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『ちむどんどん』第7回 母子家庭の運動会

父を失い、生活が苦しい比嘉家。運動会を前にするも、子どもたちはズックや体操服がボロボロで……。

朝ドラの原点回帰をみた

優子の苦難があまりに生々しい。ぎっくり腰になった人夫にかわり、女にはできねえと言われながら現場に入る。こういうことをしていたら体も壊す。平均寿命も短くなるでしょう。歳をとってから腰痛に悩まされたりもするでしょう。
朝ドラって、豊かさの象徴なのかと思えてもきました。家庭にテレビがあって、そこに朝、座って女性が楽しむこと。それが原点。日本の豊かさの象徴だったんでしょうね。

前作では朝ドラを見るのが当たり前と強引に持っていく展開をしておりましたが、「当たり前」ではなかったころを描かなければ意味がない。今作で優子なり暢子が朝ドラをみて「朝から働いていた頃にはできなかったよね」としみじみと言い出したらばものすごく意義を感じるわけです。

昭和の人情とクソガキが炸裂する

昔は義理人情があったってホント? 女にはできねえ、金がいるのか。そんなことをずけずけという、口が悪いおじさんがいる。そんなおじさんでも、運動会前だとわかってドル札を優子に多めに渡すところが、その“人情”の正体だとは思いますね。

そういう人情は成長により培われるものであり、ガキはそうじゃない。比嘉家の子どもをボロボロとからかう連中はクソガキそのものだし。ビリになった小さな女の子をはやす少年なんか、今では絶滅危惧種のいやらしさだとおもいましたね。そういうノリを捨てないで色々やらかすと問題になるんだろうな。でも前述の通り、成長と共に人情を学び、そこを変えるのがまっとうな人間の務めだからさ。

このクソガキが、ドラマをより良くしていると思えた。比較対象として前作を出してしつこいとは思いますが、便利なのでやりますね。
あのドラマでは、額に傷を負ったことがコンプレックスになっているヒロインがいました。でも、クソガキが彼女の傷をみて「やーいやーい!」ともてはやす場面はありましたっけ? 傷を見た途端「お嫁にいけないなあ」という人がいましたっけ? 風で前髪があがったとき、相手が何も言っていないにも関わらず、ヒロインが勝手に「もうだめだ!」といきなりダッシュして逃げただけです。邪推していきなり走り出す。これはデート相手にも失礼だと思います。

そういう時代背景を描かずに、軽薄なウケ狙いをしていても響きませんので。

運動会がおおごとだった時代

当時は行事や娯楽も少ないし。体育の重要性が高いし。贅沢もそうそうできないし。運動会がそんな貴重なハレの日で、張り切る様子が出ていました。重箱に精一杯おかずを詰めて食べるところなんて、この時代らしさがありました。
 
そういうものごとの重要性が変化したにも関わらず「盛り上がるものだから盛り上げとけ」となっているんじゃないか。そう考えてしまう朝になりました。
そんな行事だもの。アベベのところにズックと体操服を置き忘れたニーニーの罪は重い。きっと何十年経っても思い出すんでしょうね。

単純なノスタルジーだけにしないものを感じます。脚本や演出がベタで、あえて昭和の感覚をそのまま素直に出している感がある本作。こういう調子でリバイバルをするとそこが新しいと思えるんじゃないか。そう感じられるドラマです。古いようで新しい。

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