見出し画像

片倉佳史さんと台湾で食べられる焼きそばについて対談しました。

 焼きそばの台湾語は炒麵(chhá-mī:ツァーミィ)で台湾華語では炒麵(Chao3mian4:ツァオミェン)。飲食と呼ばれます。なぜか飲食店の台湾式焼きそばは炒め煮して作られる場合が多く、煮汁もたっぷりと入ってくることが多いです。台湾人家庭で食べる焼きそばはそういうことはあまりないんですが、特に台湾系の海鮮料理店やガチョウ肉の店で出される焼きそばや香港系の飲食店で出される”台湾式焼きそば”と名付けられた焼きそばは汁だくの焼きそばであることが多いです。麺を炒め煮して、煮汁の味を麺に吸わせ、なおかつ麺を柔らかくさせることが好きな台湾人が多いからなのかもしれません。

香港系の飲食店の「炒油麵」/広東麺でなく、台湾伝統の麺である油麵が使われ、炒め煮した時の煮汁がたっぷり入れられている。
学生街の食堂の焼きそば。麺の下にはやはり煮汁がたっぷり入っている。

 台湾系の朝食店や屋台で出される焼きそばはお客さんの注文が入ってから、その場で炒めて作るのでなく、前もって仕込みの段階で麺だけを大量に炒めておき、それを蒸し器の上に載せて保温し、注文があると、麺を取り出し、皿やお椀に盛り、麺の上に茹でたモヤシや豚ひき肉の醤油煮込みやその煮汁、おろしニンニクなどの調味料をかけてお客さんに提供します。このタイプの焼きそばは汁だく状態にはされません。また、このタイプの焼きそばを台湾北部の港町、基隆では「大麵炒(toā-mī-chhá)」と呼びます。大麵(toā-mī)は台湾語表現で主に油麵(iû-mī)のことを指します。台湾語表現だと調理の方法を表す語「炒」が料理名称の後ろに付くことがあります。

台湾系朝食店や屋台の焼きそば
台湾系朝食店や屋台の焼きそば
台湾系朝食店や屋台の焼きそば
台湾系朝食店や屋台の焼きそば

 台湾の香港系燒臘店(ローストダック、クリスピーポーク、茹で鶏などをライスに載せて提供する定食屋)や茶餐廳(西洋や南洋料理と広東料理がミックスされた庶民料理店)で食べられる香港式の焼きそばには大きく分けて二種類あります。一つは極細の広東麵を揚げて、かた焼きそばにしたものに、肉や野菜、海鮮食材を一緒に炒めて作った餡掛けをかけたタイプ。もう一つは極細の広東麵を甘い醤油で汁気を飛ばすようにカラッと炒めた(この方法は乾炒と呼ばれる)焼きそばです。

茶餐廳の沙嗲雞球港炒麵(サテーソース味の餡掛け焼きそば)


香港系燒臘店の番茄牛肉炒麵(トマトと牛肉を炒めた餡掛けのかた焼きそば)
茶餐廳の豉油皇蝦球炒麵(甘い醤油で汁気を飛ばすように炒めた広東麺の焼きそば)

 香港系の炒め物料理の名称に「豉油」という二文字が頭につく場合は醤油味の炒め物です。そして「沙嗲」の二文字は台湾語で沙茶(sa-teサァテェ )と呼ばれる茶褐色のペースト状の調味ソースのことで、 マレーシアやインドネシアのサテー ( 串焼き肉料理 ) のタレを改良した物です。早い時代に東南アジアへ移民していた華僑によって中国広東省潮州、汕頭地区や福建省の閩南地區に伝えられ、これらの地域で非常に普及し、特に広東省潮州、汕頭地区で流行しました。それが潮州人によって香港や台湾へもたらされたのです。台湾で多くの人に知られ、大々的に流行したのは第二次大戦後で、中国国民党と共に台湾へ来て南部の高雄へ移住した潮州人たちによって、広められました。沙茶を広めた有名な人物に赤牛牌 (chhiah-gû-pâi) の沙茶で成功した杜象と、牛頭牌 (gû-thâu- pâi) の沙茶で成功した劉來欽という人がいます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?