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変わらずにわたしは、木蔭をつくりたいと思っている。

「くりたさんは文章を通して、根源的にはどんなことを伝えたいの? 味わってほしいの?」と美容師さんに聞かれた。鏡越しに視線が合う。ぽろっと出てきた自分の言葉に、初心を思い出した。

こんにちは、こんばんは。くりたまきです。

「木蔭みたいな場所をつくりたいんです。現実でも、WEB上でも、心のなかにも。涼しくて、木漏れ日が落ちてきて、樹々の揺れに風を感じる。そんな安心できる場所を」

そういえばそうだったよなあと、自分で話していて納得した。1年前くらいかな、通っていた「企画メシ」の最終回、わたしは木蔭をつくりたいと発表していたんだった。

つらい思いの真っ只中にいる人に、日向は明るすぎる、とわたしは思う。いろんな人が心穏やかに休める場所がほしくて、わたしは木蔭を目指すことにした。

影のなかに不規則に揺れる木漏れ日は、癒しの緑色を帯びて、やさしく心に届く。

べつに、特別に弱い人をターゲットにしたいとか、そういうわけでもない。誰もがさびしさを抱えていて、なにかしらの傷を負っている。

あなたにも、わたしにも、すべての人に木蔭あれ、と思う。

そんな気持ちで書き続けてきて、たしかに木蔭に近づいてきている、そう思えた。

わたしの書いたものに、一緒にしあわせを見つけてくれる人。あたたかい眼差しで応援してくれる人。いろんな人がいる。

「書いたものを読むようになって、あなたのことが前より知れてもっと好きになった」と言ってくれた古くからの友人もいる。

どのnoteが読まれたとか、あそこの表現がよかったとか、役に立ったとか。そういうことじゃなくて、わたしに親しみを持ってくれる人がいるってすごいことだなあ。

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美容室に通うということは、定点観測しているようなものかもしれない。

同じ場所で同じ美容師さんに周期的に会う。

2か月の時を経てわたしは同じ椅子に座り、伸びた髪と、変わった自分自身に気づいた。

運転がうまくなったこと、取材を受ける立場を味わったこと、波佐見でやりたい仕事が増えていること。

そんななかで変わらない「木蔭」をつくるという気持ち。

わたしがこの美容師さんと美容室が好きなのも、木蔭みたいだからかもしれない、とふとお店を出たあと思った。

美容師さんは明るくてやさしくて、とびきり腕がいい。でも、たくさんあがいて傷ついて成長して、いまの彼になったんだろう、ということを感じさせる、樹の年輪が幾重にも重なっているのが見える人だ。

やっぱりわたしは、木蔭がつくりたいし、そもそも木蔭が好きなんだなあ。

さいごまで読んでくださり、ありがとうございます! サポートしてくださったら、おいしいものを食べたり、すてきな道具をお迎えしたりして、それについてnoteを書いたりするかもしれません。