『おちょやん』38 クズ親父のてっぺん取ったで！

「てっぺんとったるでぇ！」
　そう嫌な予感しかしない宣言をするテルヲ。いや、もうてっぺんとってるから。朝ドラクズ親父ランキング殿堂入りやし。もう、テルヲだけで何もかも破壊してまう朝が始まりました。

ほげた達者な父と娘と

　テルヲは片金相手に、千代を売り込もうと嘘をつく。嘘をつく時、不安になる人、良心がチクリと痛む人もおりますが、こいつはせやない。千代には小さい頃から活動写真や芝居見せとっただの、はなからわかる嘘をほざいてますわ。あの河内の景色を思い出すといっぺんで嘘とわかりますわな。山村千鳥一座みたいな劇団がドサ周りしたことは考えられなくもないけれども。まあええ、嘘やな、嘘。
　嘘は続くよ。アメリカのヘリ……なんちゃら？　ハリウッドも注目しているとか。ほえ〜、まあ、嘘とも言い切れんちゅうか早川雪洲というレジェンドもおるけどさぁ。テルヲは耳だけは早いんやなぁ。しかもここで封筒を渡す。渡された片金も、困るとか言うといて撮影所への寄付ならちゅうことで受け取りますからね。
　これはテルヲがゲスであることは当然としまして、黎明期の日本映画界もゲスちゅうか。当時のゆるさちゅうか。まあ、ようやると思います。えらいで！
　ちなみにいくら入とったんやろなぁ。おっ？　カフェーで平田が何か探しとります。まさか売り上げを？　平田が宮元に告げるには、お得意さんに渡そうとしていた割引券だそうです。
　しょうもなっ！
　ただ、これもある意味超絶技巧やで。ほんまの金やったらなんか洒落になっとらんから。ギリギリで抑えとんねん。
　
　そしてここで、千代が怒鳴り込んできます。
「あほんだら！」
　ほげたしとったんかと連れ出すのでした。ここで小暮と会うと、偉そうに腕組みしてジロっと見ているテルヲがほんまにカス。なんやねんこの生々しいリアリティのあるカスは……年下だったり、女相手だと、こういう腕組みしとるおっさん今でもおるやんか。ま、そんなおっさんかて張り子の虎と暴く本作はえらいんやで。感謝せなな。

　そしてこれが、なんとも難しい話ではあるのですが。父親の血。天海一平も、父を知るようにと大山社長から言われていました。テルヲのほげたの達者さを引き継いでもいるし、度胸や気の強さも似てしまっている。反発しつつも受け入れる。そういう人間の業が見えてきたで。

テルヲ、撮影現場を破壊する

　さて、小暮は千代を呼びにきました。千代は主役カップルを覗き見する女中役。朝ドラあるあるとして覗き見が多いとされます。住宅構造やプロットを転がしていくうえでないとあかん。そういう伝統ですな。
　するとそこへテルヲが乗り込んできて騒ぐ。もっと映せ、主役にしろとギャアギャアと。こいつはこんなことばかりして生きとったんやろか？　
　すると主役の滝野川恵が、うるさくて集中できないとこぼす。おまけにテルヲから「ブサイク」と言われて怒り出し、どこかへ消えてしまいます。この恵は甘やかされてきたのか、指示なんてろくに聞いていない。自分がどう見えるかばかり気にして手鏡を見ている、そういう女優です。その恵が使えないとなれば、撮影が遅れますわな。
　千代は激怒してテルヲをなんとかしようと、影に引っ張っていきます。ここでもみ合いになり、棚が重なり合って倒れて百々之助に直撃するピタゴラスイッチが入る。百様はここで気を失ってしまいます。
　どうすんの、これ……ギリギリで笑える範囲にしているものの、一歩間違ったら犯罪です。売り上げ窃盗、事故で傷害。テルヲの悪虐非道が止まりません！　逮捕待ったなしでええよもう。

　撮影中止になって途方に暮れる千代のもとに、小暮がある話を持ってきます。村川茂が監督する『鳥籠』のオーディションがあるそうです。カフェーで練習をする千代。するとそこへテルヲが意気揚々と帰ってきます。
　なんでも、女優から秘密を聞き出して来たそうです。
　目を大きく見せるマスカラだの。肩当てだの。そしてなんといっても乳ふとん。この無神経さに千代も呆れ果てます。
　世界的に胸をでかくするようになったと確定的であるのは、マリリン・モンローあたりからとはされます。ただ、美しい乳はハリウッド的に見せていきたいところですわな。和装は胸はむしろ潰しますので、洋装ならばむしろあってもええちゅうことで……いやそういうことでなく。テルヲは黙っとれ！　でもこうやって笑わせんと洒落になってないちゅうことはありますわな。