台湾の行事に使う伝統的な餅菓子と蒸しパンの類
台湾には餅米やインディカ米などの粉と水を使って液状にしたものに圧力を加えたり、捏ねて生地にしたものから作る餅菓子類や、小麦粉や酵母を入れて発酵させて作る蒸しパンのような食品が多く存在します。これらは本来は、神々や先祖などを祀るために、手間暇かけて作っていたお供え物ですが、現代では菜市仔(chhài-chhī-á ツァイチィア)や粿店(kóe-tiàm クエティアム)、饅頭店(bán-thô-tiàm バントーティアム)などで、いつでも買えるので、日常のおやつとして食べる人も多いです。
お供え物に使う餅菓子の代表的なものとして、紅龜粿(âng-ku-kóe アンクゥクエ)、蒸しパンのような發粿(hoat-kóe ホアックエ)とそれぞれ台湾ホーロー語で呼ばれるものがあります。 行事の際に準備されるお菓子には「粿(kóe クエ / ké ケェ)」および「糕(ko コー)」とそれぞれ台湾ホーロー語で呼ばれる食品の種類があります。「粿(kóe クエ / ké ケェ)」は、一般的には米の粉を液状にしたもので作り、水分が多く、粘り気があり、お餅のような食感です。
「糕(ko コー)」は、一般的には米、或いは豆類の粉や小麦粉で作られたものであり、水分が少なく、パサパサ感があります。ケーキやパンのような食感のものが多いです。ただし、米類だけを原料としていても「糕(ko コー)」という名称が使われ、小麦粉だけが原料であっても「粿(kóe クエ/ké ケェ)」という名称が使われている場合もあります。
以下に各種の餅菓子と蒸しパンの類を紹介します。
●紅龜粿(âng-ku-kóe / 客家語=紅粄 fùng-pán、新丁粄 sîn-tên-pán)
亀の甲羅に似せて作られた紅龜粿(âng-ku-kóe アンクゥクエ / 客家語=紅粄 fùng-pán フォンパン)は、丸一日、水に漬けておいた餅米に、水を少量加えて、臼で挽いて液体にしたものに圧力をかけ、水分を抜いて粿粞(kóe-chhè クエツェ)と呼ばれる塊を作り、この粿粞(kóe-chhè クエツェ)で外側の皮部分を作り、小豆や緑豆、ピーナツ、黒胡麻などで作られた餡を包んだものです。外観は平たい楕円形もしくは円形で、赤く着色されています。上面には亀の甲羅模様や縁起の良い意味を表す漢字が型押しされ、蒸篭や蒸し器などで蒸されます。
紅龜粿(âng-ku-kóe)は神々の誕生日の時のお供え物としてよく見かけます。主に天公(thinn-kong ティーコン=道教の最高神、玉皇大帝)や三官大帝(sam-koan-tāi-tè サムコアンタイテェ=天界、 地界、水界の神)など、地位の高い神々に対してのお供え物として使われます。亀の甲羅模様は長寿を象徴していて、様々な宗教行事、伝統行事の他に誕生日のお祝いなどの時にも準備されます。
紅龜粿がお供え物として用意される行事
農曆(旧暦)正月1日~5日(春節)/農曆正月15日(元宵節)/注1:農曆2月2日(頭牙)/新曆4月5日(清明節)/農曆5月5日(端午節)/注4:農曆7月1日(鬼門開)/農曆7月15日(中元)/農曆7月末(鬼門關)/農曆8月15日(中秋節)/農曆9月9日(重陽節・敬老節)/注1:農曆12月16日(尾牙)/新曆12月22日(冬至)/注2:農曆12月24日(送神)/農曆12月30日(除夕)/注1、注3:每月1日、15日(作牙、犒將)など。
●鳳片糕(hōng-phiàn-ko / 客家語= fung-phién-kâu)
