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あの朝の匂い

「私、将来カフェをやるのが夢なの」
「へぇ〜、いいじゃん」
「ふわふわのホットケーキとミルクティーが売りのお店にしたいの」

子供の頃から不器用で、高校の文化祭の日にジンジャークッキーのつもりで、まさかのガーリッククッキーを作ってかわいくラッピングし、張り切って持ってきたあの桜子がカフェをやりたいと夢を語った。

「砂糖と塩だとか、ジンジャーをにんにくと間違えたりしない?」
「もうしないよ〜。あの日に覚えたから」
「そう、それならいいけど」
「あとは資金を貯めなくちゃ」
「そうだね。それが肝心だね」
「そしたらさ、大学の先輩からおもしろいバイトを紹介してもらって、時給もいいからやってみようかなって思って。ただちょっと、ことによっちゃ全力疾走しなきゃいけない時もあったりして、体力もいりそう」
「何それ?配送とか?」
「ううん、違う。ハニートラップ」
「は?ハニー?トラップ?」
「そんなバイトを持ってくる先輩っていったい…っていうか危ない目にあったりしない?」
「うん、こないだなんて最後にターゲットにバレて“はめやがったなー!”って追いかけられて、早速全力疾走だったわ。なんとか人波に紛れ込んで逃げてきた」
「えー…」
「でも、カフェをオープンするまでがんばる!」
「それ、がんばる方向、合ってんのかなぁ…」

さてと、私は私のためのおつまみを…
あら、色合いをミスったかな。
ルビー色に紛れて生ハムの存在感が薄れちゃった
な…
とはいえ、味はおいしいので良しとします。

【ルビーグレープフルーツと生ハムクリームチーズ】
=材料=
ルビーグレープフルーツ
生ハム
クリームチーズ
純胡椒
オリーブオイル

=作り方=
ルビーグレープフルーツと生ハムを切ってお皿に盛り、クリームチーズをのせて純胡椒をちらしてオリーブオイルをかけます。


それにしても、世の中にはいろんなバイトがあるんですね。
私は切って盛るだけのおつまみがおいしくて、
今夜もごきげんです。

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