【小説】フラッシュバックデイズ 0話
この小説は決して違法薬物を推奨するものではありません。
架空の話であり、小説、エンターテイメントとしてお楽しみください。
0話 始まり
2000年代初頭。
俺は神戸の山奥の大学の近くにマンションを借りて一人暮らしをしていた。
バンドサークルに所属し、バンド活動とバイトに明け暮れるどこにでもいる大学生だ。
ある日ネットサーフィン中にあるイベントが目に留まった。
その当時2000年初頭のクラブシーン、アンダーグランドシーンで活躍するオールジャンルの日本人アーティストを一斉に集めたそのイベントは大阪ドームの周りを囲むドーナツ状のスペースで開催され、その土星の環のような会場を指して「サターン(土星)」と称されていた。
そのイベントには一度見てみたいと思っていたバンドが出演する。
その当時の俺は興味はあったものの、クラブやドラッグは未経験なのはもちろん、オールナイトのイベントすら初めての体験だった。
一緒に行く友達等勿論おらず、一人で行くことにした。
野球に全く興味のなかった俺にとって始めての大阪ドームは想像するより遥かに大きく、小雨の夜に浮かぶ大阪ドームは近未来的な形をしていた。
今までで一番長く感じたエレベーターを昇り終え、会場に入る。
巨大なドーナツ状の会場は別世界だった。
大阪ドームの上部にぐるりと囲うドーナツ状の両端にステージが設けられその間は常に人の行き来が途絶えなかった。
俺は行き来する人達の風貌に度肝を抜かれた。
70年代からタイムスリップしてきたようなヒッピーファッション、B-BOY、仙人のような長髪と髭を蓄え真っ白の民族衣装、
ドレッドヘアー、髪にカラフルなチューブを取り付けたサイバーファッション、エスニックファッション、なんと表現していいかわからない独特な風貌、等々、一体普段何をしているのかわからない人達で溢れかえっていた。
皆が格好良く見えた。
まさに俺の知らない世界がそこにはあった。
苦手な酒を片手にお目当てのバンドまで両端のステージを行き来する人たちを眺めながら時間をつぶしていた。
日付が変わる頃お目当てのバンドが登場した。
歓声とともにバンドのフロントマンのドレッドヘアーのシルエットが見えた。手に光る球体のようなものを持っている。
歓声が止み静かになった瞬間。
衝撃派のような音が俺のいるステージ後方まで反響してきた。
光る球体が動くのに連動して音が出ているようだ。
バンドのフロントマンは叫びながら光る球体を動かし音を発生させていた。
衝撃派のような音と音の感覚が段々と近くなる。
歓声や雄たけびが上がり盛り上がりがピークに達すると、
一斉に3人のドラムの音が波のように押し寄せてきた。
まるで宗教の儀式のようだ。
それから先は良く覚えていないが音の奴隷のように無我夢中で身体を揺らした。
嵐のようなライブはあっという間に終了した。時計を見ると一時間程経過していた。
ライブハウスでの所謂縦ノリのライブしか免疫のない俺にとって、衝撃の「体験」だった。
以後このバンドは俺に多大な影響を与えることになった。
イベントが進むにつれ、ステージ間の通路はカオスと化した。
そこら中で寝転がる人、堂々とジョイントらしきものを巻く人、石のように銅像と化した人、輪になって喋りこむ人、まっすぐ歩けてない人、明らかにシラフではない人、、とにかく目に入るものすべてが衝撃的だった。
このイベントで初めて見た北海道出身のHIPHOPのラッパーの一言目は
「アンダーグランドなこの場に集まったジャンキー共に・・」
だった。
俺はこのイベントを機に急激にドラッグやクラブに興味を持つこととなる。と同時に大阪、この時に見た人達のようになりたいと強烈に憧れる事になる。
つづく
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初見だったけど無茶苦茶かっこよかったブルーハーブ。
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