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メリークリスマスだよ、きみ。

街の気配そのものが、浮かれている。昼間はまだ電飾の光もないのに、輝きがふだん以上に見えて。中野駅ですれ違ったカップル、その女性の大きく口を開けた無防備な笑顔がきらきらしていて、こちらまでうれしくなる。「メリークリスマスだよ、きみ」と心のなかでつぶやいた。

メリークリスマスだよ、くりたまきです。

今日は心のなかで「メリークリスマスだよ、きみ」とつぶやく遊びをしていた。街で見かけたひとに、サンタクロースの気分で声をかける。

店先の青いシューズを見つめる小学生、
坦々麺をおいしそうにすするおばあちゃんふたり、
グレーの制服を着た声の高い女子高生、
黒いトレーナー姿でメガネの案内をした店員さん、
黄色いエプロンをした売り子のおばちゃん。

みんなみんな、メリークリスマスだよ。

気分だけサンタクロースのわたしに、なんの魔法もかけられないけれど。それでも、言いたくなるじゃないか。

わたしは治りかけの風邪を引き連れ、慌ただしく過ごしたよ。用事の途中で昨日壊れてしまったメガネを新調してじぶんへのプレゼントにしたよ。あたらしいメガネ、また世界が違って見えて、気分が上がる。

住んでいる方南町へ戻り八百屋さんに寄ると、声の大きいおじちゃんがあれこれすすめてくれる。完熟してから収穫してるから甘いよ、と教えてくれた大きなトマトをひとつと、シナノゴールドのこれまた大きなりんごを買った。おばちゃんがちょっとおまけしてくれる。クリスマスの赤が、袋にふたつ入ってカサカサ揺れた。

こんなクリスマスが、よろこびに満ちている。今日だけのしあわせが、ちゃんとある。誰かにメリークリスマスとつぶやいたぶんだけ、しあわせになっちゃったのかもしれないな。

メリークリスマスだよ、きみ。

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