こたぬきたぬきち、町へ行く➁

「おばあさん、ちょっと教えてくださいな。映画館のある町って、ここからどうやって行けばいいんでしょうか」

「あら、可愛らしいぼうや。これから映画を観に行くの？一人で？」

「そう。今日が人生で初めての映画なのです」

「へええ、そりゃ大変だ。初めて。へええ」

「はい、いえ、だからその…どうやって行けば……」

「ああ！そうだ、教えてあげなきゃあねえ。ええーっと、この道をね、もうちょっと歩いて行ったらね、バス停があるから。そこで駅前行きのバスに乗って、終点まで。そこからは、そうね。まただれかそこらへんの人に訊いてみなさいな」

　親切なおばあさんへ丁寧にお礼を言って、青空の下、教わった通りてくてく歩きだすたぬきち。風に煽られて擦れ合う、芋畑の葉っぱたち。

　バス停へはおばあさんが教えてくれた通りすぐ到着し、間もなくバスがやってきました。乗車したたぬきちは他の乗客と同様、空席にちょこんと座りました。

   まるでふつうの人間、まるでふつうの少年みたいに。　

③へつづく

こたぬきたぬきち、町へ行く③｜アポロ｜note