B型夫
何が嫌いって、出会った頃に
「何型?」
といきなり血液型を聞いてくる女子。
私は占いだとかは全く信じないし、だいたい全ての人間が血液型ごときでたった4種類のどこかの枠にはめこまれること自体どうかしてると思う。
「由香ちゃんてさ、O型じゃない?」
「そう」
「やっぱり〜」
なぜだかそんな占い大好き女子には血液型を100%当てられる。
「ぽい、ぽい、そんな感じィ〜」
ガサツで大雑把。いわゆる世間で言われいるO型のそれがこの私から滲み出ているということなのか…。くやしいけれど、それは確かに合っている。
そんな私が結婚した和也は、別にそんなものは全然どうでもいいのだけれどB型だった。
なんでも勝手に決めて自分のペースで物事を進めようとする。それが思い通りにいかないと、あからさまに不機嫌になる。
だいたいのことは大雑把でいつでもほやほやしているように思われるけれど、時々どうしても譲れないことがあって頑固だと言われたりもする、それが私。
不機嫌な顔をされて、かなしくて泣きそうになる…のは、付き合い始めの三度まで。不機嫌な態度を私がメソメソといつまでも許すと思ったら大間違い。
和也がとった四度目の不機嫌な態度に、私はその上をゆく不機嫌を表した。ちょっと驚いた顔をして、それ以来和也が私の前で不機嫌な態度をとることはなかった。
共働きの私たちの帰宅時間はだいたい同じだった。キッチンに入る私、テレビのリモコンを手にリビングでくつろぐ和也。
「あーっ!」
「え?どうした?」
「ちょっと鍋に水入れて火にかけて」
「うん」
「わぁー!」
「どうした?」
「ちょっと、これ切って」
「こう?」
「そう、そんな感じ」
「わー、たいへん!」
「なに?どうした?」
「ちょっとそこにダシと醤油と砂糖とみりんを入れて」
「こんな感じ?」
「そうそう」
そうやって我が家の夕食は仕上がっていった。
二人で食事を作るのが普通になってきたある日、テレビ番組の中でカッコいい俳優さんが料理をしていた。それを見た和也はその料理を自分も作ってみたいと材料を買ってきた。
「よし、今日は俺が作るから由香はテレビでも見てな」
「わぁ、楽しみ〜♪」
ちょっと大袈裟に喜びながら私はリビングでくつろいだ。仕上がった料理はそれが正解かどうかわからないちょっと微妙な味だったけれど、
「わぁ、すご〜い!美味しい〜」
と言いながら私は食べた。
テレビで鉄人と言われる料理人が中華鍋をひょいひょいと振りながら美味しそうな中華料理を作っていた。
その週末、和也は重い鉄の中華鍋とお玉と中華包丁と食材を買ってきた。
「由香はテレビでも見て待ってな。今夜はこの陳和也シェフが中国四千年の歴史のめちゃくちゃおいしいものを作るから」
その日の夕食は本当に美味しかった。
「おいしい〜♪やるねぇ。すご〜い!」
「だろ。へへ〜」
食事が終わると和也は中華鍋の手入れ方法を得意気に話しながらキッチンで後片付けをしていた。私はテキトーに相槌を打ちながらテレビを見ていた。
「ねぇ、このまえ作ってくれたあれ、なんだっけ?すごくおいしかったから食べたいんだけど、私あれの作り方わからないや」
「あ、あれか、あの味は俺にしか出せない味だからな。まかせとけ。由香はテレビでも見て待ってな」
「わぁ〜、楽しみ〜♪ シェフ、ではあとはよろしくお願いします」
そして我が家のキッチンに私が立つことはなくなった。
私は占いだとかは全く信じないし、だいたい全ての人間が血液型ごときでたった4種類のどこかの枠にはめこまれること自体どうかしてるとは思うけれど、もしB型の男性と結婚したら試してみてください。
=材料=
鶏のささみ
ぎんなん
さつまいも
しめじ
和風だし
砂糖
しょうゆ
片栗粉
ごま
=作り方=
1.ぎんなんを電子レンジでチンして殻をむいておきます。
2.砂糖を少し入れた出汁でさつまいもとささみを煮て薄味を付け、取り出します。
3.2の出汁にしょうゆをたし、しめじを煮てあんを作ります。
4.うつわに1、2を盛り付け3をかける。好みですりごまをふりかけます。
ごはんの前にちょっとだけビールや日本酒とともに。
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