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【小説】フラッシュバックデイズ 29話

この小説は決して違法薬物を推奨するものではありません。
架空の話であり、小説、エンターテイメントとしてお楽しみください。

29話 ネパール編④ アイルビーバック

いつの間にか眠っていた。
ノックで目が覚めると、昨日の大学生の女の子がわざわざ別れを言いに部屋まで来てくれた。バス乗り場まで女の子を送った。
人との出会いはタイミングが全てだ。
一日早く出会っていれば、俺はこの女の子と一緒にバスに乗っていたかもしれない。
バスに乗る彼女を見ながら俺はこの旅で初めて日本に帰る事が頭に浮かんだ。
今日もヒマラヤには雲がかかっている。
ヒマラヤが見えたらポカラを出よう。

それから数日は散歩をしたり、レンタルバイクで遠出したりと、観光客のようにポカラを楽しみながらも、ブランシュガーのせいだろうか、部屋からあまり出たくない日もあった。旅に出た当初の熱量は消え、醒めた日々を過ごした。心のどこかに日本に帰りたいなというホームシックになっていた。
ポカラに来てから一週間が過ぎた頃、テラスで朝食を摂っていると、オーナーが今日はヒマラヤが見えると。
屋上に上ると、雲の隙間からヒマラヤの頂きが見えた。
感動というよりは、これでやっと日本に帰れるとホっとした気分だった。

とはいっても、ポカラから日本への飛行機はない。
日本へと帰る為、俺はネパールの首都カトマンズへと向かった。
カトマンズもまた、バックパッカーなら一度は訪れたい都市の1つ。
もちろん日本人バックパッカーにもたくさん出会った。
旅で知り合いカップルになったという、ヒッピーの二人と一服をした。
仲睦まじい様子を見て、羨ましいと思うと同時に余計に日本に帰りたくなった。
深夜特急よろしく、中国から陸路でネパールまで辿り着いた男にも出会った。男は日本でしっかりと金を貯め、準備をしてから旅に臨んでいた。
俺は思い付きと勢いで旅に出た自分を少し恥ずかしく感じた。
俺も金を貯めたらすぐに旅にでよう。
初めての一人旅はただのドラッグ旅行のつもりだったが、またすぐに旅に出たい気持ちにさせた。

旅は人生の縮図のようだ。
日本へと帰る飛行機の中で少し哲学的な事を考えていた。

関西空港では真っ黒に日焼けした手足にバックパックを背負った長髪の俺は当たり前のように持ち物検査の為、別室に通された。それが何故か誇らしげに感じた。

あれから数十年、パスポートは一度もスタンプを押されることもなく、期限が切れ込れたまま部屋の奥底に眠っている。

つづく

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