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『らんまん』第62回 呪いではなく、祝い

 綾は酒造組合結成をめざします。

綾の奮闘

 綾と竹雄の、この試みは酷い結果になります。回っても、文字通りけんもほろろにされる。

◆1軒目
峰屋は深尾の殿様に贔屓されて、でかい顔をしていたくせに何を言う! きれいな姉様が洋装の若造を従えて生意気!
→幕藩体制時代の名声が仇に……。時代の移り変わりに突いていけない保守的な人なのでしょう。自分の感情ばかりを重視して、全体の利益を考えられない。

◆2軒目
話を聞いていない。23、4。嫁(ゆ)き遅れか。なら峰屋ごともらってやろうか。
→セクハラ。綾の性別と年齢しか見ていない。人間のクズ。

◆3軒目
ええ思いつきだが、峰屋が抜ける思いつきならいい。蔵は男の仕事、女が関わると蔵の女神が怒って腐造を出す。峰屋は好きにすればいいが、こちらまで巻き込むな。

→直球の差別。迷信を持ち出したことで、差別する側の愚かしさが見えてきます。

「アホばっかりじゃったのう」
 竹雄がしみじみとこういう言葉に、視聴者もうなずくことでしょう。
「ほんじゃけど、みんなあ本音じゃったき」
 万太郎のように寝転んだ綾の言葉にも、うなずける。女の自分が蔵元というだけで、峰屋の未来が潰される。そう迷う姿にリアリティがあります。
 呆然と、自分が呪いだという綾。綾は竹雄に、夫婦になろうかと言い出します。
 解像度の高い差別を描いてきました。朝ドラがまたひとつ、上にのぼったと思えます。
 ここでの竹雄の言葉がそう。竹雄はしんから欲しい言葉だと認めつつ「嫌じゃき」と言います。相手の弱った心と立場につけ込むようなことはできないのです。欲しくて欲しくてたまらない言葉だけど、今の綾からそう言われたくないと。
 これは日本社会に突きつけられたような言葉かもしれない。日本社会はずっと女性に呪いをかけてきました。適齢期を過ぎた女性を蔑み、賃金を抑え、発言を無視し、無力感に苛まされた女性が結婚に逃げ込むようにしてきた。キラキラとしたシンデレラストーリーを作るよりも手っ取り早い、鳥や魚を罠に追い込むようなやり口をしてきた。竹雄はその呪いをキッパリと否定します。
 竹雄はここで、自分が悪いと責める綾に、天の声のようなことを言い出します。隠し蔵で闇の酒を作ればいいと。綾は峰屋の酒は磨き抜いて作ってこそだと返します。綾は先祖代々の誇りを守りたいのです。
 竹雄は誇りでは生き延びていけんと返す。それでも綾は、うちの蔵に魅了されたと語ります。甘く暗い暗がりに心を奪われたのだと。綾はうちの蔵に背く真似はできんと語ります。闇の酒では峰乃月にはならないと。

呪いじゃない、祝いじゃ

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