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【小説】【漫画】最近読んだアレやコレ(2020.07.02)

 先週末は本棚の拡張に励み、記録容量にかなりの余裕ができました。私はバリバリの電子書籍派なのですが、読書ツールではなく、読書体験想起ツール&インテリア家具として物理書籍を強く愛しているので、単行本新刊を電子書籍で購入して初読→文庫版が出たら購入し本棚に収容というステップを踏むことが多いです。最近はハナから文庫で出る本が多く、ありがたいですね。講談社タイガとか。文庫は、電子書籍ほどではありませんが、読書ツールとしてもとても使用しやすくすばらしいです。軽くて小さくて曲がるので取り扱いがよい。ちなみに本棚ですが、私はニトリのCD・DVDラックメイト1830を愛用してます。本棚ではないんですけど、成人身長程度の高さがあり横幅が狭いので、壁全面に敷き詰めやすいんですよね。参考までに。

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ルドルフとノラねこブッチー/斎藤洋

 ウオワアアアア!ルドルフシリーズ新刊!しかも待ちに待ったブッチー主役回!ギエエエエ!! ……一度の発売延期(何だったんだアレ)を経たこともあり、手に入った時点で感無量になってしまったシリーズ第五巻。文字が書ける飼い猫・野良猫たちの哲学と冒険の物語。言葉と名づけによって生まれる自己・他者・世界の認識と定義を取り扱い続ける本シリーズが、今回取り扱う題材は「言葉(名前)と意味の乖離」とでもなるのでしょうか。真意と一致しない言葉、建前だけの決まり事、嘘と自覚しないままに発される嘘。自己定義を名前に担わせながらも「イッパイアッテナ」の名を許容し続ける本作は、猫たちの在り様をどこまでも豊かに、複雑に、入り組ませてゆく。主人公であるルドルフに、「自分は心の底ではリエちゃんを許していない」と明言させたのには驚き、そしてしびれました。一切誤魔化す気のない、本気の物語の気迫が、そこにはありました。


殺人都市川崎/浦賀和宏

 「作者の遺作という趣向の小説が、本当に遺作になるとは……」としみじみしていたら、しれっともう一冊出てしまった、本当の遺作。殺人都市川崎!それは殺人鬼が跋扈し死と暴力の嵐が吹き荒れる地獄!みたいなノリの設定にキャッキャッとはしゃごうにも、雰囲気はひたすらローテーション。これだけケレン味のある舞台を用意しておきながら、土地の呪縛に縛られた若者の閉塞感が欝々と綴るばかりなのは、なんとまあ、浦賀作品らしいこじらせっぷりであることよなあ……とか思ってたら、ラスト数ページで何もかもが無茶苦茶なことになり、天に向かって「浦賀ァ!!!」と絶叫する羽目になりました。なんなんだ。何がしたいんだ。とにかく、本当に、無茶苦茶であり、これが新しい挑戦なのか、それともただのヤケクソなのか、わからない。オチが予測不能とかそういう次元ではない。解説曰く、続編を書く予定があったらしいが、意味がわからない。この続きを読めないことを、悲しめばいいのか安堵すればいいのかわからない。浦賀先生の小説は、最期の最期まで奇抜で執拗で異常で……あまりにも、「らしかった」です。


レオナルドの沈黙/飛鳥部勝則

 降霊会で発生した不可能殺人の謎を名探偵が追う、オーソドックスなミステリ。……オーソドックスなミステリ!? 単体で読むならば本作は「普通の推理小説」以外の何ものでもありません。しかし、作者が飛鳥部勝則であると踏まえ、ここに至るまでの既巻を知ることで、読者は初めてその異常性に気が付くことができます。すなわち、「推理小説の書けなさ」と「それでも推理小説を書いてしまうこと」を題材にとり続けてきた作者が、ついにあらゆるフィルターを取っ払い、「普通の推理小説」を書いているという衝撃です。「名探偵が登場した!?」「まさか、名探偵の活躍を記述する……ワトスン役まで!?」「そんな馬鹿な……こんなどんでん返し、まるで真っ当な推理小説じゃないか!?」とあらゆる当たり前が、反転して襲いかかってくるのは、飛鳥部作品をここまで追いかけてきた読者へのご褒美でしょう。ハイコンテクストってやつですね。


めしばな刑事タチバナ(31~37巻)/坂戸佐兵衛・旅井とり

 既成食品うんちく漫画。読めていなかった近刊をまとめて。40巻近くになっても、相変わらず異常な早口でうんちくを語り続けているモノホンのオタクをぶちかましており、相変わらず読んでいると圧倒される。本巻帯で白眉だったのは36巻のカレー&ライス回。「人間の視線移動における特性・味覚を認識するの左視野を受け持つ右脳であることからカレーはルーを左下に配置するのが見栄えの上で最適だが、右利きの場合、スプーンの動線が右下→左上となるためルーを右下に配置した方がワンストロークでルーとごはんを掬える利便性があり、ここにジレンマが生じる」などを真顔で語りかけてくる様には最早恐怖すら感じます。何も考えず飯を食っているだけの身としては、ただひたすらにおののくほかになく、しかし、その「本気」の一端を、ほんのちょっとだけ味見させてもらえるのは、相変わらず嬉しい。


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