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世界のデジタライゼーション

米国や中国等を筆頭に従来オフラインが当たり前だったあらゆる行動が、オンラインを軸にtransformされている事はもはや近年の大きな現象と捉える事ができるでしょう。現金での支払いがいつのまにかモバイルペイメントへ移行しつつあり、飲食に関してもUber等を初めとするデリバリーにより食のインフル化が進んでいます。

日本だといまいちイメージしにくいかもしれませんが、私自身海外とかに行くとオンラインを主軸にする世界の浸透をこの身をもって体験してきました。

日本と海外といった対立構造で捉えてみても、マーケットの特徴や国民性等、様々な差異が見られるため、海外のサービスをそのまま日本に輸入する事は難しいかもしれませんが、日本流にローカライズする上でのヒントになる事は間違いないので、米国や中国等の国でどのような発展が広がっているかを把握する事にはビジネスとしての意義があると思います。

そこで、様々な国で進んでいるオンラインを主軸とした世界観、サービスをまとめていきたいと思います。

(*インターネット記事や人気著書「アフターデジタル」での学びも参考に以下記述しています。)

1.生活を支える「スーパーアプリ」

スーパーアプリというのは、移動や飲食、金融等、生活インフラとなる機能を内包したアプリの事を表現しており、シンガポール発のGrab等がそれに該当します。

GrabはおそらくUberのようにライドシェアのイメージが強いと思いますが、それ以外にもデリバリーフード等、「移動」にGrabのコアバリューを設定した取り組むが進んでいます。更には、Grabpayといったペイメント機能も搭載されている上に、東南アジアのドライバー事情をクリティカルに捉え、ドライバーへの融資を軸にした金融事業等も展開しています。

ここまでを振り返っても移動や飲食、金融事業がGrabのサービスとして内包されており、実際飲食や金融においてGrabを導入している企業も増加しているそうです。

そこで、このようなスーパーアプリの基盤となるのがドライバー向けの金融事業です。

東南アジアのドライバーは生活水準が低く、Grabによる融資を通してドライバーの生活を担保する事が、Grabの構造上、移動や飲食の事業成長の貢献に繋がってきます。

そのため、スーパーアプリの利益ポイントは、おそらく金融事業が主軸になっています。国よって多少事情は異なるの絶対視する事はできませんが、移動がスーパーアプリに含まれている以上、マネタイズの定石になる事でしょう。

Grabのような従来オフラインが当たり前だった飲食や金融等が見事な程にオンライン化された世界はいずれ日本にもやってくるかもしれません。しかしながら、Grabからも分かるように課題を感じているユーザーへのソリューションとしての形が根源にあるので、日本に直接輸入されるかどうかは分かりません。

2.「体験」提供型サービス

近年の流れとして、ただものを売る事にフォーカスするのではなく、定常的なオンラインによるタッチポイントを顧客と持ち、寄り添う形のサービスモデルを提供する企業は徐々に増加しつつあります。

これはユーザー自身がものを購入してからも満足度の高い体験ができる魅力があり、ライフパートナーとしての存在意義を生む事になります。

そこで中国で人気を博している「ZiRoom」を例に出していきたいと思います。

ZiRoomは賃貸サービス軸にしており、そこから顧客のライフスタイルに入り込む多様なサービスを展開しています。

まず、メインになる賃貸では中国の家探しにおける特有のペインに対しての解決策となる賃貸物件サービスを提供しており、多くの中国ユーザーに支持されています。(当然ながらコアとなるサービスの設計の質は重要です)

更にZiRoomでは、賃料に一定の管理費を上乗せする事で清掃や修理等のサービスをパッケージとして提供し、顧客との定常的な接点を形成しています。

これは顧客の「住む」という行為を軸にした一連の体験設計の本質をついているような気もします。

ZiRoomの評価されている点は実はこれだけではありません。「住む」という行為から派生し、旅行体験においてもサービスを展開しています。イメージで言うとAirbnbのようなシェアリングサービスとZiRoom自身が抱えるアパートの低額提供を行なっており、中国国内で旅行する際はかなりの利便性を誇っています。ZiRoomを利用するだけで、賃貸の付加価値的な「低価格かつデザイナーズのアパート」も借りれてしまうといった体験は貴重な体験になっている事でしょう。

