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注目のCASE・MaaSプレイヤーたちSidewalk Labs(サイドウォーク・ラボ)/「Sidewalk Toronto」 プロジェクト

2020年5月7日、サイドウォーク・ラボがカナダのトロントで進めてきた次世代スマートシティ事業から撤退することを発表しました。
同社は2017年10月にカナダの政府系組織であるWaterfront Toronto公社(ウォータフロント・トロント)とパートナーを組み、トロントで最も栄えるエリアの一つであるウォーターフロントエリアをスマートシティに再開発する「Sidewalk Toronto」 プロジェクトを発表しました。
トロントは2017年時点で世界で最も不動産バブルリスクが大きい都市(出所:UBS銀行「UBSグローバル不動産バブル指数」)であると言われており、こうした問題などを解消するために以下の5つを目的とした再開発を行うパートナーが公募されました。

(1)雇用創出・経済活性化、(2)環境にやさしい開発、(3)手頃な価格の住宅の供給、(4)新しいモビリティによる混雑・大気汚染の緩和、(5)プライバシー保護とデジタルガバナンスの確立

そこで見事このプロジェクトのパートナーとして選ばれたサイドウォーク・ラボですが、プライバシー保護の問題で度々プロジェクトの進行が何度も遅延することになります。
プロジェクト開始当初からサイドウォーク・ラボがどのようにデータを収集・保護し、誰がそのデータを活用するのかの懸念が浮上し、批判に晒されることとなります。その後巻き返しを図るべくサイドウォーク・ラボは2019年夏に1524ページにものぼるマスタープランを発表し、完成までに最大13億ドル(約1400億円)を投じると謳いました。
しかし2020年5月、新型コロナウィルスによる世界経済の悪化と先行きの不透明性、そしてそれによるトロントの不動産マーケットへの悪影響により、資金的な面でプロジェクトの根幹部分を存続させることが難しくなったとし、サイドウォーク・ラボがこのプロジェクトからの撤退を発表します。

最終的には資金面での撤退となりましたが、そこに至るまでのプロジェクト遅延等を引き起こした根本的な原因は「プライバシーの保護」にあり、データの収集・保有・活用方法に問題があったと言えます。
今週のニュースでも書きましたが、NTTがラスベガスのスマートシティ事業で一定の成功を収めている理由の一つは紛れもなくこの「プリバシー保護」です。サイドウォーク・ラボは収集したデータの所有を譲らないのに対し、NTTは収集したデータは地方自治体に帰属させるというデータの所有権にこだわらない姿勢が評価され、プロジェクトを順調に拡大することに成功しています。これは当局から信頼を得ていることの証であり、その根底には住民の信頼を得ることができるからだと言い換えることもできそうです。
そして繰り返しになりますが、こうしたユーザーファーストのプライバシー保護の考え方はスマートシティだけでなくMaaSなど、データを利活用するような言わばAIに関連する分野においても同じことが言えるでしょう。

会社名:Sidewalk Labs(Googleなどのグループ持株会社であるアルファベット傘下)
代表者名:ダン・ドクトロフ (CEO、元ニューヨーク副市長)
本社:米国・ニューヨーク州
設立:2015年
グループ企業:グーグル、Waymo(ウェイモ)、X、他

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