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言の葉とめぐる旅 3:ウィズコロナ

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 「ウィズコロナ」という単語には個人的にはしっくり来ていないのだけれど、新型コロナウィルスは消えて亡くなるものではなく、今のインフルエンザウィルスと同じような扱いになっていくのだろう。ワクチンが出来るまでどのように向き合っていくのか、ということが考えられ始めた。

5月~6月上旬、緊急事態宣言解除から

 新型コロナウィルス感染者は4月下旬をピークにして、5月は大きな下降を見せた。(下記画像はWorldmeterから引用)
 良くも悪くもアベノマスクが届きはじめ、市中のマスクの供給が少しずつ戻り、そして、5月25日に緊急事態宣言が解除された。

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 これで万事元通りかと言うと、勿論そんな訳はない。オンラインで働いていた人たちが少しずつ元の通勤に戻りつつある一方で、趣味活動の再開はまだ見通しが立たない状況。公民館の利用制限がいつどのように緩和されるか、ということが、最初の大きな関心ごとだった。

 都内で言うと、J氏がnote記事にて公開した「アマチュア合唱団・吹奏楽団・オーケストラ向け 東京23区の公共練習施設の開館情報(5月29日メモ)」は大きな参考になった。私自身も、関連する地域(都下・埼玉東部・千葉東葛地区)に関する情報をまとめてFacebookなどで情報共有をしながら、noteでも「合唱活動を再開しよう」という記事を書いた。
 6月の段階で、合唱はNGと明確にしている地域と、対策をしていればOKという地域で大きく分かれたが、一部でも活動が再開できたのは良い兆しであった。

 何をすれば安全で何が足りなかったら危険なのか、まだまだ手探りの状況だった。100%安全も100%危険も無い中で、どこまでのリスクなら許容できるのか、各団体の運営は大きく悩んだだろう。
 「合唱連盟にガイドラインを出して欲しい」という声が聞こえだしたが、私個人にはそれには悪手に思えた。公共施設のガイドラインと比べて同等ならわざわざ策定する必要がないし、厳しいなら小回りがきかなくなるし、緩いなら科学的根拠と責任が必要になる。何よりも、各団が行うべき判断の責任を合唱連盟に転嫁しようとしているように見えた。

3団体オンラインミーティング

 10月のコンサートを決行するつもりで進めるのか、あるいはキャンセルして別日程を模索するのか、決断のタイミングを迎えていた。ホールのキャンセル料負担の最初の期日が迫っていたのだ。(後に、コロナ理由のキャンセルは負担なしと判明したが、この時点では分からなかった)

 3団体ともまだ対面練習を再開できていない。このまましばらく練習ができないかもしれない。また、ホール利用上の制限が緩和されるかも分からない。この状況でコンサートを進めて来場してくれる人いるだろうか。少なくない不安を抱えながら、オンラインミーティングの日を迎えた。

 私の不安をよそに、EARTH・トーミュとも、前向きに開催への意見を出してくれた。両団ともオンライン練習に手応えを感じていること、そして6月15日付で東京都の要請段階が「ステップ3」になり公民館の制限が緩和され始めたことが要因だったように思う。たとえ無観客の録画で後日配信になるとしても取り組む価値があるよね、という合意があって、前に進むことになった。ホールに行って支払いをしてきた。

 あきあかねはオンライン練習をしておらずに公民館再開待ちで、しかも他の市区よりも再開が遅くなるだろう予想があったため、むしろ焦った。区内の別の場所に団体登録を行い、7月からの練習再開が決まった時は本当に安堵した。(もともと利用していた会場は2020年11月時点でも利用不可)

6月下旬、実証実験とガイドライン

 日本、あるいは海外での実証実験に目を通す日々。英語だけでなくドイツ語やフランス語の記事を翻訳ツールに投げ込んで一喜一憂していた。海外、特に欧米の記事は本当に厳しいものが多く、日本の平和的な雰囲気からは想像もできないものだった。東京都知事選で「コロナはただの風邪」といって立候補した人物もいた。「ファクターX」は存在するのか。

 東京都合唱連盟によるガイドライン(6月23日)、全日本合唱連盟によるガイドライン(6月29日)の公開があった。要求する側は気軽だが、作成・公開にあたっては本当に苦労されたと思う。ともあれ、ガイドラインを欲していた人たちの要求は満たされ、7月の合唱再開の準備を整えていくこととなる。

7月、練習の再開、コンサートの再開、そして

 7月に入ると公民館などの制限も緩和されはじめ、合唱団の活動再開の報が多く聞かれるようになった。
 この頃の一番の悩みどころはマスクで、不織布マスクだと呼吸しにくい。そこに、東京混声合唱団による合唱用マスクの開発が公表され、大阪H.シュッツ室内合唱団もマスク制作を行い、衣装制作会社の奥山も合唱用マスクの製作販売を行うこととなり、予約は一気に殺到することになる。また、合唱用マスクを参考に、手作りで同形のマスクを作成するものも増えた。(安全性と歌いやすさの両立は、2020年11月時点でも課題となっている)

 7月31日に東京混声合唱団が合唱用マスクを着用してのコンサートを開催する、というニュースは本当に心強かった。開催する上でのコロナ対策、ホールとの折衝、関係者との調整などは相当にタフだったと思うが、しっかり対策をすれば合唱のコンサートは開催できるという実績が出来ることは重要だし、それが東京混声合唱団であることも良かった。
 7月末から少しずつコンサートが再開され、ホールでの実証実験も行われてきた。演奏会でどのような対策をしているかという情報共有が大切だった。お江戸コラリアーずがFacebookで写真公開してくれたものは大変参考になったのでこの場でひっそり感謝する。


 私達のコンサートのタイトルが「言の葉とめぐる旅」と決まり、合唱団あきあかねは7月30日に練習を再開した。残念ながら、今期の参加を断念する人もいた。本人自身がコロナに不安を抱いているという場合もそうだが、教育分野や福祉介護系で勤めている、基礎疾患のある人と同居している、家族から合唱活動の理解を得られなかった、など、本人由来でない要因での断念が多かった。本人は歌いたいのにそれが許されない、という悩みに対し、私は全くの無力だった。仕方ないけれど、悔しかった。
 歌いに来ているメンバーは、歌えない人の悔しさも受け止めながら、5ヶ月ぶりの練習を楽しみ、懸命に取り組んだ。



 一方、日本での新型コロナウィルス感染者は7月中旬から再び増加し、8月上旬まで指数関数的な増加を見せた。いわゆる第2波というもの。(下記画像はWorldmeterから引用) 

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 感染者は増大しているけれど、重症・死亡者数は(感染者の増加具合からすると)多くはなかった。そのデータをどうとらえるのか。PCR検査の拡充であったり、集団免疫獲得説であったり、弱毒化説であったり、様々な説に翻弄されていた。
 満員電車で通勤しているようなメンバーからは「無症状感染が広まっていても不思議ではないし、むしろそうでしょ」という楽観的な話も聞こえたし、私も同様に感じた。

 しかし、自治体やホールがそう考えかは別問題。特にみなとみらいホールは、ホール単体だけでなく「みなとみらい地区全体のブランドイメージ」があるのではないか、そのために他よりも慎重な対応を求めてくるのではないか、と推測していた。踏まえて、どのタイミングで調整に入り着地点をどこに設定するのか、どういう手札を用意するのか、悩ましいところだった。

 そして、調整が上手く行かなかった場合にどうするのか、ということも。


第4話に続く。

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