『虎に翼』第25回 法は水の如し
して、判決は?
判決を読み上げる前に、オープニングに突入します。このドラマは回の区切りと、オープニングへの入り方が見事です。
あたかも水中に月影をすくい上げようとするかの如し
「主文。被告人らはいずれも無罪」
そう武井が言い渡します。どよめく傍聴人たち。その理由は、検察側の根拠が薄弱であり、あらかじめあるように組み立ててあったこと。それをこう文学的に表現します、
「あたかも水中に月影をすくい上げようとするかの如し」
まるで水の中から月影をすくい上げようとするかのようだ――無理があるだろう。そうまとめています。これを聞いて穂高は何か打たれたようです。要するに無理矢理捏造したシナリオありきだと。
ここでじっと黙って座っている桂場の顔が、月影のように清麗としております。かくして、猪爪家の一年半にわたる長い戦いが終わりました。無実を得たとはいえ、精神的苦痛やら何やらは残るわけで、理不尽さを覚えます。
寅子が法で父を救った
直言を迎えた猪爪家ではお祝いの膳を囲んでいます。食卓の上が、これまたおいしそう! 直言は迷惑をかけたと詫びつつ、寅子へお礼を言います。
寅子は目立たないようで主人公らし位というか、虎の暴れぶりを発揮しています。このドラマはヒロイン無双をしないなんて評価がありますが、今週の寅子は諸葛孔明級の動きぶりでしたよ。
はるの手帖から直言が嘘をついていると見抜く。
仲間を集め、調べ回る。証拠を集める。はるがへそくりで買った呉服の売買記録を得るなど。
地道に署名をして世論を動かす。
それを警戒され襲撃されたことにより、竹中から事件のフレームを聞き出す。その奮起が直言の決意を固める。
もしも寅子がコーエーテクモゲームスの知略が21くらいだったら、こうはできません。朝ドラヒロインは愚かにされがちですが、寅子は十分賢い。朝ドラヒロインはチアリーダー型(応援するだけの無能)に改悪されますが、寅子はそうはならない。知略で歴史に残る大事件を変えました。直言の否認が無罪へのターニングポイントでしたからね。実在の事件をそうしてはまずいので、名前を変えているのでしょう。『あさが来た』の開拓使事件とか。チキンラーメン発明を盗んだ2018年下半期とか。ああいう悪辣な歴史修正朝ドラから遠くに来た感はあります。良識的だね。
乾杯をしていますと、笹山がやってきます。ねじり鉢巻で寿司桶を持っています。本業は笹寿司の大将ですからね。特上寿司を届けにきたそうです。この寿司がまた江戸前で、今とは違って考証が確かでうまそうだ。おいちゃんからの祝いだそうですよ。おいちゃんはトラちゃんのがんばりを陰ながら見てきたとか。そのおかげで歴史に残る大逆転を見られたんだから、傍聴人としては最高ですわな。
一方、日和田は水沼にへこへこして、控訴審をすると言います。しかし水沼はもうお役目ごめんと丁寧な言い回しで繰り返します。走狗とは哀れなもんですね。所詮こんなことで何か得たとしたって、気に入らなくなったらポイですよ。名哲保身ですよ。長い目で見るなら正義をとらねば負けますよ。
結局、三日後控訴は断念され、無罪確定となりました。
盈盈一水ーーあふれる思い
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