見出し画像

新しい居場所

本記事は2020年5月31日に投稿した記事です。
その後思うところあり削除してしまっていました。
後悔してどこかにないかと思ってたらダッシュボードに削除済みの投稿が残っていたため、思い切って再公開に踏み切りました。
続きを追加しようかちょっと悩んでいます(^^;

前回と内容は変わっていません。
それでは、ごゆっくりお楽しみください。


***


昔々、あるところに小さな犬がいました。

犬はもともと野良犬でしたが、捕獲され、施設に入れられていました。


施設では酷い目に合っていました。

苛められたり、馬鹿にされたり、すっかり疲れ果てていました。


そんな犬も運良く飼い主が見つかり、無事貰われていきました。

飼い主はどうやらお金持ちのようです。

「これで自由の身だ!」

犬はたいそう喜びました。


犬は飼い主に飼われることになりました。

鎖に繋がれてはいましたが、おやつも貰えました。

このおやつ、食べると幸せになる不思議なおやつでした。


そのお屋敷には、他にも犬たちがいました。

ですがこの犬たち、いつも小さな犬を苛めるのです。

そんなとき、小さな犬はおやつを食べることにしています。

束の間の幸せを噛み締めるように。


あるとき、小さな犬はいつもより早くお腹いっぱいになり、おやつを食べ残しました。

飼い主はビックリして言いました。

「どこか身体が悪いの?

ちゃんとおやつを食べないと」


小さな犬はおやつをしぶしぶ食べました。

やっぱり、食べている間は幸せでいられました。


あるとき、苛めている犬たちの一匹がこう言いました。

「辛いのは、そのおやつを食べているからなんだぜ」


小さな犬は腹が立って言い返しました。

「そんなことあるわけない!

ご主人様に限って!」


ですが小さな犬はある日、おやつがいつもと違うことに気がつきました。

小さな犬はあの一匹が言ったことを思い出し、ためしにおやつを食べないで様子を見ることにしました。

飼い主にばれないように、まずは少しずつからです。


おやつを減らすと、小さな犬の身体はみるみるうちに成長していきました。

犬はほんとうは小型犬ではなく、大型犬だったのです。

その大きさはゆうに屋敷にいた犬たちをはるかに越えました。


犬は怒りました。

飼い主の手を噛み、力を振り絞り繋がれた鎖を千切って屋敷から逃げ出しました。

その様子を、あの一匹は優しそうな笑顔で見ていました。



***


長く、冷たい雨が降りました。

犬には仲間がいず、一人で生きていくしかありませんでした。

傷は日に日に増えていきました。

雨がしみるのを、懸命に堪えました。

「ぼくは、自由なんだ」


その雨もついに止み、雲の間からは虹が現れました。


水溜まりに映った自分の姿を見て、犬はとっても驚きました。

なんということでしょう!

自分は犬ですらなく、猫だったのです。


猫は猫のように振る舞い始めました。自分らしく、ありのままに。

すると、周りにいた猫が寄ってくるではありませんか。


その猫が言いました。

「友達になりませんか?」


「ありがとう。嬉しいな」

猫は友達になることにしました。


友達はその人懐っこそうな笑顔で言いました。

「ぼくのうちに来ない?

素敵な猫好きの飼い主がいるんだ!」


「行ってみたい!」



***


新しい飼い主はお金こそなさそうでしたが、とても人の良さそうな顔をしていました。

飼い主は、猫が来たことをとてもとても喜んでいました。

「あらかわいい!

おや、その傷は…とても辛い目にあったんだね…。

でも大丈夫。ここには君を苛める人はいないよ」



猫を犬のように扱うか、猫として扱うかは飼い主次第なのです。



その後、猫は新しい飼い主や友達と一緒に、末長く幸せに過ごしました。

おしまい。


この物語はフィクションです。
実際の人物・団体とは一切関係がありません。

いつもありがとうございます(^^) よろしければマガジンもご覧ください(^^)v