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【実践編】ゴール型ゲームのデザイン ~ハンドボール~

今回は「ハンドボール」を題材としたゴール型ゲームの実践例を紹介する。ハンドボールは、ヨーロッパを中心に盛んなスポーツで、日本国内では名こそ知られてはいるが、競技人口はまだ多いとは言えない競技である。しかし、スピード感あふれる展開やダイナミックなシュートなど、見た目にも”映え”があり、魅力たっぷりの競技である。

また、近年投げる能力の低下も叫ばれている中で、子供たちの運動環境を見ると、ボールを投げる運動はドッジボールか野球ボールが一般的である。しかし、ドッジボールでは大きすぎて片手でのオーバーヘッドスローができず、野球ボールでは小さすぎてキャッチが難しい。その素材も「硬い」ため、ボールに恐怖心を抱いている子も少なくない。

ハンドボール1号球は、手に収まりやすい大きさで捕りやすく、片手でも十分握れるため投げやすい。また、その素材も柔らかく、身体に当たってもさほど痛みを感じないため、小学生でも怖がらずに扱えるため、ボール運動に親しませやすいボールである。(2000円/個程度)

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1.ハンドボールの競技特性を考える

ハンドボールの基本ルールは以下の通りである。
・1チーム7人(うちゴールキーパー1人)
・コートは40m×20m
・ゴールから6m以内のエリアはキーパー以外は入れない(外から飛びこんで空中に侵入するのはよい)
・ボールを持ったまま3歩しか歩けない
・ドリブルはついてよい(ただし、ダブルドリブルは×)
・DFは正面からの接触は可
・選手交代は自由(特定のエリアから)

このようなルールの下で行われる競技であるため、以下のような競技特性を持つ。
・素早くパスをつないで攻撃する
・激しい身体接触
・ダイナミックなジャンプシュート
・シュート成功率が高い(ゲーム全体で悪くても70%以上)
・攻守の切り替え(トランジッション)が素早い

注意すべきなのは、体育では「ハンドボール」を体験させるのではなく、「ハンドボールが持つ楽しさ」を体験させるという点である。体育で扱う際、競技特性を色濃く再現しようとすると、同時に技能レベルも高くなり、子供には難しいゲームとなってしまう。一方で、技能レベルを下げて簡易化すればするほど、本来の競技特性や競技の楽しさが薄れてしまう。このバランスを取ることが、ゲームデザインの核心ともいえる。

今回の場合、ハンドボールの競技特性を「楽しくする特性」と「難しくする特性」に分けると、次のようになる。

「楽しくする特性」
・素早い攻守の切り替え(=速攻)
・シュート成功率の高さ
「難しくする特性」
・歩数制限
・ドリブルやパスキャッチなどのボール操作
・身体接触

よって、「難しくする特性」を排除し、「楽しくする特性」を残せば、簡易ゲームでもハンドボール競技の楽しさを再現できることになる。

2.簡易版ハンドボールのゲーム設定

競技特性の理解を踏まえ、以下のようなゲーム設定を提案する。

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