そして、私が最も心打たれたのは、「住空間の充実化を図るコミュニティ」による価値提供も内包されている点です。ユーザーが借りている物件のイベントスペース等で料理教室やフィットネスといったイベントを住居者で開く事ができ、更にはそのイベントスケジュールも地域の回覧板のような形で密に連絡がいきます。地域での交流は住居者の充実感も形成しますし、何よりも交流を通して安心感も作られます。これはただ「住む」だけの一般的な体験では補えないポイントです。

このように「住む」という行為に固執したビジネスドメインに限定化せず、旅行や地域イベント等の取り組みといった広義の「住む」という体験に価値を置くスタイルはZiRoomのみならず、今後も徐々に広がっていくのではないでしょうか。

3.地域特有のペインポイント

この地域だからこそ見られる課題にローカライズしたソリューションや機能はとてつもない効果を生みます。また、その上で上記で記した「体験」提供型サービスの形を取るのは、ビジネスとしてかなりの強固なものになりうるでしょう。

今回例にあげるのは、多くの方が1度は聞いた事のある「平安グッドドクター」です。医療/健康支援を軸に約2億越えのユーザーを持つこのサービスはまさに地域の特有のペインを解決し、更にはユーザーとの巧妙なタッチポイントを構築しており、大成功の事例だと思います。

中国初のサービスなのですが、中国の上海では日本のように開業医への信頼が薄く、総合病院での診療が常となっており、驚く程の混雑状態となっています。これは日本ではイメージができないですし、まさに地域特有の課題だと理解できる事でしょう。

そこでこの平安グッドドクターでは、まずアプリ上で医師に対して無料で気軽に相談する事が可能となっています。例えば地理的条件に先ほどの上海特有の傾向が掛け合わさると、体調の悪い原因もよくわからない状態で気軽に病院に足を運ぼうとは思いません。(運んだ所で意味がありません。)

そのように考えると、気軽な医師への相談はソリューションの1段階目であると言う事が理解できると思います。

そして、その後にアプリ上で病院を予約できる事で、今までのような煩雑さは解消されます。

しかもここで面白いポイントは、病院予約の先に医者リストが表示され、各医者の信用度やユーザーからのFB、更には論文情報等、ユーザーとの信頼を構築するための情報が多岐に渡って閲覧可能で、安心して適切な予約を行える点です。

ここまで平安グッドドクターの機能を振り返ってみるだけでも最初に記述した特有のペインポイントは綺麗に解決されています。

しかしながら、このサービスの凄い点はこれだけではありません。2の所で書いたような「体験」提供型に基づいた巧妙なタッチポイントがある点が大きな魅力であると考えています。

このサービスでは、歩数計機能が内包されており、歩数ポイントをアプリ内にある健康商品と交換する事が可能となっています。更に最も巧妙と感じる点は、1日の内に歩いた分をポイント変換しない事には、リセットされてしまうといった点です。

つまり、1日最低でも1回はアプリを開く導線を生んでおり、ユーザーとの高頻度な接点を構築しています。ユーザーの粘着性が高まり、長期に渡ってのサービス利用を実現でき、メインの課題解決にも好影響をもたらします。

また、これだけの高頻度なタッチポイントがある事により企業側は、ある程度自社の世界観を届けやすくなっており、ブランディングの設計においてもかなりコントロールしやすい事でしょう。

平安グッドドクターは、ユーザーとの密な寄り添い、そして地域特有の課題に対してのクリティカルな解決策を提供しており、今後のビジネスの模範になる事だと思います。

4.体験の「多様性」

体験と一言で言っても、従来の体験とは一線を画すようなサービスも数多く生まれてきています。

例えば、Uberのように知名度が高い「Didi」について話していきたいと思います。

Didiの体験においてまず面白いのが、サービスのグレードに応じたタクシーの配車が整備されている点です。一般的なタクシーを起点に4段階の種類のタクシーがあり、利用者は事前に選択が可能となっています。

