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【短編推理小説】五十部警部の事件簿

事件解決(1~5)

事件その1の解決

日野出氏は事務所の電燈を消しており、事務所は真っ暗だった。
110番とはいえ、とっさの場合に、しかも急いで間違わずダイヤルができるだろうか?
また、ビルの七階にある事務所である。
車の音は大して大きくは響いてこない。
警察署の係員が車の音に紛れて小声で囁いたという彼の要請を一度で聞き取ることができている。
彼は嘘をついていたのだ。
 
事件その2の解決。
 
ツタの葉が落ちていたのは地面から10Mの場所だけである。
もし、地上からよじ登っていったのなら、地面に近い点のツタの葉も落ちるなりむしり取られていなくてはならない。
また、壁を下からよじ登ったのであれば、壁からやや離れた花壇に足跡があるのはどうしてか?
犯人は逃げる際にある程度の高さまでツタを使って降り、その後花壇に飛び降りて逃げていたのだ。
 
事件その3の解決。
 
警部が触れたとき、遺体は冷たかった。
その週末、外気の温度は高く暑いくらいであった。
婦人が車でひかれた場所で亡くなっていたのなら、数時間程度なら遺体はまだ温度を保っているはずだと警部は考えたのである。
白いセーターにタイヤ痕をつけたのを後から着せたとも考えられる。
死因となった傷は自動車との衝突ではなく、額の痣となった打撃であったろう。

事件その4の解決。
 
ピストルを突きつけたのは飯山一郎。
ホテルの雇用人は山川勉。
前科のある者をホテルでは雇わないはずである。
外国から来ていた飯山一郎と前科のある真田小助はホテルの雇用人ではない。

事件その5の解決。

五十部警部はカミソリを洗面器のふちで見つけている。
彼は自らを切った後、ほぼ倒れながら死亡したとの見解に沿えば、持っていたカミソリは浴室の床になければならないはずだ。

 

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