南瓜 豆米大(ナンカ ズメタ)

小説や詩を書きます。ご覧いただけたら、ほくほくふっくら炊き上がります。Xには140字小説『一握の物語』を載せています(日月水金更新)。

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  • 【中編小説】金色の猫(全33話)【完結】

    二〇二一年の暮れ、ネットカフェ生活を送る元ホストの渋沢桂一は、炊出しで猫と老人に出会う。老人はかつて須東零四風という無名の小説家だった。侘しい日日がにわかに活気づくも、ある夜を境に老人は桂一の前へ現れなくなる。さらに猫までも雪に凍えて弱ってしまい、絶望に襲われる桂一を助けてくれたのは神田琴乃だった。成行きで彼女と暮らしはじめた桂一だが、このままでいいのか漠然とした不安が付き纏う。少しずつ変わろうとしていた矢先、老人と琴乃の思わぬ過去が明らかになる。炊出しボランティアの女子大生、風変りな古書店で働く人たち……様様な出会いや別れに揺れながら、たしかに生きていく男と、それをしずかに導いていく猫の物語。

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【中編小説】金色の猫 序・第1話(全33話)#創作大賞2024

読了目安時間:約7分(約3,300字) ■あらすじ 二〇二一年の暮れ、ネットカフェ生活を送る元ホストの渋沢桂一は、炊出しで猫と老人に出会う。老人はかつて須東零四風という無名の小説家だった。侘しい日日がにわかに活気づくも、ある夜を境に老人は桂一の前へ現れなくなる。さらに猫までも雪に凍えて弱ってしまい、絶望に襲われる桂一を助けてくれたのは神田琴乃だった。やがて彼女と暮らしはじめた桂一だが、このままでいいのか漠然とした不安が付き纏う。少しずつ変わろうとしていた矢先、老人と琴乃の

    • 朗読に関するガイドライン

       この度は作品の朗読をご検討いただき、ありがとうございます。ご使用の際に遵守していただきたい点は下記の通りです。ご確認よろしくお願いいたします。 ※本ガイドラインの内容を変更した場合、noteまたはX(旧Twitter)にてお知らせさせていただきます。 ■使用可能な作品 ・140字小説(一握の物語) ・400字以内の小説(一掬の物語)  これらの作品は非営利目的に限り、朗読していただけます。使用料はいただいておりません。 ■禁止事項 ・基本的に商用利用は禁止

      • 【400字小説】手品師の掌【一掬の物語】

        ■まえがき  X(旧Twitter)へ『一握の物語』という140字小説を載せています。いつも文字数を140字ぴったりにしているのですが、時折どうしてもはみでてしまう物語があります。そうなったらむりやり押し込めるのは違うので、400字ぴったりにします。これを『一掬の物語』とします。 ■手品師の掌 「今日のリアクション代行ビミョーじゃなかった?」  ビルの外階段に座る僕の前を、顧客の友人が通り過ぎた。僕はサプライズが苦手な人の代わりに、リアクションをする仕事をしている。近ご

        • 【詩】葉月の或る朝【なん歌】

          葉月の或る朝夜あかしふやけた耳の奥 蝉のひとこえめぐる うたえどうたえどかえす者なく それでもひたぶる夜明けふるわす 目はらすのか ひとり寝のこころぼそさに 午前五時 ぷつぷつ甘い雲ながるる朝に おまえとわたしだけがいる

        • 固定された記事

        【中編小説】金色の猫 序・第1話(全33話)#創作大賞2024

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        • 【中編小説】金色の猫(全33話)【完結】
          32本

        記事

          【あとがきという名の随筆】金色の猫|わが家には猫がいない

          読了目安時間:約6分(約3,000字)  「あとがき」はたいてい物語を読んでくださった読者にあてたものだが、ことnoteにおいては、ここではじめてお目にかかる方もいらっしゃるのではないか。  そう考え、できるだけ具体的な内容に触れるのは避けつつ、私が物語へ寄せるおもいを書かせていただいた。それが、この「まえがき」とも「あとがき」ともつかぬ、とりとめのない文章である。  『自己紹介が苦手という自己紹介と、代わりの詩』で「自身について話すのが大の苦手」としたわりに、よくもまあべ

