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わいわいマスツーリング~浜の宮→ツインリンクもてぎ→カフェシャリン・2021.3.27

バイクではよく、単独と複数台の走行を区別するのに「ソロ」「マス」という単語が使われる。
私が何度か記事にした、おバイク一人旅が、典型的なソロツーリング。そして、マスツーリングは、2台以上で一緒に走ることを指す。
どちらもやることは同じだけれど、この両者、楽しさの質がまったく正反対ときている。
ソロの魅力はなんと言っても、自分が何にも属していないと錯覚するほどの、圧倒的な自由と開放感。一方、マスの魅力は、同じ趣味の仲間達と、美しい景色や美味しい食べ物、季節感をリアルタイムで分け合えることだ。
ムーミン谷で仲間達と過ごしたかと思うと、独りでふらりさすらいの旅に出る、スナフキンの気持ちが何となくわかる。正反対のふたつの魅力が、どちらも素敵で、両方とも必要なのだろう。
私にとっての、ソロツーリングとマスツーリングも同じだ。どちらか片方だけなんて、どうやっても選べない。

よく晴れたバイク日和の土曜日、友人と茨城県日立市~栃木県茂木町へと、2台でマスツーリングに行ってきた。
友人の愛機は、イタリアのメーカー・ドゥカティの貴重な旧車。手入れが行き届き、小気味よい音で呼吸する、とても魅力的なバイクだ。
対向車線のライダーたちが、すれ違いざまにドゥカティを眺めていく。友人の後ろを走りながら見える、そんな光景が、何だかとても誇らしく思えた。

まずは茨城県日立市の、R6バイパスへ。
ここは、太平洋の上に道路の一部がかかる、走るだけでも海の絶景を楽しめる名所だ。
駐車場になっている、浜の宮ロードパークから眺めた春の海は、いつにも増して陽光を映し、銀を溶かしたように輝いていた。

例年より早く花を咲かせた、日立駅前の桜並木を通り抜け、パワースポットとして有名な、御岩神社のそばを通過した。
この御岩神社には、宇宙飛行士が宙から地球を眺めた時、光の柱が見えたという逸話があるらしい。
今回は神社には寄らず、グリーンふるさとラインと呼ばれる、カーブが続くも車通りの少ない快走路に直行した。
マスツーリングの難しいところは、それぞれに速度域感覚の違うライダーが、同じペースで走るということだ。でも、私のような低速ライダーには、速度を上げるための、絶好の練習機会になる。
今回、自分の感覚より速いペースでカーブを抜けたが、少しも怖くはなく、とても楽しんで走ることができた。
友人も、私が遅いことと、無理に着いていかないことを知っているので、様子を見ながら合わせて走ってくれた。
大感謝!

今回の目的地は、私のリクエストで、栃木県茂木町の、ツインリンクもてぎと決まっていた。
ここにある「ホンダコレクションホール」を見たいと、ずっと思っていたからだ。
到着すると、サーキットでテスト走行をしているとの情報を得たので、早速見に行ってみた。

一瞬で過ぎ去るマシンの音、地面と並行近くまで車体を倒してカーブを曲がるライダーの姿。こういう場所は、いるだけで天井知らずにテンションが上がる。
目の前を通り過ぎるマシンを、飽かずに眺めていると、あまりの速度と鋭いバンク角(バイクが曲がる時に傾く角度)に、目眩を起こしそうになった。

余談だが、もてぎのサーキットは、トイレの表示まで、可愛らしいレーサー仕様だ。
長居をすると、時間が押してしまいそうだったので、聞こえてくる音を楽しみながら、1番の目的地へと移動した。

ホンダコレクションホールは、HONDA製品の歴史についての博物館。バイクや車だけでなく、発電機や耕運機も展示されている。
光がたくさん入る、明るいエントランスを見ただけで、ふわふわ浮かんでしまいそうな気持ちになった。

最初のバイク?  試作品の自転車用エンジン。
ガソリンタンクが湯たんぽというのが可愛らしく、いろいろ工夫していたんだなぁと実感できた。

試作品は1947年、このホンダドリームができたのは、翌1948年と表示されていた。
たった1年で、湯たんぽタンクから製品までこぎ着けたなんて、奇跡のような、魔法のような事実だと驚いた。

最初の耕運機も展示されている。
日本が誇るホンダの名二輪車、スーパーカブの面影があると感じたのは、私だけだろうか?

昔のF1マシンは、掃除機のような形をしていたと、初めて知った。
現在のものは、タイヤが起こす、わずかな風の影響まで含めて、空気抵抗を徹底的に考えているのだと、友人が教えてくれた。
なんて合理的、科学的なのだろうと感心してしまう。

ホンダは、小さなバイクにも名車がある。
50ccの可愛らしいモンキーも、そのひとつ。
もともとは、遊園地の遊具だったと知って、本当にびっくりした。
前から2番目にあるのが、遊具のモンキー。当時の子供たちが乗っていたと思うと、とても不思議な気分になった。

私のもう1台の愛機、スーパーカブのご先祖さまも、ナナハンの元祖の隣にいた。
ところで、スーパーカブは「立体商標」というものに登録されている。
これは、姿を見ただけで「コレはアレだ」と、誰もがわかるということを、正式に認められた証なのだという。工業製品が登録されるのは珍しく、乗り物では、日本で初めての快挙だったらしい。
確かに、私もバイクに乗る前から、スーパーカブは知っていた。日常生活に当たり前に溶け込んだバイク、という点では、唯一無二の存在かもしれない。

有名ライダーが実際に乗っていた、レース用のマシンも多数、展示されていた。
フロントカウル(バイクの正面のカバー)に、ヒビが入っているものがあり、それは衝突などではなく、風圧によるものだと、友人が教えてくれた。
レースの頂点の世界が、どれほど苛酷かを垣間見たような気がして、競技をしない私も、少し怖くなってしまった。

車にもバイクにも乗るくせに、実はそれらの世界について、私はよくわかっていない。
しかし、友人の知識をわけてもらえたおかげで、驚いたり感心したり、とても楽しい時間を過ごすことができた。

最後は茨城県に戻り、東海村のライダーズカフェ「シャリン」で、遅いお昼ごはんとした。
このお店はとても居心地がよく、ついつい根っこが生えてしまうので、時間は遅くなるけれど、ルートの1番最後に回したというわけだ。
コロナ禍だナンダカンダで、久しぶりになってしまったけれど、お店の皆様は私を覚えていてくださって、とても嬉しかった。
ずっと食べたかったチキンカレーに舌鼓を打ち、美味しい紅茶を堪能していたら、予想以上に長居をしてしまった。

お店から見える桜の背景も、灰色がかってしまったので、友人とお店に名残惜しさを感じつつ、お礼を言って帰り道へ。
使い慣れた常磐道に乗って、無事に帰宅することができた。

今でもバイクを上手には扱えず、スピードも遅い私だが、友人たちは嫌がりもせず、一緒にマスツーリングをしてくれる。
ペースを落としてくれたり、待っていてくれたり、アドバイスをしてくれたり。友人たちには、いつも本当に感謝している。

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