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お悩み相談室のうらがわ035(国語教材の可能性)

○ぺてん君とたろう君

ぺてん君は、みんなの頭をごちゃごちゃにさせて喜ぶ小6男子。ぺてん君がたろう君に、なにやら話しかけていますよ。
「ねえねえ、たろう君。120の約数って、分かるかい?」
「うん、たぶん分かるよ。」
「1は?」
「120の約数だね。」
「2は?」
「それも120の約数。」
「3は? 4は? 5は?」
「全部そうさ。そんなの当たり前だよ。」
「なるほど。たろう君はかしこいね。」
「ぺてん君も習ったでしょ?(でもちょっとうれしい)」

「1も2も3も4も5も、全部120の約数なんだよね?それじゃ当然、6も120の約数ってことになるだろうね?」
「うん、そうだね。」
「じゃあきっと、7もそうだね。120の約数だ。」
「……ん? いや、違うと思うよ。…7は120の約数じゃないよ。」
「そんなことないよ。1~6までそうだったんだから、7を仲間外れにするのはかわいそうさ。たろう君だって、友達みんなが遊ぶ約束をしているのに、自分だけ仲間外れにされるのは嫌だろう?」
「仲間外れは嫌だけど…うんん…?そうなのかなあ…(困ったなあ…)」

たろう君、しっかりしてください! ぺてん君にだまされそうですよ!

○早まった一般化

約数というのは、
「 その数を割り切ることのできる整数 」
のことです。ですから、7が120の約数かどうかを調べるには、次の計算をすればいいのです。

 式 「 120÷7 」
 答 「 17.14285… 」

 計算の答えは「 整数 」になりません。ですからこれは120の約数とは言えません。

 たろう君がぺてん君の話にだまされそうになったのはなぜでしょう。
 それは「1~6までの数字がそうなのだから、7もそうだろう」という予想の仕方が一見、正しそうに思えたからです。
 個々の体験や事実から、すべてのものに当てはまるようなきまりを見つけ出すことを「一般化」と言います。これは難しいことではなく、誰もが頭の中でしていることです。たとえば、一枚の葉っぱを表から見たとき、「この葉の裏は表に似ているはずだ」ということは、いちいち裏を確認しなくても経験から知っています。

 早まった一般化を見破るには、当てはまらないものを言えばいいのです。たろう君はぺてん君に言いました。

「120を9で割ってみたまえ。11では? 13では? どうだい、できないだろう。1~6をたしかめただけでは、まだ早すぎたんじゃないのかな。(ドヤっ)」
「…ふんっ! おもしろくない。」

○たろう君、携帯をねだる。

たろう君がスマホを買ってほしいと、お母さんに駄々をこねています。
「ねーってばあ、勉強がんばるからスマホ買ってよー、ス、マ、フォ!」
「いけません。たろうにはまだ早いわ。」
「早くないって! だって、みんな持ってるんだよ?」
「みんなって、だれなの。」
「はなこちゃんも、よしお君も、ぺてん君だって持ってるもん。」
「じゃあ、ただし君は?」
「…ただし君は持ってないけど。」
「としお君はどうなの?」
「…としお君もまだだけど…。」
「ほらみなさい。みんなは持っていないじゃない。中学生になってから考えましょう。」

 どうやらたろう君も早すぎる一般化をしてしまったようですね。
 お母さんは一発で見破って、ただし君やよしお君がスマホを持っていないことを示し「みんながスマホを持っている」わけではないと反論しました。

2に続く(2で終わり)

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