          【あとがきという名の随筆】金色の猫|わが家には猫がいない

          中編小説『金色の猫』(全33話)完結いたしました🐱 一度でも頁を開いてくださった皆様へお礼申し上げます。さらに日日灯されるスキのぬくもりで、南瓜豆米大いい塩梅に炊けそうです。ありがとうございます🎃

          中編小説『金色の猫』(全33話)完結いたしました🐱 一度でも頁を開いてくださった皆様へお礼申し上げます。さらに日日灯されるスキのぬくもりで、南瓜豆米大いい塩梅に炊けそうです。ありがとうございます🎃

          【中編小説】金色の猫 第31話・終(全33話)#創作大賞2024

          ■物語を最初から読む 前話  マガジン | 完結 読了目安時間:約7分(約3,600字) ■第31話  琴乃は切れ長の目を見開いて俺を見たが、その隣へ|六花がいるのを認めると、すぐさまこちらに背を向け、足早に歩き出してしまった。「え、琴乃? 待って」「ちょっと待ってください!」俺が追いかけるより先に、小さな青い影が横から飛び出す。あまりの勢いに圧倒され、その場へ立ち尽くしてしまった。  まばゆい街灯りに染まる路を六花は真っ直ぐ駆け抜け、琴乃の腕をおもいきり掴んだ。疎ら

          【中編小説】金色の猫 第31話・終(全33話)#創作大賞2024

          【中編小説】金色の猫 第30話(全33話)#創作大賞2024

          ■物語を最初から読む 前話  マガジン | 次話 読了目安時間:約5分(約2,700字)  |六花は溶けたアイスを木製のスプーンでかき混ぜながら、虚ろな目で何か考えているようだった。やがて俯いたまま、「わたしのお祖父ちゃん、近所ではちょっとした名物おじさんだったんです」とおもむろに話しはじめた。 「靴下で作ったお人形をこう……両手へはめて」六花は両手を上げ、指先を口に見立ててぱくぱく動かす。「公園のベンチに座ってずっとお人形とお喋りしてた。たまにわたしを探して学校の校庭

          【中編小説】金色の猫 第30話(全33話)#創作大賞2024

          【中編小説】金色の猫 第29話(全33話)#創作大賞2024

          ■物語を最初から読む 前話  マガジン | 次話 読了目安時間:約5分(約2,300字) 「|六花さん!」  駅の構内で会ったあの日より髪が伸びていたものの、黒縁眼鏡の奥にある三日月型の目ですぐに彼女とわかった。鮮やかな青いコートを片手に持ち、白いニットワンピースを緩やかに纏っている。ざらついた掌へひとひらの雪が舞い落ち、泡立っていた血がしんと静まっていった。 「桂一さん、見違えたのね。気がつかずに通りすぎてしまうところでした」 「ああ……いやあ、まあ、汚かったっすよね

          【中編小説】金色の猫 第29話(全33話)#創作大賞2024

          【中編小説】金色の猫 第28話(全33話)#創作大賞2024

          ■物語を最初から読む 前話  マガジン | 次話 読了目安時間:約3分(約1,700字) 「2022年2月22日は〈スーパー猫の日〉」  家電量販店の前に並ぶ大小様様な液晶へ上目遣いで寝転がる縞の猫が映し出される。行き交う人波の中ふと歩みを止め、俺はじっと画面に見入った。時折、冴えた光を放つ琥珀色の瞳に、しばし金之助をおもう。 「鼈甲飴みたい」横たわる俺の胸で寛ぐ金之助を眺め、琴乃は言った。「べっこうあめ?」聞き返したら、ジェネレーションギャップだと落ち込んでいた。  

          【中編小説】金色の猫 第28話(全33話)#創作大賞2024

          【中編小説】金色の猫 第27話(全33話)#創作大賞2024

          ■物語を最初から読む 前話  マガジン | 次話 読了目安時間:約4分(約2,000字) 「え! なにそれずる! めっちゃたのしそうじゃん!」  レジカウンターでタブレット型端末を操作しながら阿村が喚声を上げる。頭上でヨウムのギーコが灰青の羽をばたつかせ、メッセージアプリの通知音そっくりの声で鳴いた。はじめの十日間は気になって仕方なかったが、気儘でお喋りなこの巨大な鳥にもずいぶん慣れた。  俺は店の奥にある長机の前へ立ち、昨夜注文の入った分厚い妖怪の本の発送準備をしてい