糕仔粉(ko-á-hún コアフン=鳳片粉、熟糯米粉)で作られる鳳片糕(hōng-phiàn-ko ホンペンコー / 客家語= fung-phién-kâu フォンピェンカウ)と呼ばれる餅菓子の主なものとして、豬肉、雞肉、 魚などの動物の生贄(いけにえ)の形に作ったものや、亀の甲羅に似せて作った紅龜粿(âng-ku-kóe アンクゥクエ) によく似た餅菓子、鳳片龜(hōng-phiàn-ku ホンペンクウ / 客家語=新丁粄 sîn- tên-pán シンテンパン)や、牽仔粿(khian-á-kóe ケンナァクエ、乾仔 khiân-á ケンナァ / 客家語=錢粄 chhièn-pán チィエンパン)、紅圓(âng-înn アンイー / 客家語=柑仔粄 kâm-é-pán カムメェパン)などがあります。
原料の糕仔粉(ko-á-hún コアフン=鳳片粉、熟糯米粉)は、餅米の粉を油を使わずに鍋で煎り、さらに磨り潰して粉にしたもので、粘着性にとても優れています。 かつて農業社会だった台湾では息子が生まれることは家族にとって非常に重要なことであり、農暦(旧暦)の1月15日(元宵節)などに鳳片龜(hōng-phiàn-ku ホンペンクウ / 客家語=新丁粄 sîn-tên-pán シンテンパン)や紅龜粿(âng-ku-kóe アンクゥクエ / 客家語=紅粄 fùng-pán フォンパン)などをお供え物として用意して、祖先や神々を拝み、子供が平安、健康に育つことを乞い求めます。
鳳片糕(hōng-phiàn-ko ホンペンコー / 客家語= fung-phién-kâu フォンピェンカウ)の作り方は糕仔粉(ko-á-hún コアフン=鳳片粉、熟糯米粉)に麦芽糖や白砂糖から作られたシロップを混 ぜ合わせ、捏ねて団子状の固まりにします。それに小豆餡などを入れ、成形します。成形の際に型が使われることが多いです。弓蕉油(kin-chio-iû キンチォイウ=バナナオイル)が使われていて、強烈な果物の香りがします。昔は冷蔵庫も防腐剤も普及していなかったため、砂糖を多めに使い、長期間保存が効く非常に甘い餅菓子を作っていました。
鳳片糕がお供え物として用意される行事
農曆(旧暦)正月1日~5日(春節)/農曆正月15日(元宵節)/注1:農曆2月2日(頭牙)/新曆4月5日(清明節)/農曆5月5日(端午節)/注4:農曆7月1日(鬼門開)/農曆7月15日(中元)/農曆7月末(鬼門關)/農曆8月15日(中秋節)/農曆9月9日(重陽節・敬老節)/注1:農曆12月16日(尾牙)/新曆12月22日(冬至)/注2:農曆12月24日(送神)/農曆12月30日(除夕)/注1、注3:每月1日、15日(作牙、犒將)など。
●鳳片龜(hōng-phiàn-ku / 客家語=新丁粄 sîn-tên-pán)
長寿を象徴する亀の甲羅に似せて作られた鳳片龜(hōng-phiàn-ku ホンペンクウ / 客家語=新丁粄 sîn-tên-pán シンテンパン)は、糕仔粉(ko-á-hún コアフン=鳳片粉、熟糯米粉)で作られる鳳片糕(hōng-phiàn-ko ホンペンコー / 客家語= fung-phién-kâu フォンピェンカウ)と呼ばれる餅菓子の一種です。紅龜粿(âng-ku-kóe アンクゥクエ / 客家語=紅粄 fùng-pán フォンパン)によく似ていて、平たい楕円形で、赤く着色され、上面には亀の甲羅模様や縁起の良い意味のある漢字が型押しされています。やはり中には小豆餡などが入れられています。鳳片糕なので、強烈に甘く、強烈な果物の香りがします。
●牽仔粿(khian-á-kóe、牽仔 khian-á、乾仔 khiân-á / 客家語=錢粄 chhièn-pán)
