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中原道夫句集『九竅』を読む

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俳句結社「銀化」主宰・中原道夫の最新句集『九竅』(2023年9月発行)を毎月一句ずつ、12回に亘って鑑賞していきます🖋️
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退屈でいいか 中原道夫句集『九竅』を読む(5)

退屈でいいか 中原道夫句集『九竅』を読む(5)

「銀化」主宰・中原道夫の最新句集『九竅』(2023年9月発行)を毎月一句ずつ、12回に亘って鑑賞していきます。今回はその第5回です。

 いろいろな意味で「挑戦」の句だと思った。俳句の定石ともいえる映像(つまりは情報)というものが無いに等しい。主人公はいったいどこにいて、いつ、誰と、何をしているのか、といったことが皆目わからない。唯一の手掛かりは季語だけだ。では「蜷の径(道)」とは如何なる季語だろ

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桜の咲く部屋を 中原道夫句集『九竅』を読む(4)

桜の咲く部屋を 中原道夫句集『九竅』を読む(4)

「銀化」主宰・中原道夫の最新句集『九竅』(2023年9月発行)を毎月一句ずつ、12回に亘って鑑賞していきます。今回はその第4回です。

 死後、自分の魂はこの世に留まらない(留まりたくない)と思っているので、これまで自身の葬られ方について真剣に考えたことがなかった。先祖代代の墓に入り、子子孫孫まで墓参と墓守を要求する旧来型モデルには少なからず違和感を持っていたが、少子化著しい現代にあっては、もはや

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新人らしく 中原道夫句集『九竅』を読む(3)

新人らしく 中原道夫句集『九竅』を読む(3)

「銀化」主宰・中原道夫の最新句集『九竅』(2023年9月発行)を毎月一句ずつ、12回に亘って鑑賞していきます。今回はその第3回です。

 五十代も半ばを過ぎ、日頃妻から姿勢のことで咎められることが多くなった。超高齢社会の日本であるから、ひとたび外出すれば、老人が背を丸め、冴えない姿で歩いているところを其処彼処で目にする。そのたび妻は「将来あなたがあんなふうになったら、ポイ(ポアではない)しちゃうか

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ワッフルのあれ 中原道夫句集『九竅』を読む(2)

ワッフルのあれ 中原道夫句集『九竅』を読む(2)

「銀化」主宰・中原道夫の最新句集『九竅』(2023年9月発行)を毎月一句ずつ、12回に亘って鑑賞していきます。今回はその第2回です。

 パターンデザインの定番である格子柄の歴史を繙けば、その源流は多く英国にあるようだ。殊にスコットランドでは、格子柄は階級や家柄を象徴するもので、七千種もあるパターンの一つ一つに名が付けられ、スコットランド政府がそれを登録・管理しているという。いわゆるタータンである

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ここのつの竅 中原道夫句集『九竅』を読む(1)

ここのつの竅 中原道夫句集『九竅』を読む(1)

「銀化」主宰・中原道夫の最新句集『九竅』(2023年9月発行)を毎月一句ずつ、12回に亘って鑑賞していきます。今回はその第1回です。

「25周年/300号記念号の別冊付録として、銀化会員には主宰の最新句集が届けられる」という話は聞いていた。だから、いつもより分厚い郵便が届いてもさほど驚きはしなかった。だが、開封してみて驚いた。金ぴか表紙の圧倒的な美しさの記念号とともに、それと寸分違わぬ寸法に仕立

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