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マイナマインドのファースト・アルバム「GAMBIT」について

僕がプロデュースしたマイナマインドのファースト・ソロ・アルバム「GAMBIT」が通販でも販売が開始されました。
このアルバムの制作過程&意図などを解説したいと思います。

マイナマンド(以下マイナちゃん)とは2021年の10月にファースト・シングル「鬼でもない」をプロデュースしました。

そして今までに8曲のシングルをリリースしてきました。今回のアルバムはそれに2曲とインターバル・トラックを追加してフル・アルバムとしました。とりあえずアルバムの配信は未定なので今はフィジカルを買わないと全曲は聞けない状態です。

SSWの臼井ミトンさんが作品はフィジカルの販売でリクープするまで配信ではリリースしないという話を聞いて、それは熱心なコア・ファンがいるアーティストならありかもと思いました。

レコーディングの進め方はお題をハウスとかファンクとか僕から投げる事にありますが、彼女の作って来たデモを聞いて、これは良い作品になると判断した物をアレンジャーの大林亮三君に投げ、ラフのトラックを作ってもらいます。その経過でライン・グループに途中経過の音源や歌詞、お互いのアイディアやリファレンスを投稿して少しづつ具体的にしていきます。

これは僕がフィロソフィーのダンスをプロデュースしている時にヤマモトショウ君と宮野弦士君とやっていた進め方と同じですね。

ボーカル・レコーディングは事前に彼女の歌詞の確認はするのですが、実際に歌ってみると、もっと良くなるかもと思い始め、その場で歌詞の直しが始まります。
結果半分くらい書き直したのもありました。
彼女は歌うまいので、歌入れよりも歌詞のその場での直しの方が時間がかかったかもしれません。
でも、これが結構楽しいんですよね。煮詰まってアシスタントの「なんか言葉ない」とか聞いて、それが採用されたりもしました(印税は無しですいません)作詞家の作品だと、歌入れのその場での変更はなかなか難しいです。
なので「ここ直したかったなぁ」と思ったりする事もあるんですが、今回はそういう悔いはなかったです。
ちなみに秋元康さんも歌詞を直したくなりビデオ撮影直前に歌詞を変えたなんて事もあったそうです。多分、売れる前に諦めて後悔した経験があるのではないかと推察してます。

それと僕やマイナちゃんは歌詞を読んでしまっているので何を言っているか分かってしまうので、歌詞を見てない人に聞いてもらって聞き取れるかどうかの確認も何曲かしました。

フィッシマンズのカバーについては過去に書いたのこの記事をご覧ください。

ほぼ1ヶ月の1曲のペースでレコーディングしていきました。歌入れは三茶のクロスロードスタジオで行いミックスとマスタリングはスタジオのオーナー・エンジニアでもある井上勇治さんに基本的にお願いしました。カバーはマイナちゃんがほぼ自分でアイディアを出し、イラスト、デザインも彼女がスマホ(!)で作ってくれたものですね。

夏ころから本人から共作がしたいという提案がありました。作曲家なら良くあるのですが、自分だけで作っているとコード進行、メロディーなどが自分の手グセにどうしてもなってしまうという事があるんです。
それを避けるためにヒャダインさんも自転車の乗って鼻歌で作るというような事をおっしゃっていた記憶があります。
マイナちゃんも何か新鮮なひらめきが欲しいと思ったのだと思います。
それで亮三君にいくつかトラックを作ってもらいました。
それにメロディーを乗せてもらったのですが、それとは別にマイナちゃんが全く知らないある僕が持っていた90年代のある大ヒット曲の純カラ(コーラスなどボーカルが全くないバージョン)を送り、それにメロディーライン(今はトップ・ラインとも言います)を考えてもらいました。
これが結構良い曲になったんです。今回のアルバムには入らなかったんですが、いつか発表する時には元ネタを探してみて下さい。

作曲が共作になっている曲は亮三君などが作ったトラックにマイナちゃんがトップラインを考えています。「マインド・ストーン」はサビのメロディーはDJのMANA-Bさんが作っています。なので世界観が少し変わって面白い感じになりました。

話は変わりますが決められたトラックにどれだけ良いメロディーを考えらるかというのは音楽的才能なのではないかと思っています。

昨年、リリースされたマイケル・ジャクソンの「スリラー」の40周年バージョンにYMOの「ビハインド・ザ・マスク」のカバーのデモが入っているのですが、これはYMOのオリジナル・バージョンをそのまま流してマイケルがトップラインは歌っているという物なんです。

