「できる」と言える人・言えない人

あなたは、自分に自信がありますか?
あなたは、自分が「できる」と胸を張って言えますか?

自信をもってやってみようとはよく聞くけど、
いざ自信を持っているかと聞かれると、素直にうんとはいえない人が多いのではないでしょうか?

一方で、「根拠のない自信」を武器にして
積極的に自分の力を発揮できる人もいます。
この違いは何なのでしょうか?「自信」についてまとめていきます。


「できる」の2つの意味

私たちは日本語の「できる」を2つの意味で用いています。
例文を挙げてみましょう。

①私はこの荷物を運ぶことができる。
②彼は運動ができる人だ。

この違いがわかるでしょうか?
①は「この荷物を運ぶ」という課題がこなせるかどうかということについて述べられています。
しかし②については、より高いレベルの運動課題がこなせる場合に用いられ、多くの人がこなせるレベルの課題程度では使われない表現です。

つまり、「できる」という言葉には

①求められた課題を達成できる
②(特定の範囲の対象者の中で)ある能力が優れていること

の2つの意味があるということになります。
①は、主に「~できた」と結果を述べる場合に用いられ、
②は、主に個人の能力を指す場合に多く用いられます。

しかし、この使い方が「正しい」かどうかは少々議論が必要です。


どうして使い分けるようになったのか?

子供の「できる」という感覚は発達において非常に重要です。
トイレで排泄が「できた」、ママのお手伝いが「できた」、足し算が「できた」…
この小さな課題達成の満足が、次の課題へのモチベーションになります。そして、自分の限界への挑戦をし、限界突破をする快感が心身の発達を促しています。そのため、この頃の子供は(多少能力が足りなくても)自信をもって「できる」といいます。

しかし、そのうち「ある事」に気づくのです。

小学校中学年くらいになると、他者に関心を向け始めます(これは発達段階的に自然なことです)。そして、これまでは「自分のできること」にしか向かなかった関心が、「他の人のできること」にまで向くようになります。
すると、自分はできないのに、他の子にできることがあると気づくのです。

こうして、初めて自分の能力を「相対的に」捉えるようになります。
自分より優れている相手を見つけると、その相手に敬意を抱くと同時に自らの劣等感を抱きます。
そして、今まで自信をもって「できる」と言っていたことが、言いづらくなってしまうのです。代わりに、(自分を「できない人」という意味を含めて)優れている人を「できる人」というようになります。

このように②の意味としての「できる」は、劣等感を受容するために自己防衛的に学習する意味づけとして発生します。


個人内評価か、相対評価か

上述のプロセスを整理すると、

求められた課題を達成できる(個人内評価)
(特定の範囲の対象者の中で)ある能力が優れていること(相対評価)

自分の能力を
①個人と対象課題との関係として捉えるか
②集団における他者の能力との比較として捉えるか
の違いだといえます。

そして、②が多い日本人は「自己肯定感」が低いことは既知のことです。

これは文化の違いがもたらすものです。
日本は「集団との共調」を重んじる文化であり、自己評価は無意識的に集団内の他者との相対評価で行っています。
学校教育でも、古くからある規律訓練としての機能が「みんな一緒に」の色合いを強めている結果、他者より劣っている部分は自分の弱点として捉える意識が根付いてしまっているのです。
つまり、集団内で上位の能力を持っていない限り、自信を持ってはいけないという暗示にかかってしまっています。


「自信がある」ことは「傲慢な態度」ではない

ただ、決して日本の文化を否定するつもりはありません。
日本の「謙虚」という文化は国際的にも高く評価されています。

しかし、自分を下げて相手を持ち上げるという「相対評価」的な視点で考えると、自分を「できる」と認める=周りの相手を自分より劣ると評価するという発想になってしまいます。

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ここで、後発的な「相対評価」ではなく、元来の「個人内評価」としての意味に立ち返ってみましょう。
自分がその課題をこなせる能力があるか、ということだけに視点をおけば、自分自身をpositiveに評価することができるはずです。
自分より能力が優れている相手への敬意は自然と持てるのですから、おのずと右上の「自信」ゾーンに入ることができます。

「できない」という人は、個人の能力に目を向ける。
「できる」という人は、求められる課題に目を向ける。

ちょっとした違いを意識するだけで、もっと前向きな発想になります。
「自己肯定感を高めたい」「自信をつけさせたい」と考えている人は、このことを意識してみてください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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