          【中編小説】金色の猫 第27話(全33話)#創作大賞2024

          【中編小説】金色の猫 第26話(全33話)#創作大賞2024

          ■物語を最初から読む 前話  マガジン | 次話 読了目安時間:約4分(約2,200字)  滑らかな|木灰の真ん中へ灯る朱い火に、昨夜の焚き火を思い出す。あの高揚はひとひらの写真によってたちまち静まり、迷霧のうちで黒い火種が燻っていた。  炉端へ置かれた茶碗を手に取り、熱い緑茶を啜る。掌へ感じるざらついたぬくもりと、口内を満たす健やかな土と豊かな茶葉の香りにふと安らぐ。茶碗に細かく入った罅を観察していたら、「それ、いいでしょう」奥から作務衣を纏った羽衣石が出てきた。

          【中編小説】金色の猫 第26話(全33話)#創作大賞2024

          【中編小説】金色の猫 第25話(全33話)#創作大賞2024

          ■物語を最初から読む 前話  マガジン | 次話 読了目安時間:約3分(約1,500字)  隣で眠る琴乃を起こさぬようベッドから滑り降り、そっと間仕切りを潜る。カーテンの隙間から差し込む|曙光が天井を揺蕩い、高窓から鉢植えの明けの明星が俺を見下ろしていた。深く息を吸えば透きとおった匂いが鼻腔を満たし、国道を車が滑る心地好い雑音が遠くへ聞こえる。それはうんざりするほど美しい朝だった。  しろがねに染まる洗面所で顔を洗えば、きりりと冷たい水が頬を指す。昏い鏡の中、腫れ上がっ

          【中編小説】金色の猫 第25話(全33話)#創作大賞2024

          【中編小説】金色の猫 第24話(全33話)#創作大賞2024

          ■物語を最初から読む 前話  マガジン | 次話 読了目安時間:約7分(約3,500字)  背中に琴乃の声がして、慌ててクッションの下へ本と写真を隠した。しかし既に彼女はソファの横まで来ていて、はみ出していた写真の端を引っ張る。刺激のある爽やかな香りがして、火照った頬へ琴乃の冷たい濡れ髪が当たった。 「これ……そう、見たの」琴乃の口調は思いのほか落ち着いていた。「やっぱり、おと……藪さんと知り合いだったんだね……」 「やぶ……?」  知らない名に眉を顰めたら、琴乃の爪先

          【中編小説】金色の猫 第24話(全33話)#創作大賞2024

          【中編小説】金色の猫 第23話(全33話)#創作大賞2024

          ■物語を最初から読む 前話  マガジン | 次話 読了目安時間:約3分(約1,500字)  琴乃からもらった合鍵には円いサングラスをかけた豚のキーチャームがついている。玄関扉を開ければ、浴室から勢いよく流れる水音が聞こえた。「ただいま……」脱いだコートをハンガーへ掛けながら小さくつぶやくと、向こうから床板を蹴る爪のチャッチャッが近づいて来る。「金之助ただいま」  足首へ纏わりつく猫へ気を配っていたら、ふいに廊下にある和製の違い棚が目に入った。俺の腰下ほどの高さしかないた

          【中編小説】金色の猫 第23話(全33話)#創作大賞2024

          【中編小説】金色の猫 第22話(全33話)#創作大賞2024

          ■物語を最初から読む 前話  マガジン | 次話 読了目安時間:約7分(約3,600字)  洗い立ての藍に一粒の金が揺らめき、とりとめのない平野には瑞瑞しい朱が滲む。俺たちは夜露に湿った枯草を踏み締め、店へ続く閑かな道を歩いていた。俺がありあまるほどの酒と食材が入ったビニル袋を両手へ下げているのに対し、|阿村はつまみや菓子、そして新聞紙に包まれたさつま芋(近所の農園でもらった)を抱えている。二月半ばの黄昏はまだ寒く、かじかむ掌へ持ち手が食い込むのを感じながら、軽やかに進

          【中編小説】金色の猫 第22話(全33話)#創作大賞2024