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締め切りを守れないのは、プロとして恥ずかしいこと。【浅生鴨さんと2022年08月10日の夜④】

全5回です。詳しい経緯は①をご覧ください。

②毎日1行でも書く。さいごまで書ききる。そして書き直す。
③『ぼくらは嘘でつながっている。』がほんとうになるまで。

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よしザわ:『ぼくらは嘘でつながっている。』は書く前に発売日を先に決めちゃったとおっしゃってて、わたしも編集者の卵なので、そこがすごいなと思いました。ふつう決めないですよね。どうなんですか?

今野さん喫茶店_kamo

浅生:それがね、長編の『伴走者』を書いたときも、講談社の人が発売日を決めて発表しちゃったんです。まだ1行も書いてなかったのに。
あと左右社で『どこでもない場所』ってエッセイ本を出したときも、秋ぐらいに「来年の夏に出しますから」って決められちゃってて、そこから逆算すると週に1本ぐらい書かなきゃいけないから、編集者が毎週原稿を取りに事務所まで来てました。

よしザわ:よくあることなんですか、締め切りが先に決まっちゃってるって。

浅生:たぶん、ふつうはない。ぼく、書かないから。堂々と言いますけど(笑)。発売日を決めたら書くんだっていうのが、ばれたので。
あの、いまやってる週2本の短編って、note の定期購読マガジンなので、ちゃんと読者からお金をいただいて書いてるんですよ。だから、これは去年の10月にスタートしてから10ヶ月経ちますが、1回も、ほんとうに、いっっかいも、1秒も遅れたことないですからね。

よしザわ:いやあああ、すごい。

浅生:お金をもらって、「この日この時間までに」って決まってたら、ぼくはやるみたい。ぼんやりとスケジュールおまかせで、「原稿できたらください」みたいな仕事はたぶん永久にやらないと思う。

よしザわ:じゃあ締め切り守れてるから、わたしたちの noteマガジン『KUKUMU』のメンバーは頑張ってますね……。お金も出ない自主企画なのに(笑)。

浅生:えっ、でもまとめて書籍化とかするんでしょ?

栗田:そうですね、zine とかをつくって、文学フリマで売りたいねとは話してます。

浅生:文学フリマ、楽しいからね。

よしザわ:このあいだ初めて文学フリマに行ったんですけど、すごい楽しかったです。

栗田:締め切りの話でいうと、鴨さんから今野さんに『ぼくらは嘘でつながっている。』の初稿がスケジュール上ギリギリで提出されたとき、今野さんが DM でめちゃくちゃ荒ぶってて、テンション高かったんです。

浅生:あ、そうなの? 荒ぶってたの?

栗田:「これはもう、めちゃくちゃおもしろい原稿が上がってきた。けど超ギリギリで、今夜おれは、超特急でやらなければならない」って。

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荒ぶる今野氏

浅生:そうなんだ(笑)。悪いことしたなあ。

栗田:「これはすごい本が出ます!」って今野さん興奮してました。

よしザわ:すごいなあ。もうあと1ヶ月ちょっとで発売ってことですもんね?

浅生:そうです、それなのにまだ朱の入ったゲラを持って、ぼくは今野さんの家まで移動中です。大丈夫なのかね、ほんとうに。

よしザわ:……きっと優秀な今野さんが、なんとかしてくれると思います。

浅生:たぶん今晩また、今野さんが徹夜するんだろうね。

よしザわ:かわいそうに……。

浅生:でもそれは、今野さんが悪いんで。しかたないですよ。

よしザわ:鴨さんのお話聞いてると、「こんなに締め切り過ぎてるのに、堂々としてていいんだあ」って思います(笑)。

浅生:でもね、それはね、プロとしてはほんとうに恥ずかしいことなんですよ。恥ずかしいから開き直って堂々としてるけど、商売でやってる以上、締め切りはきっちり守らないといけない。
「締め切りなんて守れない!」とか「遅れました!」とか公言している、ぼくのような人間はほんとうにクズなので。みなさん、そうならないようにしたほうがいいです。

よしザわ:わたしも間に合わせようと頑張ってるんですけど、『KUKUMU』の原稿締め切りも、栗田さんに提出するのが5分とか遅れちゃって、悔しいときがあります。

浅生:ぼく、別に締め切りを守らないつもりはまったくなくて、いつも守る気満々なんですよ(笑)。だけど、なんかね、突発的な事件が起きちゃうんですよね。

栗田:鴨さん、書きはじめてないだけで、準備はしてるんですよね?

浅生:ものすごく準備してます。資料は集めているし、頭のなかで構想を練っているし、執筆期間のスケジュールも空けて確保してます。で、「よし、この期間でまとめて書いちゃおう!」と思ったら……その日になんか事件が起きたりするんですよ。猫が病気になるとかね。

よしザわ:でもそれはもう、猫を絶対に優先しないとですね。

浅生:そう。そういうことが必ず……必ず起きるんですよ(笑)。

よしザわ:その、なにか起きるぶんも、スケジュールに入れてみるというのは……?

浅生:入れてるんだけど、それを上回るんですよ、事件が。

よしザわ:(笑)。
栗田:(笑)。

浅生:今日もほんとうはぼく、朝から手書きの朱字を全部データに反映させて、それを編集者の今野さんに渡す予定を組んでたんです。そうすると編集が楽だからね。その打ち直し作業をやろうとしたら、今朝、パソコン動かなくなっちゃって。

よしザわ:そうだ、ツイートしてらっしゃいましたね。

浅生:しかも夕方までパソコン動かなくて。

栗田:ええー!

浅生:15時くらいにようやくパソコンが立ち上がって、「よし!」と思ったら来客があって2時間くらいお客さんの相手してて……っていう突発事態が、ね。起きるんだよ、ね……。

よしザわ:それは……お疲れさまでございました。

浅生:それがなかったらもう今日たぶん、夕方には今野さんの手元にゲラが届いてたはずなんだけど。こんな時間になっちゃったのは、ぼくじゃなくてコンピューターが悪いです。

このスペースのあと真夜中に、ゲラを持っていった鴨さんと、公園で会う今野さん。

つづきます

無事に『ぼくらは嘘でつながっている。』は発売されました!

・タイトル画像は、『KUKUMU』の渡辺凜々子さんにつくっていただきました。
・この note は浅生鴨さんに許可をいただいて、勝手に書いたものです。

さいごまで読んでくださり、ありがとうございます! サポートしてくださったら、おいしいものを食べたり、すてきな道具をお迎えしたりして、それについてnoteを書いたりするかもしれません。