くちなし坂

まじないのように繰り返す
往路復路
刺股状の道 獣道
地上絵の一部を
なぞらされているような

炎天下の裏庭
植物たちが
息を呑むような絵を創り出す
ゆらゆらと揺らめきながら
薄汚い作業者が
立って昼飯を食らう処

サイレン塔 地蔵堂
身重の蝶が
赤ん坊の食草を探している

いつだって
はじめての日々

くちなし坂を登りながら
くちなし谷を見おろす

遠くなる
工場の匂い



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