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『ぼくらは嘘でつながっている。』がほんとうになるまで。【浅生鴨さんと2022年08月10日の夜③】

全5回です。詳しい経緯は①をご覧ください。

②毎日1行でも書く。さいごまで書ききる。そして書き直す。

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よしザわ:今回わたし、『KUKUMU』で短編小説に挑戦したんですけど、1本書くのでさえ大変でした。なのに、鴨さんはずっと週に2本も、毎週火曜日と金曜日に note で短編小説を書いてらっしゃるんですよね。「なんで書けてるんだろう、おかしいなあ」と思っちゃいました(笑)。

浅生:それはね、完全にどうかしてると思ってるの! むちゃくちゃだもん、左右社さんのこの企画。

よしザわ:(笑)
栗田:(笑)

よしザわ:企画がはじまったときの話を、以前鴨さんにお聞きしたんですけど、もう意味がわからなくて。いきなり「200本の短編を書きましょう」って左右社の編集者さんがおっしゃって、鴨さんが……なぜか300本、note に書いて、それを書籍化することになっているっていう。

浅生:めちゃくちゃですよね。

よしザわ:なんで鴨さんはこんなスピードで仕事ができるのか、不思議でしょうがない気持ちで毎週見ています。

浅生:ぼくも毎回、よく間に合って書けてるなと思います。ほら、別の仕事もあるから。『ぼくらは嘘でつながっている。』のゲラに朱字入れてる最中でも、note に左右社で依頼されてる短編がアップされてるから、ダイヤモンド社の今野さんも「いま、うちのゲラに朱字入れてるんじゃないの?」って不思議がってると思うんですよ。

ダイヤモンド社の編集者・今野良介さん

よしザわ:何人いるんですか、鴨さん(笑)。鴨さん主宰の同人誌『ココロギミック』で、今野さんが鴨さん宛に書いた、『ぼくらは嘘でつながっている。』の執筆依頼文を読みました。おふたりとも、リアルタイムで本ができていくところを Twitter でも発信されてるので、 読者としてすごく楽しみです。

浅生:大変ですよね、Twitter で可視化されるからサボれない(笑)。『ぼくらは嘘でつながっている。』も、もうちょっとズルズルねばれると思ってたのに、先に発売日を9月13日って決められて発表されちゃったから、 しょうがなしに書いたんです。

よしザわ: ねばる気まんまんだったんですか。

浅生:ええ、最初から。「年内発売くらいかな」と思ってたのに。

よしザわ:『ココロギミック』に掲載された今野さんの依頼文、あれを今野さんが書いたのはどのくらいの時期だったんですか?

浅生:あれはね、3月ぐらいかな?

よしザわ:じゃあ制作期間は半年くらいで発売って感じなんですね。

浅生:えっとね、前々から今野さんに「なにかやりませんか?」とは誘われてて、「やります、やります」って適当に返事してたんだけど、3月にあの依頼文をもらって「あっ、この人本気なんだ」とわかって。
そのあと5月くらいに今野さんから「6月末締切で、頑張って書きませんか?」って言われたので、しょうがないなと思って7月に入ってから書きはじめました。

栗田:あの、締切を思いっきり過ぎてから……。

浅生:ええ。6月末締め切りって言われたので、7月2日とかに書きはじめたの。そしたらもう、発売日が決まってて発表しちゃってるから、「なにがなんでも7月半ばまでには原稿あげてもらわないと」って今野さんが言ってきたんです。だから最後、すごいスピードだったんですよ。

よしザわ:急がないとっていう。

浅生:自分でもびっくりしましたもん。「えっ、おれ、こんなペースで書けるの?」って。これだったら、ほかの仕事ももっとギリギリまでねばればよかったなあって思いました。

よしザわ:鴨さんに仕事を頼むのがどんどん大変になりますね、編集者さんたちは(笑)。

浅生:もともとの締め切りが6月末だったのが、 7月になってからぼくが書きはじめてるから、編集者の今野さんはスケジュールを仕切りなおしたわけですよ。いつまでに書きあげて、いつゲラを出して……というのを組み直して連絡してくれて。そのメールの最後に「これでもう、ほんとうにバッファはありません」って書いてあったの。だからそれを見てぼくは「な〜んだ、やっぱりバッファあったんじゃん」と思って。

栗田:鴨さん、そういうツイートしてましたね(笑)。

浅生:やっぱりな、と思って(笑)。

よしザわ:今野さんの仕事の大変さがわかりますね。

浅生:今野さんがいちばん困ってるのは、ぼくが製本の進行を知ってることですね。ふだんぼくが同人誌をつくるときって、まともな出版社ではやらないような進行をするから。ぶっちゃけ、いつまでになにをしたらギリギリ印刷が間に合うか知ってるんです。だから編集者としては、やりづらいと思うんですよね。

よしザわ:今野さん、大変だ……。

浅生:ね〜、今野さんえらいよね。別に担当だから言うわけじゃないけど、今野さんはやっぱりすごく優秀だと思います。すごい。

栗田:やっぱり。

浅生:なにが優秀って、なんだろうな。著者をやる気にさせてくれるんです。「やらなきゃしょうがないな」って、ちょっと今野さんがかわいそうになってくるというか。ちゃんとやろうって思わせてくれる。

著者と編集者のツーショット

つづきます

『ぼくらは嘘でつながっている。』は無事、現在発売中です!

・タイトル画像は、『KUKUMU』の渡辺凜々子さんにつくっていただきました。
・この note は浅生鴨さんに許可をいただいて、勝手に書いたものです。


さいごまで読んでくださり、ありがとうございます! サポートしてくださったら、おいしいものを食べたり、すてきな道具をお迎えしたりして、それについてnoteを書いたりするかもしれません。