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【地歴学習特別編】全国の史跡看板について

何といっても京都市の看板

統一されている京都市による看板

京都市内の史跡看板は『京都市』が管理しています。木材でできたシンプルな看板で、どこに行ってもこの看板を”頼り”に歩いて回ることができます。戦乱時代の合戦跡・史跡(応仁の乱以外)で立てられていない箇所はありますが、ほぼ全てが網羅されています。都市の規模に対する看板の大きさ、読みやすさや内容、日本語と外国語のバランスが良く、No.1と言えます。

東京の教育委員会看板

東京都教育委員会による看板

東京都内の史跡には東京都教育委員会が看板を立てています。堅牢な造りで黒地に白文字が特徴的です。長く持つと思いますが、冷たさと文字の細さが少し気になります。英語表記の部分は時代が進んで足されたのでしょうか。若干面積が大きく感じます。

都以外に市区町村の教育委員会で作成している看板もあります。最も史実に近い看板です。積極的な教育委員会の行政ではアップデートされますがそうでない場合は古い情報のまま放置されているところもあります。

観光都市の試み

伊豆市修善寺地区の看板

上は観光地にある看板です。白字ですが背景色が茶色なので柔らかな印象です。本文はゴシック体で明度差が少なくなっても読みやすくしてあります。特産のワサビの花が描かれていて、悲しい史実の多いエリアを、歪曲しない範囲で明るく彩っています。

管理の問題

自然保全地域の看板

自然の保全地域となっている場合は環境省の管轄となるため、このような看板となります。造りは重厚ですが、史実内容が簡潔になってしまっている印象があります。城跡などを自然公園として整備する場合は、都道府県の環境課等の管理となり、史実が詳しく書かれていない看板も多く見られます。国土交通省や水道課が企画を立ち上げ(〇〇百景・湧水巡りなど)別個に看板を立てる場合もあります。

表記者の異なる看板が林立している・政治家が個人的に建立した碑などがある例
(2018年撮影)
ひとつのエリアに土地管理者やプロジェクトの看板が混在している例
地歴を表記している教育委員会の看板が退色し全体像がつかめない
墓碑が黒く彫った文字が読めないが説明看板がない
(2021年撮影)

ひとつの史跡エリアに管轄の行政が複数ある場合、教育委員会の看板を特例で立てられるよう条例を整備したり、内容を合同協議するなど工夫がされると、歩いて学ぶ人が看板のテイストが突然変わって当惑するのを減らすことができます。行政をまたぐ史跡の場合、関係する行政が看板が親和するよう合同で協議する必要があります。

プロジェクトを組んで取り組む場合に気をつけたいのは、街おこしのためにと偏らず、史実をフラットに表記することです。

日本遺産の看板
ストーリー性を求められ予算がつき街おこしに使われるので
誇張や拙速な内容になりがち

看板に大切な数字

看板で史実を知る人にとって、わかりやすく簡潔でフラットな内容であるためには数字が手懸りになります。〇〇年という表記はもちろん、犠牲者のある史跡では〇〇人(合戦の場合は敵味方双方)と記してほしいと思います。勝者によって編纂される書物は、合戦・軍の規模は殆どの場合拡大して書かれているので、注記があるか本来の規模を類推する研究がされ表記されることが望まれます。

形状と素材

時々、上に向いた看板を見かけます。長年の雨や雪で腐食して読めなくなっているものもあり、素材に気をつけたいところです。

上向きの看板 素材によっては腐食する

山奥の寺院などで、記事を切り抜きビニールで覆って貼ったような看板に出会ったりもします。それでとても助かる場合があります。その場所を舞台にした人への畏敬と、訪問する人への配慮が、良い看板と感じさせるのかと思います。

看板事業は手間も費用もかかりますが、地歴事業の核心です。重要な地歴が重なっている地域だけれども予算がつけられなかったり、過去からの看板が何層にもなっているような自治体には、積極的に都道府県が支援することが必要だと思います。


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