牽仔粿(khian-á-kóe ケンナァクエ、牽仔 khian-á ケンナァ、乾仔 khiân-á ケンナァ / 客家語=錢粄 chhièn-pán チィエンパン)は、道教の最高神=天公(thinn-kong ティーコン=玉皇大帝)や財をもたらす神々を拝む時に使用することが多いです。小麦粉または餅米(鳳片粉)で作られ、側面や上面に古代のお金を表す模様が型押しされ、財産が増えることを象徴しています。道教の最高神= 天公(thinn-kong ティーコン=玉皇大帝)の誕生日や、子供の16才(成人)のお祝い、結婚の報告で天公(thinn-kong ティーコン)を拝む時や、三官大帝 (sam-koan-tāi-tè サムコアンタイテェ=天界、地界、水界の神)など地位の高い神々の誕生日などにお供え物として使われます。もし糕仔粉(ko-á-hún コアフン=鳳片粉、熟糯米粉)で作られたものであれば、弓蕉油(kin-chio-iû キンチォイウ=バナナオイル)が加えられていて、強烈な果物の香り(塗料の溶剤の臭いにも似ている)がします。
牽仔粿がお供え物として用意される行事
農曆(旧暦)正月1日~5日(春節)/農曆正月15日(元宵節)/注4:農曆7月1日(鬼門開)/農曆7月15日(中元)/農曆7月末(鬼門關)/農曆8月15日(中秋節)/農曆9月9日(重陽節・敬老節)/注1:農曆12月16日(尾牙)/農曆12月30日(除夕)など。
●紅圓(âng-înn、滿月圓 móa-goe’h-înn / 客家語=柑仔粄 kâm-é-pán)
紅圓(âng-înn アンイー、滿月圓(móa-goe'h-înn モアゴエイー / 客家語=柑仔粄 kâm-é-pán カムメェパン)は、一般的に中力粉から作られた蒸しパンのようなもので、中に小豆の餡または緑豆の餡が入っています。通常は赤ちゃんの満一ヶ月のお祝いの時に身内や友人に配り、喜びを分かち合います。その丸い形は円満や豊潤を表します。上部に突起した小さな円形の部分があることから母親の 乳房を連想させられます。これは母乳が豊富で哺育が順調に行く願いが込められています。もし、糕仔粉(ko-á-hún コアフン=鳳片粉、熟糯米粉)で作られたものであれば、弓蕉油(kin-chio-iû キンチォイウ=バナナオイル)が加えられていて、強烈な果物の香り(塗料の溶剤の臭いにも似ている)がします。道教の最高神=天公(thinn-kong ティーコン=玉皇大帝)を拝む時や、三官大帝(sam-koan-tāi-tè サムコアンタイテェ=天界、地界、水界の神)など地位の高い神々の誕生日などにお供え物としても使われます。円満や経済的に豊かになる願いが込められています。
紅圓がお供え物として用意される行事
農曆(旧暦)正月1日~5日(春節)/農曆正月15日(元宵節)/注1:農曆2月2日(頭牙)/新曆4月5日(清明節)/農曆5月5日(端午節)/注4:農曆7月1日(鬼門開)/農曆7月15日(中元)/農曆7月末(鬼門關)/農曆8月15日(中秋節)/農曆9月9日(重陽節・敬老節)/農曆12月16日(尾牙)/新曆12月22日(冬至)/注2:農曆12月24日(送神)/農曆12月30日(除夕)/注1、注3:每月1日、15日(作牙、犒將)など。
●甜粿(tinn-kóe / 客家語=甜粄 thiàm-pán)
