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ドアの向こう側

「初めてのお客さんじゃない?」
「え?どんな人?」
「わぁ、私ちょっとタイプかも」

控室のドアの隙間からマルミ、レイ、コリーの3人がキッチンの向こうをのぞきながら話していた。

レイ 「そうね。タイプかタイプじゃないかで言ったら、私もタイプかも」
マルミ「えー、うそ…私も」
コリー「そうなの?マルミは見かけによらず守備範囲が広いもんね」
マルミ「見かけって?私はどんなイメージ?」
コリー「パッと見、ちょっとクールで、“さぁ、どうなの?あなた私と上手くやれるの?”みたいなオーラ出してるよね」
レイ 「あぁ、確かにちょっとそういうとこあるね」
マルミ「えー、そう?全然そんなつもりはないんだけど」
コリー「どうする?誰が行く?」
マルミ「ここはフェアにさりげなく順番に顔を出してくる?」
レイ 「わぁ、ドキドキする〜」
コリー「どんな好みかしらね」
レイ 「なんか3人の中でいちばん子供っぽい私は不利な気がする〜」
マルミ「そういう意味でいうと爽やかで万人受けするコリーがやっぱり有利かぁ…」
コリー「どうかなぁ。案外Sっ気のあるマルミとかが好みかもよ」
マルミ「“君、おもしろいね”なんて最初に言ってた人が結局コリータイプに行っちゃったりするのよね…」
レイ 「マルミ、何かあったの?」
マルミ「世の中って、だいたいそうできてるのよね」
コリー「えー?私はマルミみたいな人には憧れがあるけどなぁ」
レイ 「私も〜」
マルミ「あら、ありがと」

カチャカチャと音がしていたキッチンが急に静かになり、勢いよく控室のドアが開いた。

「よし、今日のポルチーニのウニクリームパスタには、これだな」
シェフはそういうと食器棚からマルミをスッとつれ出した。

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