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『虎に翼』第72回 何もわかってないのね、トラちゃん

  昭和26年(1951年)、終戦から6年目。佐田寅子はスタァ判事(正確には判事補)として大活躍です。皮肉屋の記者である竹中は、どこかシラけた目でそんな寅子を見守っておりますが。

女性だからこそ、家庭裁判所に向いているのか?

 当時の花形メディアであるラジオで、多岐川は家庭裁判所の父、寅子は母ではないかとたとえられます。多岐川はやんわりと、佐田と結婚しているわけではないと言います。多岐川が厳罰主義ではない家庭裁判所の役目を語る一方、山本長官はだからこそ女性である佐田さんが輝けると、純粋な善意による賛辞を続けます。あたたかい女性性を活かせる家庭裁判所こそ、女性裁判官に相応しいと語るわけです。眉間に皺がよる方も多いでしょうが、当時は善意ありきの賛美なんですよね。
 ここで寅子は「はて?」を復活。寅子は個々の特性によるもので、男女は関係ないと言います。この言い方では男性裁判官への配慮に欠けるものだし、いずれ必ず間違った偏見を生み出すと続ける寅子。
「私は真の女性の社会進出とは、女性用の特別枠があてがわれることではなく、男女平等に、同じ機会を与えられることだと思います。私は裁判所から変えていきたいんです」
 長官は顔がこわばるものの、多岐川が大きく賛意を示します。ライアンも、退屈そうだった竹中もこれには面白がっています。そんな火事と喧嘩を見守る江戸っ子みたいな顔をせんでも。
「さすが佐田さん」
 お、山本長官も賛同しておりますよ。
 しかし、賛同しないものもいる。猪爪家の食卓で食事しながらラジオを聴いている花江は、寅子の意見が流れてくるとボリュームを絞ってしまいます。
 花江の漬物の咀嚼音が、異議の声として響いてきます。翼を得た虎は、地を這う女の声が聞こえなくなってしまったのでしょうか。
 ここで細かいのがヘアメイクです。寅子はすっかり1950年代風、スーツ、リップ、髪型もばっちり決まってアメリカンな装いです。
 一方で花江は髪型こそパーマネントをあてているとはいえ、あとは着物に割烹着。漬物が似合う色合いです。
 二人とも表情も変わってきています。堂々とした、悪くいえばふてぶてしい寅子。優しく寛大なようで、どこか疲れた花江。女学校時代から思えば遠くへきたものです。

女の味方になれと期待されても

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