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【小説】フラッシュバックデイズ 25話

この小説は決して違法薬物を推奨するものではありません。
架空の話であり、小説、エンターテイメントとしてお楽しみください。

25話 インド編⑤ グッバイ、インド、グッバイ 、バナラシ

ハシシの男は毎日俺のゲストハウスに俺を訪ねてくるようになった。
煩わしかったが、俺をここまで連れて帰っってくれた恩があったため、無下にするわけにもいかず、こっそりとゲストハウスを移ることにした。
毛嫌いしていた日本人宿だったが、泊まってみると清潔で、屋上はほぼ貸し切り状態でハシシを吸いながら寝っ転がるのが日課となっていた。
俺はバナラシに沈没(長期間滞在する)しかけていた。

意気投合していたヒデは数日前にゴアへと出発した。
ゴアと言えばサイケデリックトランスのパーティーが頻繁に行われるヒッピーの聖地のような場所だ。
一緒に行こうと誘われたが、地図のバラナシからゴアの距離はニューデリーからバナラシの2倍は軽く有ることを考えると、腰が重く感じ、金が続くか心配だった。おまけにその時の俺は腹を下し体調が最悪だったので、誘いを断った。

体調が戻ってくると、俺は目的もなくバラナシの街を歩き回った。
真っ白なサドゥー、ガンジス川、汚いながらも愛着の沸く路地、世界中から集まるバックパッカー、ガンジャ、牛、狂犬病のように毛の抜けた犬、屈託のない笑顔の子供立ち、ガンジャ入りクッキー、日本の女子大学生旅行者達とのランチ、死体を焼くガート、長渕剛のサイン色紙、シャバシャバのカレー、、、などこのバラナラシの巨大迷路は「カオス」という言葉がふさわしい、なるほどここがインドのバナラシか。バラナシが旅行者を引き付ける魅力が少しだけわかったような気がした。

いつものように屋上でハシシを吸いながらボーっとしていると、洗濯物を干しに来た同宿の日本人に声を掛けられた。この宿はほとんどが日本人が宿泊しており、誰かが入ってきた日や最後の夜には皆で夕食を囲んでいた。
普段はあまり気が進まなく断っていたが、今夜はなぜだか人恋しくなっていたため参加することにした。

驚いたことに空港からニューデリーまで一緒だった大学生の男の歓迎会だったようだ。気の弱そうな大学生の男は、聞けば、ニューデリーで病気にかかったり、インド人のガイドにぼったくられたりと、さんざんな目にあったようで数週間前よりげっそりしていて、なんだか疲れているように見えた。

本日はこの男の歓迎会と送別会を兼ねていたようで、送別会の男は明日ネパールへと旅立つそうだ。その男はインドに少し疲れたようで、ネパールのポカラという街でヒマラヤを見ながらゆっくりと過ごしたいそうだ。
この男の言う事は一理ある。
ここバナラシは確かに魅力的な街だが、気が抜けないというか少し気疲れしてしまう。
バラナシも少し飽きていた俺は重い腰を上げることにした。

数日後、バックパックを背負いバラナシをからポカラ行きのバス乗り場へとリキシャに乗ってバナラシの街を後にしようとすると、遠くから名前を呼ばれた。声の方に目をやると、ハシシの男が手を挙げていた。
黙ってゲストハウスを移った俺は申し訳なさそうに手を上げると、男は笑顔で返してくれた。
「また来いよ」そう言ってくれているような気がした。

つづく

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