甜粿(tinn-kóe ティークエ / 客家語=甜粄 thiàm-pán ティアムパン)は、一日中水に漬けておいた餅米に水を少量加えて、臼で挽いて液体にしたものに圧力をかけ、水分を抜いて粿粞(kóe-chhè クエツェ)と呼ばれる塊を作り、この粿粞(kóe-chhè クエツェ)に砂糖を加えてかき混ぜ、蒸しあげます。春節(旧正月)に必ず準備されるものですが、神々の誕生日の時のお供え物としてもよく見かけます。幸せになること、神々から嬉しい話(縁起のいい話)が聞けるという願いが込められています。主に道教の最高神=天公(thinn-kong ティーコン=玉皇大帝)を拝む時や、三官大帝(sam- koan-tāi-tè サムコアンタイテェ=天界、地界、水界の神)など地位の高い神々、媽祖(航海・漁業の守護神)、王爺(病気治癒、航海安全、豊漁祈願などに効験のある神)、地基主(tē-ki-chú 家の守護神)、土地公(thóo-tē-kong 土地の守護神)、祖先を拝む時のお供え物として使われます。
甜粿がお供え物として用意される行事
農曆(旧暦)正月1日~5日(春節)/農曆正月15日(元宵節)/注2:農曆12月24日(送神)など。
●發粿(hoat-kóe / 客家語=發粄 fat-pán)
發粿(hoat-kóe / 客家語=發粄 fat-pán)は、在來米(インディカ米)を使って粿粞(kóe-chhè クエツェ=米粉を液状にし、圧力かけて水分を抜いたもの)を作り、それに小麦粉、砂糖、酵母を入れ、 発酵させたあとに蒸した、蒸しパンのような食感のものです。お金儲けや昇進ができるようにという願いが込められています。發粿の上面は斬り裂けた形ですが、この斬り裂けた跡を「笑い」の形と見立てています。蒸しあげると上部の避け方がさらに大きくなり、避け方が深く、大きければ大きいほど、いい事があり、大きく笑い、順調な生活が送れることを象徴しています。春節(旧暦の正月)の祀り事、神々や祖先を拝む時などのお供え物や親しい人への贈り物としても使われます。
發粿がお供え物として用意される行事
農曆(旧暦)正月1日~5日(春節)/農曆正月15日(元宵節)/注1:農曆2月2日(頭牙)/新曆4月5日(清明節)/農曆5月5日(端午節)/注4:農曆7月1日(鬼門開)/農曆7月15日(中元)/農曆7月末(鬼門關)/農曆8月15日(中秋節)/農曆9月9日(重陽節・敬老節)/農曆12月16日(尾牙)/新曆12月22日(冬至)/注2:農曆12月24日(送神)/農曆12月30日(除夕)/注1、注3:每月1日、15日(作牙、犒將)。
●壽桃(siū-thô、麵桃 mī-thô/ 客家語 su-thò)
壽桃(siū-thô シィウトー、麵桃 mī-thô ミィトー / 客家語 su-thò スゥトォ)は、小麦粉で作られた桃の形をした蒸しパンのようなものです。中に小豆餡やハスの実やタチナタマメから作る白餡などが包まれています。誕生日のお祝いなどのお祝い事や神々の誕生日に参拝する時のお供え物に使われます。
●丁仔粿(teng-á-kóe)
丁仔粿(teng-á-kóe ティエンガァクエ)は、餅米(鳳片粉)から作られる長い棒状の餅菓子で、鳳片糕(hōng-phiàn-ko ホンペンコー / 客家語=fung-phién-kâu フォンピェンカウ)の一種です。 農暦の4月5日、清明節(chheng-bêng-cheh チィエンビィエンツェッ)のお供え物として使われます。形状が男性生殖器に似ていることから「膦鳥粿(lān-chiáu-kóe ランチァウクエ)」という俗称もあります。男子が生まれることや財産が増えることを願います。一種の生殖器崇拝のようです。餅米(鳳片粉)で作られる牽仔粿(khian-á-kóe ケンナァクエ)などと同様に弓蕉油(kin-chio-iû キンチォイウ=バナナオイル)が加えられていて、強烈な甘さと強烈な果物の香りがします。
●鹹粿(kiâm-kóe)
