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『らんまん』第43回 薔薇の花のような貴女

 寿恵子は新しい世界を求めて舞踏会に参加することとなりました。

母と娘

 まつは『豆腐百珍』にある豆腐田楽を作っています。渋い! 天保年間発行のこのレシピ本は、和食文化ひとつの極みともいえます。
 日本て、文明の成熟度がとなりの中国大陸と比べると晩成ではありまして。『鎌倉殿の13人』でおなじみ鎌倉時代なんてそりゃ質素というか原始的だったものが、時代が降るとだんだん洗練されてきます。江戸時代中期以降となると、庶民の味わいも洗練されてきます。池波正太郎や杉浦日向子の本に出てくるような江戸前料理はこのあたりで極まる。そういう味を作るまつは、和の極みということなのでしょう。
 そんな中、寿恵子目線で高藤の回想が入ります。彼はさしずめ洋へ向かう象徴と。
 寿恵子は母の懸念を察知したのか、アメリカ人のクララが素晴らしいと言います。男目当てじゃない、新時代の女に憧れているという主張ですかね。
 まつはそんな娘のことを否定しません。ここで文太が豆腐田楽を捧げ持つ。あこがれの新橋一の芸者のもとで働いていて、毎晩こうしてお裾分けをしてもらう。文太は果報者だな。
 無邪気な娘を叱るわけでもなく、まつは父に顔向けできないようなことはして欲しくないと釘を刺します。妾奉公はやめとけってことかな。高藤が薩摩隼人でよかった。長州なら……いやまあそれはさておき。
 文太はまつに、寿恵子はしゃっきりしているから心配ないと言います。まつは男に頼って生きていく娘にだけはしたくないと言います。文太はここで、女将さんを見ているから心配ないと言います。
 こりゃもう、実質的に、回り回った不器用な江戸っ子の愛の言葉だろうがよ。文太は女将を敬愛している。なんなら新橋にいたころよりもそうなんだな。そういう強い女将という像を守るためには、むしろくっついちゃいけねえよ。なんという絶妙な距離です。

竹雄の不安と、万太郎の成長

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