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【小説】フラッシュバックデイズ 10話

この小説は決して違法薬物を推奨するものではありません。
架空の話であり、小説、エンターテイメントとしてお楽しみください。

10話 決意

玉の摂取を少し抑えたおかげで、俺の鬱も少しづつ回復してきた。
気づけばたった半年~1年程度で様々なドラッグを体験してきた。
つい先日は俺には縁がないと思っていたコークまで経験してしまった。
その時に俺は気が付いた。
ケミカルドラッグは何も残らない。
玉もそうだが、確かにコークのアガりは強烈だ。
一定の時間、自分の状況など関係なく、無条件で気持ちよくなり、暗い気持ちを吹き飛ばしてくれる。
しかし効きが収まると虚しさと、体に悪い事をした罪悪感しか残らない。
いうなれば愛のないSEXだ。

一方で草や紙はどうだ。
草は酒が飲めない俺の晩酌となり、日常に溶け込んだ。
何故これが違法なのかわからない程、危険性や身体への有害さも感じなかった。
紙も厳密に言えばケミカルの一種だが、玉やコークに比べると全くの別物に感じる。
セット、セッティングと言われる、自身の心理状況や環境に左右される繊細な効きであるが、自分の内面と向き合うような、神秘的なモノを感じる。
実際に初めて紙でぶっ飛んだ日から、数回紙を試した。初めての野外程の最高のトリップではなかったが、俺はこの一人旅に近い感覚のLSDのトリップに惹かれていた。
LSDの効果がなくなった後も物事の考え方、価値観が少しづつ変わってきた。ドラッグで自分の価値観にまで影響が出るとは少し驚いたが、悪い方向にではなくなく、正しい方向に変化していると感じていた。

今まで何も考えずに生きてきた。
特に目的があるわけではなく、とりあえず大学に進学した。このまま適当に就職して、いわゆる普通の人生を送るもんだと思っていた。
LSDトリップは常識や価値観を良い意味で崩してくれた。
俺は人生で初めてこれからの人生について真剣に考えた。

これは俺の人生だ。おれのトリップだ。
まだピークでもないはずだ。
思うがままに、好きな事、やりたい事をしたい。

学びたい事があるわけでもない大学にはもう通う気にはなれない。
なんとか親を説得し、休学中だった大学を辞めた。
ドロップアウト。
自由を得た、清々しい気持ちだった。
もはや大学の近くに住む理由もなかった。
大阪に行こう。
何もアテはなかったが、大阪に住んでみたかった。

大阪のクラブ仲間に報告、相談がてらクラブに行った。
たまたま、クラブ仲間に不動産屋さんがいたことで、
物件もなんとかなりそうだ。
チルスペースでほっとしていると、リノさんと中井さんがやってきた。
「大阪来るん?」「歓迎するで」
やはり二人は頼もしい姉だ。
二人は予定しているオランダ旅行の話を始めていた。
オランダと言えば大麻が合法の夢のような国だ。
俺は無理を承知でお願いした。
「俺もついていっていいですか?」

つづく

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