メタ思考について

 最近になりメタ思考という言葉を聞くことがある。メタ認知能力という言葉については以前から使う機会があったが、メタ思考と聞いたときは、メタ認知との違いは何か?単に認知と思考の違いか、それとも他に何かあるかと疑問が生じた。そこで改めてメタ思考について考えてみることにした。
  認知心理学の中では、メタ認知という用語があり、それは認知の中の認知という意味である。例えば、ヒューマンエラーを考える時、エラーは人間の特性でもありゼロにすることはできないが、努力次第で減らすことは可能とされる。それはメタ認知能力を向上させることだが、わかりやすく言えば「自分をモニターして自分をコントロールする力」のことだ。
一つの例として、人間は焦りを感じているとき、脳は正常な判断を行うことができず、危険な行動に出てしまい、事故を起こしやすくなる。メタ認知能力が高ければ、焦燥感を感じたら一度立ち止まり深呼吸で呼吸を整え、そしてどうするか考えるだろう。
メタ認知能力が高い人は、焦燥反応は人の行動を狂わせること、そのときは、人の呼吸は浅く早くなるから、呼吸を深くゆったりとさせていけば、焦燥反応は抑えられ冷静な判断ができることを理解できており、自分を一つ上から眺めることができるから、焦っている自分に気づき行動を止めることができる。
メタ認知能力の低い人は、そのまま感情に支配されて、リスクを見逃し下手をすれば命を失うこともある。
メタ認知を図に書くと下記のようになる。

            ーーーーー メタレベル

人間の認知活動  制御 ↓            ↑   モニタリング

            ーーーーー 対象レベル

 では、メタ思考とは何か、様々な物事を上の視点から考えてみること。つまりは思考の中の思考と言って良いのかもしれない。メタ認知の場合は、一つ上のメタレベルから眺めることから始まるが、これはメタ思考についても同じで、一つ上から自分の考えを俯瞰して思考することだろう。
 メタ思考の良いところは、気づきを得ることと、思い込みからの脱却だ。人は事実をありのままに見ているようで、実は様々なバイアスに支配されている。
ちなみにバイアスとは「脳の錯覚」と考えれば良いであろう。
バイアスに支配されている例は事故や災害を見ればわかる、同じような事故が繰り返し起きているが、多くの人は自分が同じ事故を起こすとは思っていないし、事故の当事者もまさか自分が同じ事故を起こすとは思っていなかったであろう。事件や災害についても、怖いと思いながらも心もどこかで自分には関係ないと思っているかもしれない。楽観主義バイアスにより「自分は大丈夫だと」思い込んでいる。
その他、自分の信ずる記事や書籍のみを読んで、自分の考えが正しいこと正当化しようとする確証バイアスなども日常的にはまっていると思う。
例えば、高齢者が自動車を運転することをよく思わない人は、高齢者のアクセルの踏み間違い事故の記事を読んでは、実際には若年者でも同様な事故が起きているにもかかわらず、さらに自分の考えを強化するかもしれない。
 つまりこれらの認知的バイアスにより、人間は自分勝手な思い込みをしている。しかも、バイアスに支配されていることに気づいていない人も多いだろう。
しかし、このバイアスが全て悪いわけではない、例えば楽観主義バイアスがなければ、私たちは身の回りで起きている事件・事故を全て自分の身に降りかかると信じてしまい大きなストレスになってしまう。だから無意識的に脳が大丈夫と思わせていると聞いてことがある。
ちなみに、自分でもアーティストを目指し、写真作品を制作し写真展をやったり写真集を作ろうと活動するのも、楽観主義バイアスがあるからである。
もし、バイアスがなかったら「自分にはとてもとても・・・・」となって行動できないであろう。
しかし、バイアスに支配されてしまうと思わぬ落とし穴が待っている、それは自身の命を脅かすものさえある。だからこそ、自分自身を俯瞰しみてバイアスに支配されていないか、一度立ち止まり俯瞰して眺める必要がある。これもメタ思考の一つであろう。
メタ思考は一つ上からから眺める、つまり自分を俯瞰して考えることだということはわかった、では実際にどのように思考していけば良いのだろう。
それには二つの思考法が考えられる。
  1.  Why型思考  → なぜ?を繰り返す。→考えることを考える。
  2. アナロジー思考 → 類推 → 類似のものから推論する。
Why型思考については事故分析でも使用される、一つの事柄において、何故を繰り返し原因を追求したりできる。ここで気をつけたいことが、やりすぎないことで、繰り返すWhyは5回以内が望ましい。
そして、アナロジー思考は、「類似のものから推論する」ことであるが、単なるモノマネとは違う。他の遠いところから抽象化した共通点を探しだし、それを具体化させて新しい発想を得ていく、例えば写真であれば、他の写真からだけでなく、様々なアート作品や映画などから類似性を探し出し、それを具体化していくとこで新しい発想がでるかもしれない。
まずは、メタ思考を鍛えるために、自分自身の思考を眺め、自分自身の思考に問てみるのが良い。アイデアは意外なところに転がっているのかもしれない。

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