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【詩】僕と野良猫の物語

雪の降るなか出会った野良猫は
とても人見知りなのか
顔を合わせた途端
おじいちゃんの家の床下に
そそくさと潜りこむ
何となく放っておけなくて
様子をうかがうと
足をお腹の下敷きにして
うずくまりながら
僕を見上げてる
一つ二つ言葉をかけて
一つ二つまばたきが
答えのように返される

友達がひとり増えたようで
明くる日もまた明くる日も
僕は持てる言葉を駆使して
そのたび野良猫が
まばたきで答えてくれる
そんな時間を共に過ごす
それがなぜだか嬉しくて
かけがえのない友達に思えた

しばらくして
自分たちの家に帰る日が来て
お別れを言おうと
おじいちゃんの家の床下を
のぞいてみたら
野良猫の姿が見えない
どこへ行ってしまったのだろう
ちゃんとあいさつしたかったのに

あれから年月を
いくつも通り過ぎ
大人になった僕は
今でもしばしば思い出す
言葉とまばたきの応酬で
あらゆる違いを越えて
想いを通わせた
ほんの数日の友情を

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