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【詩】しろ【なん歌】

■なん歌

 詩はふいに生まれます。日日暮らしていると気まぐれにやってきて、ひとしきりおしゃべりをしたら満足げに帰っていきます。それは積もりに積もったあれこれを、ざっくばらんに話せる気が置けない友人とよく似ています。そういう関係性が心地よくて、あえてほどよい距離を保っているところがあります。ただ、このごろよく顔を出してくれるので、この気儘な茶飲み友だちに名前をつけました。『なん』をよろしくお願いいたします。

■しろ

ぽってりほほ笑むミルクポット
苦いのって好きじゃないから
君は寂しい街をとろけさせた
陶のスプーンで贅沢にすくえば
世界はたちまち君のもの
ゆたかな臀部にしっとりまとわる
みだれた夜明けのシーツは冷たく
無垢なベルーガおぼろな夢をみる
ただよう寝息はメレンゲとなり
食卓いっぱい柔らかな花が咲いた
ミルクポットぽぽっと跳ねて
ユトリロの葉書へ出かけたら
君はふたたび布団へもぐり
すべらかな友だちとシーツを泳ぐ
僕はその曖昧な境界線に恋をして
ただ雪が降るのを待っている

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