鹹粿(kiâm-kóe キィアムクエ)は甘くない餅であり、在來米(インディカ米) を使って粿粞(kóe-chhè クエツェ=米粉を液状にし、圧力かけて水分を抜いたもの)を作り、それに大根を短冊状に切って炒めたものを入れたら「菜頭粿(chhài-thâu-kóe ツァイタウクエ / 客家語=蘿蔔粄 lò-phe't-pán ロォペッパン)」になり、タロイモを入れたら「芋粿 (ōo-kóe オォクエ / 客家語=芋粄 vu-pán ヴゥパン)」になります。台湾語発音「菜頭粿(chhài-thâu-kóe ツァイタウクエ)」の菜頭(chhài-thâu ツァイタウ)は彩頭(chhái-thâu ツァイタウ=兆し)と声調(抑揚の一種)は違うけど音が同じであることから、良い兆しがあることを願うもので、「芋粿(ōo-kóe オォクエ)」はよい仕事、事業ができることを願うものたです。また台湾語の芋仔(ōo-á オォアァ=タロイモ) には芋頭(ōo-thâu オォタウ)という言い方もあり、芋頭(ōo-thâu オォタウ)と好頭路(hó-thâu-lōo ホータウロォ = よい仕事)の好頭(hó-thâu ホータウ)と発音が似ていることから、大根とタロイモは縁起物とされています。また好兄弟(hó-hiann-tī ホーヒアティ=弔う人のない魂)を祀る際にも用意されます。
鹹粿がお供え物として用意される行事
農曆(旧暦)正月1日~5日(春節)/農曆正月15日(元宵節)/注1:農曆2月2日(頭牙)/注4:農曆7月1日(鬼門開)/農曆7月15日(中元)/農曆7月末(鬼門關)/農曆9月9日(重陽節・敬老節)/注1:農曆12月16日(尾牙)/新曆12月22日(冬至)/農曆12月30日(除夕)/注1、注3:每月1日、15日(作牙、犒將)など。
●菜頭粿(chhài-thâu-kóe、客家語:蘿蔔粄 lò-phe't-pán)
菜頭粿(chhài-thâu-kóe ツァイタウクエ / 客家語=蘿蔔粄 lò-phe't-pán ロォペッパン)は、鹹粿(kiâm-kóe キィアムクエ)の一種です。在來米(インディカ米)の粉、片栗粉、水、塩、砂糖、胡椒などと均等に混ぜ合わせ液状にしておき、干しエビ、細かく切ったシイタケ、豚挽肉、揚げたエシャレットを強火で炒め、大根の千切りを加えて、柔らかくなるまで炒めます。弱火にして、その中に米の粉を液状にしたものを加え、均等にかき混ぜながらドロドロにさせます。容器に油を薄く塗って、その中にドロドロの液状の米を入れて、蒸し器で蒸し上げたものが菜頭粿(chhài-thâu-kóe ツァイタウクエ / 客家語=蘿蔔粄 lò-phe't-pán ロォペッパン)です。
●芋粿(ōo-kóe、客家語:芋粄 vu-pán)
芋粿(ōo-kóe オォクエ / 客家語=芋粄 vu-pán ヴゥパン)は、鹹粿(kiâm-kóe キィアムクエ)の一種です。餅米に水を加えて挽いて米漿(bí-chiunn ビィチゥ)=液状の米の粉を作り、それに圧 力かけて水分を抜いて粿粞(kóe-chhè クエツェ)を作ります。それにタロイモを千切りにしたものやエシャレットを揚げたものを混ぜ合わせます。手の平サイズぐらいになる量を取り分けて、平たく潰 し、バナナの葉の上に置き、蒸し器で蒸し上げます。主に農曆(旧暦)7月15日(中元)のお供え物に使われます。民間信仰の占いの道具である跋桮(跋杯 poa'h-poe ポアポエ)の形に似せて、弓なりに曲がった形に作られたものは芋粿蹺(芋粿巧、芋粿曲 ōo-kóe-khiau オォクエキィアウ)と呼ばれています。
芋粿がお供え物として用意される行事
