ものを作り上げる過程-イノッチの番組観覧で-

【四半世紀のアイドルファンが想うこと★V6★ vol.31】


「ゼロからトースターを作ってみた結果」という本がある(2015年)。イギリス人の大学院生が卒業制作で、あのパンを焼くトースターなる器械を自分でゼロから作るというものだ。原材料を探しに鉱山にまで行く。

この本と関連して、V6とテレビ製作について思い出せることがある。

番組観覧というのはご存知だろうか。アイドルやタレントさんのファンならよく聞く言葉で、テレビ番組の収録で観覧席のお客さんとして参加する、というものだ。私はV6で初めてアイドルのファンになって、初めて知った。


丸一日の番組観覧

私がV6に関わる番組観覧に行けたのは1回だけである。
イノッチ(井ノ原快彦くん)が出るので、申し込んだ。

年代と番組名を正確に覚えていなかったので、今回記憶に従って調べたら、1998年の「スポーツマンNo.1決定戦」だった(ネットとはすごいものである)。

撮影は、東京近県のホールで、丸一日ということだった。長いといえば長い。

外れるかなと思ったけど、撮影の数日前、事務所から直接電話がかかってきて、必ず行けますかという内容だった。観客席が1席でも空いた状態は困るだろうし、丸一日の拘束になるからの確認だったようだ。

私としては、テレビの裏側を初めてがっつり見ることとなった。


イノッチの運動神経を見込まれて


当日の撮影は朝から夕方までずっとだった。
とはいえ、こちらは番組観覧の立場、観覧席にずっと座っているだけでよい。観客は数十人だったかなという記憶である。

ジャニーズからは、イノッチと、TOKIO(当時)の山口達也さんが参加である。
色んなスポーツ種目で競う番組だから、イノッチの運動神経を見込まれてだと思うと嬉しかった。
山口くんは、撮影前のウォーミングアップで、180度開脚した上、前屈まで観せていたと思う。私の席近くの男性が「ジャニーズすげえなあ。もうアイドルじゃなくてスポーツマンだよ」って話していたのを覚えている。


前説

観覧席には、前説として、ちょっと記憶に自信がないが、まずお笑い芸人の方が来て、こちらを盛り上げてくれた記憶。

その後、アシスタントディレクター(AD)さんと思われる方も観覧席に来て、冗談を言って盛り上げ、大事な拍手の仕方を教えてくれた。
平手と平手でそのまま叩くだけだと音があまり響かないから、両手のひらを少し丸めて空気を響かせるように拍手すると音が響くのでお願いします、とのことだった。
これを本番前に練習した。いいこと教えてもらった。
これ以来、私の拍手はコンサートでも舞台でも全部この拍手である。

撮影前は、素人の私は、前説って聞いたことはあったが、観客は楽しみに来てるから、何で事前に盛り上げる必要があるのかなと思ってた。
実際体験すると、確かにテンション上がるし、拍手も上手になる。
ただ、これはこれでスタッフさんも手間だろう。撮影前からスタッフさんが骨を折ってるってことがわかった。


大道具さん

撮影が始まってから私がビックリしたのは、テレビ番組の撮影ではタレントさん以外に、すごい人数のスタッフの方々が、もの凄く体を張って働いているということだった。

バラエティ番組などで「大道具さん」って言葉は聞いたことがあったが、素人丸出しでごめんなさい、何か大きな道具なるものを運んでいる人かなあくらいしか思ってなかった。

この番組では、タレントさんたちが、すごい高い跳び箱を飛んだり、フラッグを早く取るとか、運動神経を競うたくさんの種目があった。
テレビで見てると、一つの種目が終わるとすぐ次の種目に切り替わる。

観覧で初めて知ったが、スタッフの方々は、別の種目へ移る度に、終わった種目のセットを全部片付け、次の種目のを組み立てていた。
てっきり全種目のを予め会場に作っておくのだと思っていた、アホな私。
そりゃ借りてるホールの大きさに限界あるし、撮影機材なども組まないと行けないし、事前に全部作れるわけがない。恥ずかしながら初めてわかった。

それで、片付けも、次のセットの組み立ても、大勢のスタッフが動き回り、あちこちからトンカチでの釘付けの音などが聞こえてくる。大きな木材を何本も運んで、木枠を組み、大きなシートなど重いものをたくさん運ぶ。
その姿は、まさに大工さんだった。簡単な家を作っているみたいだった。
これが大道具さんたちだったのだ。


待ち時間が長くても

セットのばらしと組み立てでの待ち時間は、種目と種目の間で数十分から1時間以上だった。
これか、これで丸一日かかるのか、と時間のことも初めてわかった。

イノッチも山口くんも他のタレントさんたちも、もちろん文句など誰も言わない。黙々とスタッフの方々が作業する時間が流れる。
イノッチたちからすれば、テレビに映るのは自分たちだが、スタッフなくして番組が作れないと色んな現場でもちろんわかっているのだろう。

私も素人ながら、初めて見て圧倒され、これだけの人たちが一生懸命作っているんだから、待ってる時間に文句は言えないと自然と感じた。


ものを作り上げる過程

ものを作り上げる側の苦労って、そうそう間近に見れることではない。

たいていは、小さい時は出来上がった品物を買い与えられ、作って社会に届ける側に周るのは大人になって仕事を始めてからだ。


「ゼロからトースターを作ってみた結果」という本は、世界中で売れている。買えば2000~3000円のトースターだが、実際に作ってみるととんでもない過程となることがウケたようだ。私も大笑いさせてもらったが、そこに示されているのは普段は意識しない製作側の専門ワザの凄さと労力の大きさだ。


大道具さんたちの仕事は、私にさあ今すぐやれと言われて絶対にできない専門職だ。組み立てていく姿はまさに職人ワザだった。もちろん大道具さん以外のスタッフの方々みんなそうだ。

イノッチたちタレントさんたちの素晴らしいパフォーマンスと、スタッフの方々が視聴者には全く見えないところで専門性を発揮し尽力して作り上げる過程があってこそ、楽しませてもらっていることを実感した。丸一日の番組観覧のいい想い出である。


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