これがマイケルのアイディアなのかプロデューサのクインシー・ジョーンズのアイディアかは判然としませんが良く思いついたと思います。
後にカバー・バージョンはリリースされエリック・クラプトンのカバーのカバーもリリースされて判明するのですが当時は「この曲ほぼインストなんですけど、マイケルがカバーってどういう事?」思ってました。

歌手のAIもトラックがあればメロディーはいくつでも思いつくけれど、どのメロディーを採用するかは歌詞はどうするかで選ぶという事は発言していました。

元ナンバーガールの田渕ひさ子ちゃんが椎名林檎とセッションした時、セッションで作ったオケでその場でメロディーを林檎ちゃんがいくつも作るけれど、どれもめっちゃいいので驚いたという事を話してくれた事があります。

山下達郎の「スパークル」もオケを作っている段階でメロディーが考えられていないと当時、聞いて驚いたと竹内まりあさんがラジオで発言していました。

楽器のソロというのは決められたトラックでどれだけ印象的なフレーズを作曲出来るかという事ですよね。
さらにライブでは、アドリブが入ります。メロディーの即興ですね。ボーカルのライブでのフェイクも同様に作曲です。

同様にマイナちゃんも同じトラックで複数のトップラインを考えて来てくれます。選択の基準としてはただ良い曲という視点ではなく、いかにマイナちゃんの個性やオリジナリティーが発揮されているかで選びました。

マイナちゃんの面白い所は3歳から踊っているので90年代からの良質なヒット曲を曲名もアーティスト名も知らずに聞いているので体に入っているんです。それが彼女の作曲の才能につながっていると思います。

アルバム制作も大詰めに入った頃、亮三君以外のアレンジャーとも作業してみたいという事で彼女がライブ・セッション・バーで出会ったという吉田雄也(ヨシダ・ヨシュア!)君というグッドヴァイブスな若者。
それと実弟でもあるtomokunにトラックをお願いしました。
「I Can't Stop Loving You」は90年代のジャネット・ジャクソンがお題です。
tomokunにお題はなかったのですが良い感じのレア・グルーブを彼が見つけて来てエディットしてトラックを作ってくれました。

ちなみにレア・グルーブって「生々しいグルーブ(ノリ)」って最近まで思ってたんですがレアは「生」じゃなくて「珍しい」のほうでグルーブはノリではなく「溝」つまり「珍しい溝」つまり「珍しいアナログ・レコード」というのが本来の意味なんだそうです、ダブル・ミーニングかもしれませんが昨日知りました。

話を戻します。インタールードを入れたいというは彼女のアイディアですね。浅川マキ・テイストだなと個人的には思いました。さらにアルバムにはある仕掛けを入れてみました。これもCDをでしか出来ない遊びなのでぜひ最後まで聞いて下さい。

マスタリングは予算が潤沢にあれば配信でもスタジオを抑えてマスタリング・エンジニアに頼むのですが、スマホで聞かれるだけだと思うと、あまりモチュベーションが上がらずレコーディング・エンジニアにデータのやり取りだけで済ませていたのですが、CDだとハイエンドのオーディオで聞かれる可能性もあるので久し振りにスタジオでマスタリング・エンジニアとマイナちゃんにも来てもらい1日かけて立会いでやりました。

色んなマスタリング・エンジニアと仕事して来たのですが作業の説明として「ローが足りないので足しました」「音圧を上げました」とか技術的な説明が多いのですが、パラサイト・マスタリングの諸石さんは「70年代のEW&Fぽく」とか抽象的ですが音楽的な説明が多いので面白いんです。そして音ももちろん良いです。CD用と別にyoutube用の音源も用意してくれるにも嬉しいです。CDプレイヤーでちゃんと聞いていただければ音の良さを感じてもらえると思います。

アルバム・タイトルの「GAMBIT」というのは僕のアイディアです。これはチェスで自分の駒を犠牲にしてより強い駒を取るという事です。これは彼女が今までのアイドルというスタンスを捨ててアーティストという道を歩むという意思を表すのに良い言葉だと思いました。

ジャケットはマイナちゃんのアイディアです。モノクロというのは地味かなと思ったのですが10年経っても古くならないなと思っています。
中古店の邦楽コーナーを見るとジャケがどれもダサすぎてびっくりする事があるんです。
デザインの良し悪しの判断は音楽もそうなんですが経年変化に耐えられるかどうが大切かと思っています。

クレジットもこだわりました。僕のクレジット好きは過去の記事をご覧ください。

本当にディレクター人生で何枚もアルバムを作って来ましたが、かなりの満足度の作品になりました。全てのミュージック・ラヴァーにお勧め出来る作品になりました。枚数限定なので転売ヤーの餌食にならないうちのお買い上げをお勧めします!
通販はこちらです!皆様のお買いげお待ちしてます!




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