注1:農曆2月2日(頭牙)/注4:農曆7月1日(鬼門開)/農曆7月15日(中元)/農曆7月末(鬼門關)/農曆9月9日(重陽節・敬老節)/注1:農曆12月16日(尾牙)/新曆12月22日(冬至)/農曆12月30日(除夕)/注1、注3:每月1日、15日(作牙、犒將)など。
●芋粿蹺(ōo-kóe-khiau 芋粿巧、芋粿曲)
芋粿蹺(芋粿巧、芋粿曲 ōo-kóe-khiau オォクエキィアウ)は、民間信仰の占いの道具である跋桮(跋杯poa'hpoe ポアポエ)の形に似せて、弓なりに曲がった形に作られた芋粿(ōo-kóe オォクエ)です。伝統的な民間信仰の行事に先祖を拝みますが、その時のお供え物に使われます。先祖を拝む時に占いの道具、跋桮(跋杯 poa'h-poe)が使われることから、芋粿(タロイモ餅)の形も跋桮(跋杯 poa'h-poe ポアポエ)の形に似せて作ってあります。拝む時には子孫を守ってもらうことを願います。また、タロイモは子孫繁栄をもたらす縁起物と考えられています。
●草仔粿(chháu-á-kóe、鼠麴粿 chhí-khak-kóe、艾粿 hiānn-kóe / 客家語=田艾粄 thièn-ngie-pán、艾粄 ngie-pán)
草仔粿(chháu-á-kóe ツァウアクエ、鼠麴粿 chhí-khak-kóe チィカックエ、艾粿 hiānn-kóe ヒアァクエ / 客家語=田艾粄 thièn-ngie-pán ティエンニエパン、艾粄 ngie-pán ニエパン)は、農曆 (旧暦)7月15日(中元)や新暦の4月5日(清明節)の時に用いられる餅菓子で、挹墓粿(ip-bōng-kóe イッボンクエ)とも呼ばれています。挹墓粿(ip-bōng-kóe イッボンクエ)とは清明節(祖先のお墓参り)にお墓を綺麗に掃除した後に、付近に住む貧しい家庭の子供達に配るという風習に使う餅菓子のことです。この挹墓粿を配るのは、お墓を壊されたり、いたずらされないようにするという目的もあるそうです。
草仔粿の作り方は、まず、餅米と在來米(インディカ米)に水を混ぜ、捏ねて団子状にしたものを煮て、粿酺(kóe-pôo クエポォ)と呼ばれる餅状のものを作っておきます。そして、餅米と在來米(インディカ米)に砂糖や、鼠麴草や艾草の汁をいれ、先に作っておいた粿酺(kóe-pôo クエポォ)も加えて捏ねあげて糯米糰(chu't-bí-thoân ツウッビィトアン=餅米を捏ねて丸め固めた生地)を作ります。 そこから草仔粿一つ分の量を取り、中に、切り干し大根の千切りや、挽肉、シイタケ、エシャレットなどを炒めた塩味の餡、または小豆餡やピーナツ餡などの甘い餡を入れて成形します。成形の際には押し型が使われることも多いです。そして下にバナナの葉や月桃の葉などを敷いて、蒸し器で蒸し上げます。 草仔粿は、餅米と在來米(インディカ米)に加える草の汁に使う材料によって、名称が異なることもあります。よく見かけるのは鼠麴草 (chhí-khak-chháu)で作られた鼠麴粿(chhí-khak-kóe チィカックエ / 客家語=田艾粄 thièn-ngie-pán ティエンニエパン)、そして艾草(艾 hiānn ヒアァ / 客家語=艾 ngie ニエ)で作られた艾粿(hiānn-kóe ヒアァクエ / 客家語=艾粄 ngie-pán ニエパン) で、葉の爽やかな香りがします。鼠麴草(chhí-khak-chháu チィカッツァウ)は菊科の植物であり、清明節前後に多く生えます。また、鼠麴草(chhí-khak-chháu チィカッツァウ)を使う方が色味が増すので、両方の葉を混ぜて作ることもあります。ホーロー系台湾人はよく鼠麴草(chhí-khak-chháu チィカッツァウ)を使い、客家系台湾人は艾草(艾 hiānn / 客家語=艾 ngie)をよく使います。祖先や土地公(thóo-tē-kong 土地の守り神)を拝む時にお供え物として用意され、経済的に豊かになることを願います。
