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#9 ドライブ旅の果てに

800キロの車旅が終わり、ロヴァニエミのホテルに着いた。

時刻は夜の8時くらいだっただろうか。

チェックインを済ませ併設されていたレストランで夕食を取ったのだが、疲れすぎてこの辺の記憶は曖昧。

地元で有名な鮭のムニエルのようなものを食べた気がするけど味は全く覚えていない。

食事の後、部屋に戻って少し仮眠をとり、再び車を走らせる。

北欧の9月。ちょうど秋口からシーズンに入ると聞いていた。

だから北を目指した。

オーロラハンティングが始まる。


星と一緒で周りに街灯などの明かりがあると小さなそれを見逃してしまうので、街の中心から10分くらい離れたところまで車を走らせる。

車を降りてスマホのライトで足元を照らしながら、良さそうなポイントを適当に捜索する。

途中、トンネルがあり、そこを抜けると、河川敷のような場所に運よく出た。

よく見れば、ぼくたちと同じように空を見上げる人が何人かいた。

後から分かったのだが、ここはオーロラハンティングには打って付けの地元では有名な場所だったようだ。

周りに高い建物はなく空が広い。

夜のしんしんとした空気は万国共通らしい。

この辺りでオーロラが出るのを待つことにしたのだが、深夜の北欧はとにかく寒かった。

持久戦を覚悟していたので、防寒対策はしっかりしていたのだが、それでも身体は芯まで冷えた。

そんなこんなで目を凝らしながら空をじっと見るだけの時間が続く。

まだ星だけしか見えない。

だけどその時間はすごく贅沢だった。


どれくらい時間が経った頃だろうか。

ふと目の前の景色が移ろいでいくことを感じた。

何かがゆらゆらと形を変えていて、心なしか周りも明るくなってきたような気がする。

ついに。

心拍数が上がり、さらによく暗闇に目を凝らす。

オーロラではなかった。

雲だった。

単純に暗いところに長時間いたので目が慣れて白い雲をオーロラと思ったのだ。

そりや、雲は風に乗って流れる。それを見事に勘違いしたというオチ。

疲れと寒さで意識が朦朧としていたことでの見間違いに、めちゃくちゃ笑ったのだが、今回は縁がなかったと思い大人しくここで諦めることに。

そうは言っても車に戻ってフロントガラスの曇りが晴れるまでの時間、切なかったなぁ(笑)


ホテルに戻り、暖かいシャワーを浴びると、物凄い睡魔が襲ってきた。

ヘルシンキのアパートを出て20時間後のAM2時。

ずっと夢の中にいたような長い1日が終わる。

鉛が沈み込むようにベットに身体が吸い込まれていく。

ひと時の夢も見ず、眠りについた。


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