最もグレードの高いタクシーですと、車種そのものが高級車であり、食べ物や飲み物、その他アメニティが座席にセッティングされています。日本のタクシーは基本的にどれも類似しており、特に差別化されたものはないので、初めてDidiのタクシーを利用すると特別な気分になるかもしれません。

ここまで見るだけでも、タクシーの体験に従来では考えられないような多様性が付与され、エンターテインメントとしての様相も見て取る事ができます。

更にユーザーの体験をここまで重要視されている点からも分かるかもしれませんが、当然ながらドライバーの評価システムも徹底されています。

例えば、タクシーを利用する際に気にかかる点として挙げられる「配車してから到着するまでの時間」に関しても、ドライバーの評価の1つになっています。到着予定時間より大幅に遅れる事は利用者からすると迷惑な話なので、そのような体験を利用者に与えないように、待たせた時間も評価基準に組み込まれています。

他にも位置情報とセンサーを組み合わせる事で、配車されているタクシーの安全運転の評価も徹底して行なっています。いくら急いでもらっているとはいえ、スピード超過や急ブレーキばかりされては決して居心地がいいとは言えません。そもそもタクシーは他の交通機関と比較しても金額は高いですし、だからこそ最低限の居心地の良さは担保されるべきだと思うので、この評価は妥当なものであると考えられます。

このように、ユーザーの体験の多様性を前提にドライバーの評価方法も様々なDidiの仕組みは文化的価値の側面も大いに反映されています。

今回は、古参のタクシー業界を例に挙げたので体験の多様性は従来との比較で顕著に分かりましたが、これらの視点は間違いなく今後も求められていく事なのではないでしょうか。

5.P2P○○事業

本項が今回の最後になりますが、ここではP2Pによる代表的な事業として個人的に気になっている「P2P保険」について話していきたいと思います。

P2P保険の特徴としてまず挙げられるのは、透明性の高さです。各個人が加入している保険の透明性はどれも高く、「相互扶助」の保険の本質性を根本に置いて設計しています。

P2P保険は、従来とは異なり、「事後払いかつ割り勘」である点も革新的であると思います。

従来の保険は、「何かあった時のために」といった事前払いが基本でした。しかしながら、P2P保険では無料で保険契約を行い、その契約していた保険契約者の中で何かあった場合、加入者の中で保険料を負担し合うといった形を取っています。当然これは自分が何かの災難にあった場合も皆で助け合ってもらう事になります。まさに、相互扶助そのものです。

また、これは保険のバリエーションの増加にも繋がります。各保険において一定の仲間が集まれば、上記のような特徴が活き、一人当たりの負担は少ないため、比較的容易に商品設計を行う事が可能です。

更に、実際に計算してみると分かるのですが、圧倒的な安さを誇ります。保険にもよりますが、大体月200円という事も大いにありえます。

また、事後払いかつ割り勘といった仕組みによって面白いのが、契約者の意識変革に繋がる点です。

割り勘によって負担が少ないとはいえど、他人に迷惑をかける構図である事は間違いありません。そのような構図を理解した上で、日常の行動からより今まで以上に意識的な取り組み、行動が行われるのではないでしょうか。そうすると負担も全体的に減少し、加入者からすると大きなメリットになります。

このようにインシュアテックの広がりの1つであるP2P保険を例に挙げましたが、これからもこの領域は既存業界を破壊していく力を持ち続ける事だと思います。また、興味がある人は保険以外にもP2Pの領域について調べてみる事をオススメします。

以上、オンラインを軸にした様々なサービスの形態について記載してきました。なんとなく今世界中でどのようなオンラインサービスが新たな世界観を形成しているかが理解できた事と思います。当然ながら他にもより多くのサービスは存在していますが、自身で調べて理解し、分析していく事に新たなビジネスのチャンスを見出す鍵があると思いますのでこの辺にで締めたいと思います。

最後まで読んで下さかったありがとうございました。今後も発信していくのでたよろしくお願い致します。


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