとう。」
「ありがとう。確かにそうだね。
自分も日雇いバイト行こうかな。
いっぱいお互い癒やそうね。」

(お前は食べなきゃ金貯まるよ。
っていうか、癒さねーし。)

「おやすみ〜」


2週間後、突然ラインがきた。

「明日さっちゃんの近所の駅に仕事で行くよ〜。」
「おはよ〜。ごめん。昨日はもう寝てた。
今日近所に来るんだね。お越しやす〜。」

(だから何?って感じなんだけど。)

翌日の夜、
さちこが寝る前にと今度は早めにラインしてきた。

「こんばんは。元気にしてますか?」
「こんばんは。うん元気だよ。ありがとう。
大仏は元気?親御さんの具合どう?」
「気持ちはダウンだけど下は元気です。」
「そーなんだ。笑
気持ちどうしてダウンしてるの?大丈夫?」
「親の手術が持病が原因で延期になってる。
気持ちはさっちゃんに会えてないから落ちてる。」
「そっか、ごめんね。
やっぱ手術しなきゃいけないんだね。
持病の方は早く薬が効いて
手術できる状態になるといいね。」
「ありがとう。」
「色々大変だね。」
「大丈夫だよ!こうやって話せる相手いるし。」

(まあ彼女ではないけどね。
私はやる相手が欲しいです。)

それからしばらくバイトの話をしていると
突然電話してきた。

隣の部屋には夫がいるし、
当然電話に出れるはずもなく
キャンセルボタンを押した。

「今電話には出れないよ。ごめん。」
「こちらこそごめん。」
「また近所の駅に来ることあるの?」
「うん、月一回は契約あるから必ず行くよ。」
「そーなんだ。
じゃあ、また私のバイトが休みで
空いてたらお茶でもしようね。」

(もう空いてる日は永久にこないけど。)

「ぜひぜひ。やらしいこともね。」

(しねーよ。
ってか、ホワイトデーのこと完全に忘れてるやろ?
別に最初から期待してないし、いらんけど。)

「気分少し上がった?」
「やらしい写メあったら最高に上がったけど、
すごく上がったよ!」
「よかった。おやすみなさーい。」

彼とはもう会うことはなさそうだ。

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