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デザイナーの就活事情

僕は日本の就活が嫌いだ

先日第一志望の企業にデザイナーとして内定が決まった。ここに至るまで何回も何回も他の企業の面接を受けた。エントリーシートもたくさん書いた。OBやOG、その他の大人の方も数えられないほど訪問したし、色んなセミナーに足を運んだ。

就活のために多くのお金も時間も犠牲にした。たった何十分かの面接のために多額の飛行機代を払ったこともあった。

しかし、こんなに苦労しているのに会社側は平然とお祈りメールを送ってくる。まわりの人は院進が多いため、孤独で相談できる人もおらず、メンタルも崩壊していく。

ただこれは嫌いな理由の一つに過ぎない。僕が嫌いなのは日本の就活、もとい就活生の意識である。


就活生 vs 企業

大したスキルや実績を持っていない人でも、面接で相手に好印象を与えさえすれば受かってしまう。嘘をついてでも、話を大袈裟に盛ってでも、通る人は通る。面接官との相性が悪ければ落ちる。就活とはそんな世界だ。

そして世の大学生の大半は大企業志向である。会社の数なんて星の数ほどあるのに、学生が知らなくも社会人が知っている企業なんて数多くあるのに、なぜか学生は大企業に行きたがる。

それは就活生の視野が狭いからだ。自分が知っているから、有名だから、という理由だけで、頑張ってその会社に合わせてエントリーシートや面接で架空の自分を装い、そして落とされていく。

これが日本の就活の現状である。海外のスキル重視の採用とは違う、日本のポテンシャル採用。偽りの自分を演出した人が受かり、正直者は落とされる。だから僕はもう一生したくない。


デザイナーの就活事情

だがデザイナーを目指す人の就活はちょっと変わっている。なぜなら彼らには「ポートフォリオをつくる」という義務があるからだ。デザイナー職を志望する人にとってポートフォリオの制作は切っても切り離せない存在である。

また、企業によっては課題が出されるところもある。例えば「◯◯というお題で商品やサービスをデザインしてください」とか「弊社のサービスを一つ取り上げ改善案をデザインしてください」といったものだ。かなり大変だがその企業を志望するなら通らなくてはならない道だ。

また、面接でもポートフォリオや課題について聞かれる。30分の面接だと大体前半の15分が自己紹介や志望動機、学生時代頑張ったことなど、よくある質問。そして後半の15分がポートフォリオや課題からの質問である。

だからデザイナー職志望の人は、面接の練習や推敲の他に、ポートフォリオや課題の制作もしなければならない。大学の課題やテスト、研究、サークル、イベントなどと並行して制作しなければならないため、あまりにも大変である。僕は、①展覧会の運営、②研究室配属のための試験勉強、③就活のための制作 の3つを同時並行でやっていたため、冬から春先にかけては死ぬかと思った。

ただ、デザイナー選考ではポートフォリオを通してある程度スキルが見られる。そのためポテンシャル採用と違い、作品や作品のストーリーで自分を語ることができるのだ。だから嘘もつきにくい。この点は海外のスキル重視採用に少し似ているかもしれない。


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▲ 約半年かけて制作した冊子のポートフォリオ。50ページある。

▲ 同時並行で制作していたWebのポートフォリオ。


面接対策も入社後も大変なデザイナー職

デザイナーとして就活するには大変だ。しかも世の就活生は総合職で受ける人がほとんどなので、就活情報サイトを見ても総合職を対象にした対策や求人ばかり。

そして何より、デザイナー職は募集人員が少ないため狭き門である。特に今年はコロナ渦で採用人数を減らしたり、採用を中止した企業もあって、より大変な状況だった。

関東の有名美大芸大は就活セミナーをデザイナーの先輩が開いたり、先輩のコネで有利に動けたりもする。ただそれは美大芸大の学生に与えられた特権だ。もし総合大学のデザインに関係ない学部の人がデザイナーを目指すなら、そういった情報にリーチするまでの手段は皆無かもしれない。

そしてデザイナーは入社してからも大変だ。日本ではデザインの価値がまだまだ認められていない部分が多く、需要も少ないため他の職種に比べると年収が低い。だからデザイナーで実力のある人は、独立をし会社員デザイナーを辞めている人も多い。デザイナーとはこういった不遇を受けながらも日々私たちの身の回りのサービスや製品を作っている。


デザイナーという仕事

じゃあなぜデザイナーを志望するのだろうか?
人によって様々な意見があると思うが、僕が志望する理由はただひとつだ。

それは、デザインが好きだから。

僕はものをつくったりデザインしたりすることが何よりも好きだ。一度やり始めたらぶっ通しで6〜7時間やっていたこともある。飽き性の僕にとってこんな熱中できるものは今までなかった。

だからたとえ残業が多くても、年収が低くても、面接対策が難しくても、絶対にデザインを仕事にしようと思った。デザイナーはただものを作るだけの人じゃない。ものをつくるまでの企画や立案、またアイデアを練ったり、時には調査をしたり、そういった過程を経て形を作り上げる。そしてそれを世に送り出すことで社会の笑顔を作っている。

大好きで熱中できるもの、そして社会の笑顔を作れるもの。これが僕が世の中に貢献できるデザイナーという仕事だと思った。

デザイナーを目指す人は「デザイン」ひいては「つくること」が好きという思いが絶対根底にあるはずだ。だからそんな強い思いを持つ人はこんな状況下でも諦めずに夢に向かってほしい。

長い人生の中で就活はたった何ヶ月という短い期間しかない。その期間怠惰に過ごして夢を諦めるのか、また本気で努力してデザイナーになるのかは自分次第だ。だからぜひ夢を叶えてその「好きな思い」を実現してほしい。


ではまた、デザイナーとして、ビジネスの場で。

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