シューニャ

モノクロな日常、カラフルな思索

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マガジン

  • 曇空日記

    • 8本

    白でも黒でもない。 グレーな曇空を眺める2人の交換日記。

最近の記事

監獄の中の<自由>

一昨年の四月ぐらいに、ぼくは処方薬のオーバードーズがやめられなくて精神科に入院した。最初はコロナの感染対策という名目で閉鎖病棟に隔離された。最初の一日はスマートフォンを取り上げられるだけでなく、本までも取り上げられてしまったので本当にやることがなかった。ただ時計を見つめて時が過ぎ去るのを待つのみだった。唯一の楽しみは朝昼晩の食事でその時の飯は本当に美味く感じた。ぼくが初日に言われたのは、制限が厳しいのは今だけで、先生が安全だと判断すればもっと自由になりますからねというセリフだ

    • 色のない世界

      灰色だ。世界が灰色に見える。モリッシーはそういう風に言っていた。「毎日が日曜日みたいで、毎日が沈黙していて灰色なんだ」と。灰色、たしかにそういう風にも思える。でもぼくには色そのものがなくなっていっている感じがする。全部工場の単純作業みたいになっていく、最近ではずっと好きだった読書ですら色がなくなって、そういう作業になった。こうやってぼくの世界から色が消えていく。最後には何も見えなくなってしまうのだろうか。 世の中は大晦日だってことで、友達と飲みに行ったり、寺に行ったり、テレ

      • 苦痛と退屈の振り子にて:保護室の手記

        ぼくは病気だ。精神の障害者だ。最近は障害の害を「がい」だの「碍」だのにすることが流行ってるらしいけど、ぼくにとってこんなもの―つまり、精神障害だ―は「害」以外の何物でもない。たしかに、障害を上手くバネにして―つまり、彼らにとってはぼくの「障害」は「障碍」か「障がい」程度のモノなんだろうよ。もちろん奴らだって苦労はしたんだろう。それは大いに認めるが、ぼくにとって害でしかないそれがバネになった奴らと同じ列に並べられたくないんだ―成功した奴はいるんだろうさ。あぁ、メディアで取り上げ

        • C・S・パース(1894)『記号とは何か?』邦訳

          Japanese Transration of Charles S. Peirce (1894) "What is Sigh?" Chapter 2 of How to Reason: A Critick of Arguments 記号とは何か?§1.すべての推論はある種の記号の解釈であるため、これは最も不可欠な問いである。しかし、それはまた非常に難しい問いであり、深い考察を必要とする。 まず第一に、3つのそれぞれ異なる心の状態を見分けることが必要である。まず、ある夢想

        監獄の中の<自由>

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          C・S・パース(1893)『カテゴリーについて』邦訳

          Japanese Transration of Charles S. Peirce (1893) "The Categories" Chapter 1 of The Art of Reasoning カテゴリーについて§1.概念の統一機能 思考の法則の一つは観念の連合の法則である。観念の連合は、それぞれが互いに混じり合い、広がっていくことに存する。これは統一の過程である。近代哲学の父であるカントは、観念の機能は、感覚的印象の多様性を統一性に還元することであると言った。

          C・S・パース(1893)『カテゴリーについて』邦訳