草仔粿がお供え物として用意される行事
新曆4月5日(清明節)/農曆5月5日(端午節)。
●麵龜(mī-ku)
麵龜(mī-ku ミィクゥ/客家語=發包仔fat-pâu-é ファッパウエ) は、民間信仰や冠婚葬祭、お祝い事などの行事に幅広く使われる、中力粉や薄力粉などの小麦粉から作られた蒸しパンのようなものです。手のひらサイズぐらいの、ふっくらとした楕円形で、外側は真っ赤な色で、中には小豆餡、白餡、緑豆の餡、ピーナツ餡などの甘い餡が包まれています。
麵龜がお供え物として用意される行事
玉皇大帝(天公)、關聖帝君、上元天官大帝、土地公(thóo-tē-kong 土地の守り神)などの神々の誕生日や、子供の満一ヶ月や、四ヶ月、一年目のお祝い、16歳の成人のお祝い、婚約、結婚の報告で神々を拝む時や、50歳以上になったお祝い、家庭の不運や不幸があった時、葬式、また家族が病気や怪我をした時などにも用意されます。
他に農曆正月15日(元宵節)/注1:農曆2月2日(頭牙)/新曆4月5日 (清明節)/農曆5月5日(端午節)/注4:農曆7月15日(中元)/農曆8月15日(中秋節)/農曆9月9日(重陽節・敬老節)/新曆12月22日(冬至)/注2:農曆12月24日(送神)/農曆12月30日(除夕)などの行事の時。
●注1:作牙・做牙(chò-gê)
「作牙・做牙(chò-gê ツオーゲェ)」は毎月旧暦の2日と16日に商売人が鶏肉、豚肉、魚などのお供え物を用意し、商売繁盛を願って、土地公(thóo-tē-kong 土地の守り神で、財をもたらす神)を拝むことです。 旧暦2月2日は土地公「福德正神」(土地の守り神)の誕生日で、年の最初の「作牙・做牙」をする日で「頭牙(thâu-gê タウゲェ)」と呼ばれています。年の最後にする「作牙・做牙」は「尾牙 (bóe-gê ボエゲェ)」と呼ばれ、旧暦12月16日に行われます。
●注2:送神
玉皇大帝(道教神界の統治者、天公) の弟である灶君(灶神・灶王・灶公)は年に一度、諸々の神を引き連れ天界に戻り、人間の諸々のでき事(いい事、悪い事、生活苦や病苦など)を報告します。 旧暦12月23日、或いは24日に、この灶君を天界へ送ることを「送神」といいます。
●注3:犒將
「犒將(khòo-chiòng コォチォン)」は神に仕える軍隊を慰労する祀り事です。毎月旧暦の1日と15日に、一般家庭や廟が行います。
●注4:農曆7月1日(鬼門開)/農曆7月15日(中元)/農曆7月末(鬼門關)
農曆7月を「鬼月(kúi-goe'h クイゴエッ)」と呼びます。農曆7月1日に「鬼門(kúi-mn̂g クイムン)」が開き、1カ月間、先祖や無縁仏=好兄弟(hó-hiann-tī ホーヒァティ)の霊がこの世に戻ってくるとされています。この時期、こうした霊たちにお供え物をして供養する、「普渡(phóo-tōo ポォトォ)」と呼ばれる儀式を行います。仏教の盂蘭盆会(うらぼんえ)と、道教の「中元(tiong-goân ティオンゴァン)」、民間信仰の「鬼門(kúi-mn̂g クイムン)」が開くという言い伝えが融合し、中元節の行事になっています。
(台湾語や客家語の表記は「白話字」方式です。文字化けを予防するために「o・」を「oo」、母音の鼻音化を表す「上付きの n」を「nn」で代替しています。)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?