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浅生鴨の短編Z

月に二本の短編を掲載します。一篇ずつでも購入できますが、マガジンをご購読いただくと、ほんの少し割引になります。あとコメントは励みになります。誤字脱字の指摘も喜んで!(あまり喜ばな…
僕は締切りがないとぜんぜん書かないので、短篇集の担当編集者から「noteで連載しろ!」と強制されて…
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記事一覧

島で一番

 島の山側にはあまり住人がいないのでそれなりに車のスピードを出してもたいして問題はないよ…

360
浅生鴨
4週間前
17

言いわけよりも

 プロジェクターの映像が消え、窓のカーテンが開かれると会議室が一気に明るくなった。  箱…

360
浅生鴨
4週間前
28

新生地

 どこまでも光を吸い込み続ける夜の砂漠も、二つ目の月が昇ると砂丘の形がはっきりとわかるよ…

180
浅生鴨
2か月前
18

島にて

 その日、ファノンは日が落ちてすっかり暗くなった港を一人でうろついていた。船を探すためだ…

200
浅生鴨
2か月前
18

ミックス

 井塚は通りの反対側に立って、しばらくその弁当屋を眺めていたが、ようやく何かを思い出した…

浅生鴨
3か月前
29

使わなきゃ

 駅の改札を出ると、目の前には田畑が広がっていた。そのすぐ先に見える山脈は、ゆっくりと弧…

浅生鴨
3か月前
22

三百の夢想

 開け放たれた窓からは秋を感じさせる風と、まもなく夏休みを終える子供たちの声が流れ込んでいた。  応接のソファに腰を下ろし、青谷凪亮子はぼんやりと壁の時計を眺めていた。右往左往社の編集者である彼女は、いつもと同じように今日も青色のゆったりとした服を着て、裾をひらひらとさせていた。いつだったか、金魚のようだと言われたことがある。  この家の主、丸古三千男は先ほど奇声を上げながら書斎へ飛び込み、それきり姿を見せようとはしなかったが、亮子は気にも留めていなかった。ベテラン作家の奇行

¥120

今の時点では

 不動産屋だという目の前の二人は、きちんとしたスーツに身を包んでいるものの、どこか胡散臭…

120
浅生鴨
3か月前
30

消える理由

 書類の上にボールペンをそっと置き、治夫は両肩をぐるりと回した。凝り固まっていた首筋がバ…

120
浅生鴨
3か月前
32

来訪者

 窓から見える地球に目をやったシュンヤは心の中で大きな溜息をついた。ここへ来てから三か月…

120
浅生鴨
3か月前
27

組み立て式の家具

 部屋の中に置かれたダンボール箱をひと目見て、有音は不満そうに鼻を鳴らした。  大きなダ…

120
浅生鴨
3か月前
26

短編三〇〇のその先に

定期購読マガジン『浅生鴨の短編三〇〇』の購読者、およびメンバーシップ『名前はまだない。』…

30,000
浅生鴨
3か月前
41

お支払いは

 カフェに入ってきた治夫は、壁際の席でパフェを食べている俊哉をすぐに見つけて手を振った。…

120
浅生鴨
3か月前
24

セキュリティ対策

 資料を送るからすぐに見て欲しいと言われ、古庄敏夫はリビングのソファに寝転んだままノートパソコンを開いた。  うっかり電話に出るんじゃなかった。たった一本の電話でせっかくのんびりしていた休日の午後が台無しになるのだ。指示を出すやつらは自分の好きなタイミングで指示を出せるが、指示される側の俺たちにはタイミングなど選べないのだ。そう思って古庄は鼻から息を吐いた。次は絶対に電話を無視してやる。  ポポッ。通知音が鳴った。メールが届いたらしい。  パソコンの画面に視線を向けた古庄は思

¥120