【読書】『私はいま自由なの? 男女平等世界一の国ノルウェーが直面した現実』

 タイトルだけみると、こういう反応は想像できます。
「フェミざまぁw フェミ理想の国家にした結果女が不幸になってるってよw」
 そういう話じゃないんですよ。強烈なミスリードかも。そしてこれが紛れもなく、フェミニズム最前線といえる。

北欧――それは進んでいる国

 北欧ミステリが好きです。結構読んでいるとは思います。その初読書体験はマルティン・ベックシリーズなんですよ! なんでここで興奮気味かというと、マルティン・ベックなんてもう古典です。半世紀前ですから。
 あれを読み、原始的なフェミニズムは学べたのかもしれないと思ったことはありまして。殺人事件の被害者が女性だと、どうして若くて美人ということにしたがるのか? そんな問題提起がチラホラとさりげなくなったと記憶しています。
 そして何に愕然とするかと言いますと……。
 マルティン・ベックからずっとあと、日本のドラマ化もされた有名刑事ものを読んでいてハタと気づいたのです。ジェンダー観がマルティン・ベックシリーズより遅れているんじゃないかと。そのことに気づいたら、もうそのシリーズは読めなくなりました。そして特捜部Qシリーズはじめ北欧ミステリ最新版に戻ったのです。
 すると北欧ミステリも進歩していて、女性の活躍はサラッと当たり前に出てくるわ。人種の多様性は増しているわ。人間って進歩するのだと痛感したのでした。
 じゃあ日本は……うーむ。
 マルティン・ベックシリーズと、今の日本は同程度の進展じゃないか! そうミステリによって気づいたような気がする。日本だって遅いけれども、江戸川乱歩や横溝正史時代よりはそりゃ、いろんな意味で進みましたよね。本家と分家の争いで殺人とか。妻が処女じゃないから殺人とか。そういうのはもう通らないし。

半世紀後、日本が直面しているかもしれないコト

 ミステリじゃなくて現実をみましょう。
 この本に書いてあることは、日本が将来直面すること。少子高齢化もあるし、別の形にはなるのでしょうけど。フェミニズムがどんどん進んでいった先には、もっと広範な意味での豊かさを求める機運が出てきます。むしろ人権を大切にし、人を幸せにするという範囲が広がります。
 本書は決して明るくないようで、実はそうでもない。人間はよりよい世界のために、こうも工夫をするのだと希望が見えてきます。人間は進歩し続ける。そうでなければならない。そう思える一冊でした。

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